【ウエストランド河本太の『人生相談する側チャンピオン』】第7回 東野幸治さん!「まだ消えたくないのですが...。消えてく人ってなんで消えてくんですか!?」
M-1チャンピオンでありながら、これまで数々のやらかしをしてきた迷える40歳、ウエストランドの河本太が、さまざまな先輩・仲間に人生相談を受けに行く不定期連載「人生相談する側チャンピオン」! 第2弾は公私ともにお世話になっている東野幸治さんのもとを訪ねています。
前回、河本さんの「テレビに出るのが怖い」という話の流れから、人生相談そっちのけでさまざまな芸人の話題、そして事務所の話題に発展していき......。(第2弾の3回目、4日連続更新)
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■河本の今後を真剣に案ずる東野東野 あとさ、テレビでのあり方っていう話だと『ゴッドタン』に「腐り芸人セラピー」ってあったでしょ。岩井(ハライチ)と板倉(インパルス)と徳井(平成ノブシコブシ)の3人組。河本もああいう温度感が向いてるんじゃない?
河本 あの3人はかっこいいですよ。でも、そもそも3人とも大喜利のバケモンだし、ネタも考えてる方じゃないですか。
東野 ネタ考えへん側やけどプライドが高くて、ひな壇にいても「いや、僕はいいです」みたいな温度感でただ腐ってるだけのヤツ(笑)。だって収録でテンション上げて失敗したんやろ。
河本 それは僕の技術も伴ってなかったんでしょうけど。
東野 だから、努力したってしょうがないし、こんな対談でアドバイスして、それがしっくりきて劇的に売れていくなんてないと思うわ。とにかく無理しない。無理したらなんか顔とか首の周りにブツブツできたりするやん。せっかくお酒やめてシュッとしてきたんやから。河本なんか男前やからね、オシャレ雑誌でモデルとかしたらいいんちゃう? マシンガンズみたいに。
――マシンガンズさんは『週プレ』でグラビアをやったり写真集を出したりしています。
河本 そうだ。そりゃあ、やれるんならやりたいですけど。
東野 週プレさんでグラビアやらしてやってくださいよ。膝から下にタトゥー入ってるけど(笑)。なんでそんな軽い気持ちでタトゥー入れるやつが、いっちょまえに細かいこと悩んでんねん!
河本 いや、それはいいでしょ!
東野 もうそこまでやってんだから社会に出られなくなってもいいでしょ。見習いタトゥー彫師に彫ってもらって。
河本 せっかく練習台になったのに、結局そいつ彫師やめちゃいました(笑)。
東野 (笑)。とにかく、無理だけはしないということ。無理して大当たりしてスターになった人が、おかしくなって落ちていったのをさんざん見てきたから。
河本 僕もそうなんですかね。M-1優勝以降、どこかで図に乗ってしまっていた部分もあったというか、今年はあんな事件まで起こしてしまって...。
東野 いや、自己弁護してるけどそれは関係ないでしょ。もともと持ってたもんちゃう? 優勝しなくてもいずれ起こった問題だから。それを言うなら井口のほうが優勝して忙しくなって、ちょっとおかしくなりかけてたけど。
河本 なりかけてましたね。なんなら最近もちょっとおかしくなりかけてますけど。
東野 なんかアイツ体型おかしなってない? ぶくぶく太ってきて、アイツこそ顔にブツブツできてきて。そういうのってすぐ体に出るから、できる範囲のスケジュールで、いい具合の仕事量でやっていくしかないんちゃうかな。
河本 僕のほうは特に変える必要はないですか。
東野 変わりそうにないでしょ。井口にウケるようなネタを書いてもらって、あとは上手に10年20年、爆笑さんの事務所におったら、クビになったりとか絶対せえへんやろ。優しい事務所やから。
河本 そうですね。こんなやらかしてクビになってないんですから。
東野 あそこは家族みたいな事務所だから。ただ、正月休みはないからそこは覚悟しとかな。演芸場とか絶対回るやん。
爆笑さんなんて、極端なこと言ったら1年中ずっと働いてるんだから正月くらい休んでもええわけ。吉本の売れてる芸人はだいたいフジテレビの『爆笑ヒットパレード』出たらそこから1週間とか休むんだから。なのに爆笑さんはそこから演芸場回って、あの靴を脱いで靴下で入るタイプの狭い楽屋に行って(笑)。タイタンにいる限りはそれは一生続くねん。
河本 でもそれは全然ありがたいことです。
東野 タイタンは新年会とかあんの? お年玉もらったり。
河本 毎年、タイタンの全社員と芸人ほぼ全員で神社にお参りして、食事はします。で、お年玉いただいて。
東野 光代さんから?
