アパ、マリオット、カンデオ…日本の“ビジネスホテル戦争”が激化:ガイアの夜明け
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イチオシスト:イチオシ編集部 旬ニュース担当
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12月13日(金)に放送した「ガイアの夜明け」のテーマは、「ビジネスホテル戦争~日本一アパVS世界王者」。
今年の訪日外国人旅行者数は、過去最高となるのが確実だ。特に人気なのが、手頃な価格のビジネスホテル。日本特有の形態とも言われ、国内最大のチェーンが客室数11万室を誇る「アパグループ」だ。そのビジネスホテル業界が今、分岐点を迎えている。世界最大のホテルグループ「マリオット・インターナショナル」が日本のビジネスホテル市場に初進出したのだ。さらに躍進する“第三勢力”も参戦し、戦国時代の様相を呈している。
そんな日本のビジネスホテル業界の最前線を取材。迎撃体制をとるアパの舞台裏にガイアのカメラが完全密着。さらに世界王者マリオットと巨大ファンドの日本進出の狙いに迫った。
【動画】アパ、マリオット、カンデオ…日本の“ビジネスホテル戦争”が激化
世界王者「マリオット」が仕掛けるビジネスホテル戦争
インバウンドの需要が回復し、今年はすでに10月末までに3000万人が来日。過去最高となるのは確実とされている。訪日外国人観光客を取り込もうと、さまざまなプレーヤーがホテル開発に群がる中、本格的に進攻をかけているのが外資系ホテルだ。来年、万博開催を控えている大阪が、今、最も注目されている。

11月。大阪の中心地に、世界最大のホテルグループ「マリオット・インターナショナル」アンソニー・カプアーノCEOがやって来た。

彼が見上げたのは、「フォーポイント フレックス by シェラトン」の看板。マリオット初となるビジネスホテルで、客室数は220。マリオットグループが日本で展開する100軒目のホテルだ。なぜこのタイミングでビジネスホテル市場に参入したのか。
「世界中で、消費者の二極化が起きている。所得に関わらず、旅への需要は強くなっている。ビジネスホテルに参入することで、手頃な価格で質の高い選択肢を提供できる」(アンソニー・カプアーノCEO)
そんなマリオットにビジネスホテルを託した仕掛け人がいる。日本でホテルを買収し続けている巨大外資系ファンドで、ニューヨークを拠点とする「コールバーグ・クラビス・ロバーツ」略して「KKR」。世界屈指の投資ファンドで、その運用資産は、約90兆円ともいわれている。
KKRで日本での不動産投資を担当するキーマンが、マネージング・ディレクターの工藤健亮さんだ。ビジネスホテル分野は、KKRとしても魅力的に映ったのか。

「日本の不動産において、アジアでは約180億ドル(2.7兆円)運用しているが、その大半が日本。我々にとって非常に重要な戦略だと理解していただきたい。日本に関しては、前向きにしっかり腰を据えて投資していきたい」(工藤さん)。
そのKKRが今回、日本のビジネスホテルを買収、その買収したホテルを託したのが、世界最大のホテルグループ「マリオット・インターナショナル」だった。世界的ブランドとして知られる「シェラトン」、 独創的なデザインで話題の「Wホテル」、芸術や音楽を融合した「エディション」など、主要30ブランドを持ち、世界142の国と地域に約9100のホテルを展開している。
中でも日本で有名なのが、ホテルという空間にラグジュアリーの要素を取り入れた最高級ブランド「リッツ・カールトン」だ。東京や大阪、京都など6カ所に展開。東京の最上級スイートは1泊約200万円、スタンダードタイプでも1泊約15万円以上する。

「マリオット・インターナショナル」日本・グアム担当のカール・ハドソンさんは、「全てのゲストに可能な限り最高のサービスを提供できるように集中してほしい。難しい注文だが、私たちが必ずやらなければならないこと」と話す。
そんなマリオットグループが大阪で新しく手掛けるビジネスホテルが「フォーポイント フレックス by シェラトン」。だが元々このホテルは、経営破綻した「ユニゾホールディングス」のものだった。ユニゾはビルの賃貸やホテル事業を行っていたが、負債総額は1262億円に。多額の借金を抱えていたところをコロナが直撃し、資金繰りが悪化したのだ。全国に14あったホテルは、KKRに売却された。
ホテルのリニューアルオープンの日、生まれ変わったロビーにスタッフが集まっていた。「重要なのは、とびきりの笑顔で全てのゲストを歓迎すること。私は大成功を収めると確信している」(カールさん)。

宿泊費は、従来のマリオット系列よりも安い1万2700円からで、ビジネスホテル価格だが、世界王者・マリオットが見据える日本戦略とは?
迎え撃つ日本のホテル王「アパ」

