5年ぶりに年間複数回優勝! 石川遼の7Iと8Iにだけ刻まれた『S』が意味するスイングの進化
前週の「三井住友VISA太平洋マスターズ」で今季2勝目を達成し、2019年以来5年ぶりに年間複数回勝利を挙げた石川遼。そのアイアンを見てみると、7番と8番だけ『S』の刻印が入っている。これはストロングの意味で、昨年6月の「BMW日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」から7番と8番のロフトを1度立てて使う。その理由は2020年から取り組んできたスイング改造にある。
「短いクラブになっていけばいくほど、スイングの円自体が長いクラブに比べて短くなる。今までみたいにすごく大振りしているわけではないので、長いクラブみたいに“間”が取れなくて、力感がボールに伝わらない。6番の長さになってくると割と力感が出せるのに、7、8番はフルショットしきれていない。自分でしっかり打つ前にボールに当たっちゃっているという感覚があった」
20代の頃と比べるとスイングはコンパクトに、入射角は緩やかになった。7番と8番がイメージよりも高く上がって距離が出ないため、ロフトを立てて調整したのだ。それだけではない。トップからクイックに切り返してインパクトでガツーンと力を入れて打っていたが、今のスイングを見ると、ゆったりと切り返して軽く振っているように見える。
「前はストロングでトルクして打っていた。今よりも圧倒的にインパクト時のロフトが立っていました。今はグリップをウィークにしているので、インパクトのときのディロフトが減っている」
“ディロフト”とはロフトを減らす意味で、ロフトを立てて当てることでアイアン本来の性能を発揮できる。左手首を内側に捻るように掌屈させることで、ロフトは立つ方向に動くのだが、左手をかぶせて握るストロンググリップから、左手をヨコから握るウィークグリップに変えたことで、掌屈させてもディロフトの度合いが少なくなった。
「そのぶん、ロフトは寝て当たるので、アイアンもウェッジも全体的に飛距離は落ちています。前は中途半端な距離だったら、(インパクトで)めちゃくちゃハンドファーストにロフトを立てて、感覚で距離を出していた。今は何も変えないで振り幅とロフトで管理している。そのときそのときの雰囲気とか感覚に頼らないで、『この振り幅で何ヤード』というのを測って練習した型で距離感を出しています」
9番アイアンとPWのちょうど間の距離が残ったときに、以前はPWでインパクト時のロフトを立てて番手以上の距離を打っていた。今は4~5種類のスイング幅で、ラウンド前に弾道測定器で距離をチェックし、最適な番手と振り幅を選んでいる。
「インパクトをあまり変えてないので、(左手の)掌屈が入ったまま当てるみたいな感覚です」。インパクト時の手首の感覚で距離感をコントロールするのをやめ、オートマチックに打つことでタテの距離感を安定させるのが狙い。アイアンといえば上から打ち込むことを過剰に意識しているゴルファーも多いが、“頑張らない”ほうが結果は良くなるのだ。
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