伊藤誠道が12年ぶりのエース達成 “天才少年”が30歳目前に至った達観の境地「良いも悪いも全部経験」
<カシオワールドオープン 初日◇21日◇Kochi黒潮カントリークラブ (高知県)◇7350ヤード・パー72>
かつて“天才”と呼ばれ、国内男子ツアーの史上最年少予選通過記録(14歳21日)を持つ伊藤誠道が、14番パー3でエースを達成。試合では、アマチュア時代に出場していた、2012年「キヤノンオープン」以来、12年ぶりのホールインワンとなった。
175ヤード(実測166ヤード)、ピンは右端に切られた難しいポジション。右からの風に対し、ドローヒッターの伊藤は「ピンの右に打ち出して、風に乗っけたら」というイメージで7番アイアンを一振り。すると、この一打が「うまいこといった」とカップに吸い込まれていった。14番までに3つのパー3を消化したが、すべてグリーンを外し、11番ではダブルボギーも叩いた。キャディと「『ショートだけ乗らないね』って言っていたら入っちゃた」。それまでのうっ憤を晴らすかのような一打となった。
さらに、前半ホールは4連続を含む5つのバーディを奪う快進撃も。「イメージ通りにボールをつけて、素直なラインに乗せて、パターを入れて、うまいことやれた」と納得の前半戦だった。「後半はうまいこといかなかったんですが、初日なんてこんなもんですかね」。パー3のダボをエースで帳消しにしたが、イーブンパーの後半戦にやや消化不良感は残す。それでも「67」のラウンド。9位タイと上位で初日を滑り出した。
ジュニア時代から活躍し、この天才肌のプレーヤーがツアーで活躍することを期待するゴルフファンは少なくなかったはずだ。杉並学院高在学中の2012年に17歳にしてプロ転向。翌13年の「PGA・JGTOチャレンジカップin房総」では国内男子下部ツアー最年少記録の18歳29日で優勝した。しかし、それ以降の成績は振るわず月日は流れ、様々な“年少記録”を持つ男も今年で29歳になった。
「プロになる時は、『いけるだろう』と思っていたんですが、やっぱり甘くなかった。足らないことが多すぎて、それを補って12年。色々回りから言われましたけど、そういうのも昔の話なので『そんなこともありましたね』という心境」。突っ走ってきた10代、そしてこれまでのゴルフ人生を懐かしむように回想する。「20代最後ですが、良いも悪いも全部経験してきて、プロゴルファーになった感じですね」。もうすぐ30歳。今は、達観の境地で“天才少年”としてのくびきから解き放たれている。
今季はレギュラーツアー開幕戦「東建ホームメイトカップ」から参戦し、ここまで16試合に出場している。今季最高位は開幕戦の17位タイ、続いて8月の「Sansan KBCオーガスタゴルフトーナメント」の20位タイがある。「初日にうまいこといかなかった。1年やってきて、きょうはうまいことできたのかなと思ったら、もう(シーズンは)終わりだった」。やや“自虐”も込めながら初日のラウンドへの手応えを話した。
レギュラーツアーの第一線で活躍する選手たちを見て、こんな意識改革も行った。「自分がずっと出られなかったレギュラーツアーに出ている人って上手いんだろうなと思って。上にいる人はひとつのことを突き詰めていると、練習を見て思いました。自分に高望みし過ぎていたので1個のことを決めてやり続けた」。
そして、今大会はシード争いが決着する場でもある。現在賞金ランキングは90位(514万3366円)と、このままでは来季のシード獲得のボーダーラインには届かない。「僕の位置は本当にワンチャンスくらいだと思っている。このままダメなら、これからQTがあるので、どんな状態で臨めるか考えながら高知入りしている」。逆転のシード獲得は十分可能ではあるが、伊藤はそれよりも、自分の“現在地”を確かめることに重きを置いた。(文・齊藤啓介)
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