河本 社長からももらえますし、田中さんからももらえる。太田さんは現金を持たない人なので。
東野 そうや。あの人は現金も携帯も持ってないもんね。ピョン吉のTシャツ着て、パソコン持って、あとはタバコとコーヒーと湯豆腐やろ。日本人全員があの人やったら経済終わるで。
河本 いやいや(笑)。
■なぜかタイタンの話から島田紳助の話に東野 そういう意味で言うと、芸人さんとかタレントさんなんてみんな太田さんみたいな変わった人ばかりだからさ。自分に合う人や居場所を見付けたり、自分で作っていくのが一番ええんちゃう。とにかく無理はしない。この仕事はあかんかったから、次からそういうのはNGでって。
河本 なるほど。
東野 何でも全部書き出してみたらえんちゃう? 漫才、コント、VTRのリアクション、大喜利、エピソードトーク、真面目なコメンテーターとか、テレビの役割を全部書いていって、あかんかったら斜線引いていって。「これはよかったかな」っていうやつは残して、その仕事をやっていったらいいんちゃう。
河本 なるほどね。正の字を書いていって5つ溜まったら、その仕事は得意だって確定するみたいな。
東野 そうそう。で、5年くらいそれだけを研磨していったら、いい感じになるんちゃう? (島田)紳助さんは売れる前に、ノートにいろんなコンビの分析を書いてたらしいねん。紳助竜介はこういうのが得意で、(太平)サブロー・シローはこう、オール阪神・巨人はこうで、来年はこうなるから再来年はこう行くっていうのを折れ線グラフとか書いていく。
で、(明石家)さんまさんがたまたま紳助さんの家でメシ食うことになって、紳助さんがメシ買いに行ってる間にそのノートを見たらグラフがいっぱい書いてあって、全部のグラフで紳竜が上になってて。それはもちろん自己暗示もあると思うで。で、紳助さんが言うには、それをさんまさんが赤で「俺はこう思う」って添削してたらしい。
そんな話を紳助さんからちらっと聞いたことがあるから、そうやって何でもメモするのを癖付けて、今日の仕事の感想とか、よかったこととか反省点とかを書いて、それで1年間書いたらよかったとこだけ見ればいい。自分ってこういうキャラクターなのか、こういうが仕事が俺に一番向いてんのかなって。
河本 ええー、すごいなあ。
――東野さんもそういうことをされてるんですか?
東野 僕はそんなことメモったりしないです。なんとなくの雰囲気でしかやってないですよ(笑)。
■そして話題はまたタイタンへ――例えば、ひな壇芸人からMCにステップアップする際などに、東野さんがされた努力とかってありますか?
東野 いやいや、全然ないですよ。ただやっぱり吉本やから、いろんな仕事をさせてもらうんですよ。いろいろやっていくうちに、向いてる仕事と向いてない仕事とか、スタッフさんとの距離の詰め方、空け方とかが、だんだんと体で分かってきたみたいな感じで。そんな具体的にどう努力したっていう感じじゃないんです。
あとは最初に言ったように、大体人のせいにしますから。これが一番大事なことやと思う。全部自分のせいじゃないから、おかしくなったりもしない。自分の精神衛生のためにも、人のせいにしとかんとって思ってます。
河本 今日ずっと「人のせいにする」って言ってたのはボケじゃなかったんですね。
東野 おい、今日ずっとボケじゃない! ずっと真面目に答えてんで! (笑)
河本 ノートを作って見返す話とかは真面目なアドバイスだなって思ってましたけど。
東野 頭からずっとほんまのこと! 所(ジョージ)さんも「ダメだよ、振り返ったりしちゃ」って言うてたし、タモリさんも「反省しない」って言うてたし。
河本 みなさん本当に反省しないんですかね。
東野 もう所さんとかタモリさんクラスまでいくと、具体的に反省せんでもわかるんちゃう。タレントになって最初の1年、2年は「こういうもんか」って反省しても、やっていくうちに「これずっと反省したらあかんな」って思うんでしょう。 タモリさんだって『いいとも』始めて1週間とかで「こんなのと真面目に向き合ってちゃダメだ」って思ったらしいで。みんな人のせい、人任せっていう風におっしゃってたからね。
河本 じゃあ逆に、消えてく人ってなんで消えてくんですかね。
東野 天狗になるか、おかしなるか。それか元から面白くなかったのに偶然売れたとか、売れたこと自体が間違いだったとか。でもこの世界、偶然売れる人も必要やと思うけどね。
――東野さんのYouTubeチャンネルを見ていると河本さんだけじゃなく、渡部さん(アンジャッシュ)や堤下さん(インパルス)など、一度やらかした人にも愛情を持って接しているように感じます。
東野 いやいや。別に助ける気なんかさらさらないですし、フックアップするつもりとかはないですからね。堤下なんて直接LINEが来たから一度断ったのに、吉本経由でもう一度連絡来ましたからね。そんなことされたら断りづらいじゃないですか。
ただ、「ああいうことしでかした人はあの時どうやったんやろうな」みたいに、個人的に興味あるっていうだけなんで。僕自身がええやつとか言う人もいますけど、世の中の人が勝手に勘違いしてるだけで、手助けしようみたいなつもりは一切ないんです。
――逆に御自身が何かやらかしたときに、誰かに助けてもらったことはありますか。
東野 具体的にこの人が助けてくれたっていうよりも、吉本興業という会社自体が昔から助けてくれますね。大きな会社っていうのもあって、芸人もたくさんいるし、社員さんもたくさんいるし。
「吉本ファイナンス」って言われてる芸人にお金を貸してくれるシステムがありますけど、あれみたいに吉本は芸人の声を汲み取って形にしてくれるんですよ。で、いろんなことに挑戦してると、100個に1個くらい成功は成功するんです。まあ99個は失敗してるんですけどね。
だから会社のことも責め立てられないし、ある意味でのどかな一面もある会社なんです。そういう意味では吉本に入ってよかったですよ。でもさ、タイタンも吉本ほどは大きくはないけど、いい会社でしょ?