一方、日本最大の客室数のホテルチェーン「アパグループ」。アパは現在、業界No.1となる856のホテル、11万9000室以上(12月2日現在)を展開し、その稼働率が軒並み100%超えている。年間の売り上げは過去最高の2200億円に達し、経常利益は700億円(2024年11月期 連結決算 見込み)。平均利益率が10%以下といわれる業界で、驚異の30%超えを果たしている。
一代でアパ帝国を築き上げた元谷外志雄会長(81)、妻で広告塔の元谷芙美子社長(77)、長男でトップを引き継いだ元谷一志CEO(53)、次男で異業種コラボを手掛ける元谷拓専務(49)と、アパは元谷一族で経営される非上場企業だが、ここまでの道のりは決して平たんなものではなかった。

1971年、石川県で不動産会社を興した元谷さん。その年に生まれたのが一志さんだった。1984年、金沢にホテル1号店をオープンし、元谷会長はバブル崩壊後の安くなった土地を買い集め、全国展開していく。
大きな転機となったのは2005年。巨大外資を蹴落とし、「西武鉄道」から「幕張プリンスホテル」を買収することに成功したが、2007年、業界を揺るがした耐震強度偽装問題に巻き込まれる。
その直後、今度はリーマン・ショックが起き世界中が不況に陥るが、アパは独自路線を貫き、2万室のホテルを4万室に拡大。東京・赤坂の土地取引を巡っては、地面師集団に約12億円騙し取られたことも。
また、未曾有のパンデミックにおいては、安倍晋三総理(当時)からの要請を受け、コロナに罹った軽症者のための療養施設として新しくつくったホテルを提供。コロナ禍でも、攻めの姿勢を貫いた。

「今はチャンス。転売したり廃業したりするホテルがあるから、シェアアップできる。みんなが伸びている時にシェアは伸びない。悪くなった時に強いところがシェアをとれる」。
嵐の時こそアクセルを踏み込み、突き進んできたアパグループ。コロナ禍も黒字で乗り切り、業界トップの座に君臨した元谷会長だが、2022年、経営を長男・一志さんに譲ることに。
2代目は、日本最大のホテルチェーンをどう導くというのか。

「弱者の戦略じゃなくて、強者の戦略も選択肢の中に入ってくる。M&Aや異業種買収も含めてあり得る」。一志さん率いる新体制へと移行し、アパは大きな勝負に出ていた。

8月、大阪市浪速区。アパは大阪府に集中してホテルを投入する「大阪ドミナント戦略」を展開。すでに29軒が営業している中、さらに40階建ての大型タワーホテル「アパホテル&リゾート大阪難波駅タワー」(客室数2055室)を建設する。
「このホテルは会長との合作。会長が途中まで設計したものを私が直した」(一志さん)。

眺めのいい最上階には、選りすぐりの魚料理をビュッフェスタイルで出す「スカイダイニング UOMAN」が入り、運営会社社長は「日本の得意とする海鮮をプレミアムに。朝も夜も景色と一緒に楽しんでいただく」と期待を寄せる。

客室も、いたるところに一志さんのこだわりが。誰もが使いやすい造りを一番に考える一志さんは、車椅子対応の部屋を20室以上つくることに。お風呂や洗面台の細部にまでこだわり、車椅子に座った目線で使い勝手がいいかどうかを考えて工夫を凝らした。
左利きの客にも対応。「日本人の11%が左利きの人。左利き対応(のチェックイン)ブースを10%くらい設けた方がいい。2055室あるなら、一定の割合は左利き対応の部屋やブースをつくるべき」と話す。

一方、異業種コラボを担当する弟の拓専務も、タワーホテル開業に向けて動いていた。
拓さんは、大手食品メーカー「明治」の本社(東京・中央区)を訪れ、人気商品「明治ブルガリアヨーグルト」を使ってコラボできないかと持ちかける。
拓さんは大ヒット商品「アパ社長カレー」の生みの親でもあり、これまでにもさまざまなメーカーとコラボ。相手から宣伝費をもらって宿泊者に試供品を配布し、まさに“三方よし”のビジネスを展開している。
続いて「アース製薬」(東京・千代田区)の本社へ。タワーホテルの最上階につくったプールの底に「アース製薬」の広告を打たないかという提案だ。いくつもの図案を見せると、「アース製薬」貴島浩史常務執行役員は、「これは素晴らしい。インパクトありますね」と笑顔に。

12月、いよいよ、巨大外資との決戦の地・大阪に、西日本最大のタワーホテル「アパホテル&リゾート大阪難波駅タワー」が完成した。一泊16,000円からで、高層階の部屋からは大阪の中心部が一望できる。一志さんがホテル内を最終チェックするが、果たしてその全貌とは? 拓さんが提案した異業種コラボはどうなったのか――。
さらに2代目・一志さんの下、巨大外国資本を迎え撃つアパは、北米市場を舞台に攻めの姿勢に転じていた。

番組ではこの他、広島駅で展開するアパのドミナント戦略、「カンデオホテルズ」が7月に開業した「カンデオホテルズ大阪ザ・タワー」の全貌を紹介する。
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記事提供元:テレ東プラス
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