「最悪」が「絶賛」に一変!?『シュガー・ラッシュ:オンライン』は二度鑑るべし
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塾講師の宮本さんが、初見では「最悪」と評価した映画の印象が、二度、三度と観るなかで「胸のすく思い」に変わり、「家族関係を学び直すのに最適な教材」と賞賛するようになったと語るのは、2018年公開のディズニー映画『シュガーラッシュ・オンライン』。その理由を教えてもらいました。
イチオシスト:宮本 毅
算数・国語・理科・社会の4科目すべてを指導する塾講師。生徒のやる気を引き出し、自立学習のさらに先にある「自発学習」を目指す。著書に「はじめての中学受験」「ゴロ合わせで覚える理科85」などがある。
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映画を見る醍醐味のひとつに「登場人物(主人公)に感情移入して、映画の世界を体験する」というものがあると思います。その意味では主人公が2人いて、それぞれの立場が正反対である『シュガー・ラッシュ:オンライン』は、感情移入する主人公を切り替えて観ることで、鑑賞1回目と2回目でまったく違った印象を受ける「ひとつぶで2度おいしい」映画と言えるでしょう。また3回目には少し俯瞰して、客観的に眺めることで、また違った感想を持つはずです。見方を変えることで何度でも楽しめるこの作品は、まさにBlu-ray/DVD向けの映画と言えます。
「最悪」から「胸のすく思い」に評価が一変
私は最初『シュガー・ラッシュ:オンライン』を「ラルフ」視点で観ました。前作『シュガー・ラッシュ』(2012年)で非常に感銘を受けていた私は、本作品でのもう一人の主人公である「ヴァネロペ」の行動や決断を受け入れることができず、初見鑑賞後の本作への評価は「最悪」なものになりました。しかし、次に視点を変えて「ヴァネロペ」に感情移入しながらこの作品を観てみたところ、決断にいたるまでの経緯や彼女の心の葛藤がとてもいとおしいものに感じられ、この映画に対するこり固まった評価がスーッと消えていくように感じられたのです。
そして、まさにこのとき、映画のラストシーンが私の心と見事にリンクして、気持ちの良い感動が私を襲いました。「胸のすく思い」とはまさにこのことです。製作者側が最初からこれを企図していたとしたら、本当にすごい映画だと思います。
ですから、もしこの映画を一度映画館で観て、なんとも言えない不満を感じ、やりきれない思いで映画館を後にした人がいたら、是非Blu-ray/DVDを購入して「ヴァネロペ」視点でもう一度この映画を見て欲しいのです。もう一度観てみることで、本作への評価は一変するはずです。
そしてそのときにこそ、普通の映画では味わうことのなかなかできない「胸のすく思い」を実感できることでしょう。ラスト直前に主人公の「ラルフ」が「いい気分だよな」と言うのですが、その瞬間に観ているこちらまでいい気分になるんです。こんな映画ってなかなかないですよ。
また最初から「ヴァネロペ」視点で映画を楽しんだ人にも、もう一度観直して欲しいのです。するとそれまでは見えてこなかった、隠された裏テーマにきっと気付けるはず。そのときにこそあなたは、ひとつ違った自分を獲得できるに違いありません。
実は「家族の再構築」の物語でもある
この映画は「友情のあるべきかたち」を示唆してくれますが、それと同時に「家族のあり方」「家族の支えあい方」も提示してくれています。「ラルフ」は父であり母であり祖父であり祖母であり、「ヴァネロペ」は娘であり息子であり孫でもあるのです。お互いがお互いの立場や夢を尊重しあい、価値観の違いを認め合うことができたときこそ、新たな家族となっていく。本作品は「家族の再構築」の話でもあるのです。「どんな友情も変わってくの。でも変わることでもっと強くなる友情もある」。劇中のキーパーソンの一人、「ヴァネロペ」が憧れる「シャンク」という女性が語るこのセリフの「友情」というワードを「家族」と言い換えると、そのことがよく分かります。
前作との整合性を疑問視する声や、細かな矛盾点を突いて、この映画を批判する人もいます。1回目に観たときの私もそうでした。でも枝葉末節にこだわらず大きな視点でこの作品を眺めればきっと、さわやかな解放感とちょっぴりペーソスの効いた感動を味わえることでしょう。
DATA
ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ│シュガー・ラッシュオンライン
監督:リッチ・ムーア、フィル・ジョンストン
公開:2018年
原題:Ralph Breaks the Internet
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