河本 いい会社です。
東野 僕は爆笑さんとは同世代なんですよ。爆笑さんが太田プロを辞めて、3人でフリーで始めて、田中さんと光代さんがコンビニで働きながら、太田さんは何もしてなかった頃を知ってるから。太田さんは計算ができない人だから、おつりで小銭を適当に握って渡してまうやろ。で、『バカヤロー!(2 幸せになりたい。/1989年の映画)』なんかに出演しながら、また這い上がっていく。そういうやり方もあんねんなって、遠くからその活躍を見てましたから。
河本 当時ではかなり特殊ですよね。芸人の個人事務所のパイオニアだと思います。
東野 あの3人だからっていうのがいいんでしょうね。で、今では所属芸人もたくさんいて、こうやって『M-1』で優勝する芸人も出てきて、『キングオブコント』の決勝にも残ったしな。
河本 シティホテル3号室ですね。
東野 そうそう。そういうのを考えると、吉本興業も好きですけど、タイタンも好きなんですよ。しかも、こうやってやらかしても守ってくれる会社なんやろ。だからまた話が1周するけど、なんか悩みがあるなら僕なんかに聞くより、そのタイタンの3人に聞けって話ですよ。で、2人にはもう聞いたんでしょ。
河本 まあ、ちゃんと答えてくれてたのかは分からないですけど。
東野 田中さんは何を聞いても響かへんやろ。
河本 目、死んでましたね(笑)。
――そんなことはないですよ!
河本 いや、そんなことありますよ!
東野 (笑)。田中さんは野球と80年代アイドルと猫しか興味ないから。ほんまにどんどん小っちゃなってきて、おばあちゃんみたいになってきて、どんどん性別を凌駕していって。だから、悩みがあるならあの3人に聞いて、あとは吉本以外で事務所作ったやつ、例えば、さらば青春の光とかに「これからどうしたらいいか」「俺のいいところはどこか」って順番に聞いて回ったらいいんじゃない。
河本 爆笑さんには一応それは聞きました。
東野 何て言ってた?
河本 「お前のいいところは、ない」って。
東野 だから結局河本も、ただそこにいる感じ、何者か分からへんけどそこにフラットにたたずんでるだけで、たまにボソッとしゃべるのが面白いっていうのでいいん違うの。無理して喋る必要もないし。
そういう気持ちで仕事に臨んで、それで仕事がなくなったら「使う側の人が才能ないな」って思ってたらいい。その代わり週末は漫才の営業があるんだから、生活は困らへん。俺なんて別に劇場出てないからさ、そんな仕事のやり方したらおしまいよ。そういう意味でも絶対に河本の方がいいよ。営業っていう保険があるんだから。
河本 たしかにそうですね。営業もいつまであるのかな。
東野 当分あるって。10年、15年はあるんちゃう。っていうかその前に「M-1チャンピオン」っていう肩書があるんだから、営業だってずっとできるし、銀行もお金貸してくれるでしょ。だから、テレビはそんな感じでええんちゃうの。
河本 たしかにそうですね。
東野幸治からの回答②-2「ノートを作って得意ジャンルを見付けろ! 無理をするな! タイタンは優しい事務所だしチャンピオンなんだから悩むんじゃない!」
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■河本太(こうもとふとし)
タイタン所属。1984年1月25日生まれ。岡山県津山市出身。2008年に同級生の井口浩之とウエストランドを結成。M-1グランプリ2022チャンピオン。リフォーム会社に勤めていた経験から電気工事、配管工事が得意。趣味は登山、キャンプ。
■東野幸治(ひがしのこうじ)
吉本興業所属。1967年8月8日生まれ。1985年にデビューし、『ダウンタウンのごっつええ感じ』『森田一義アワー 笑っていいとも!』『あらびき団』『行列のできる法律相談所』など、さまざまな番組で活躍。YouTubeチャンネル「東野vs」では自身で撮影・編集も行っている。
取材・文/酒井優考 撮影/山添 太
記事提供元:週プレNEWS
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