大友 啓史監督の映画・ドラマを厳選!るろ剣、ハゲタカ、龍馬伝で魅せた世界観
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『るろうに剣心』や『3月のライオン』など、数々の大ヒット作を手掛ける大友啓史。ドラマガイドの竹本さんによると、あまりよしとされない漫画の実写化であっても、圧巻の世界観で魅了するすごさが魅力なんだとか。イチオシ作品を教えていただきました。
イチオシスト:竹本 道子
『太陽にほえろ!』のスクラップブックをつくり友人と盛り上がったこども時代。夕方の再放送が見たくて一目散に帰宅した青春時代。撮影現場を垣間見た平成時代。尽きないドラマへの好奇心は令和もつづく。All About ドラマ ガイドを務める。
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「日本の映画やドラマはこんなにおもしろかったのか!」と、大友啓史監督の演出を観るたびに胸が高鳴ります。スピード感あふれる映像、巧みな光と影、手に汗握る臨場感……エンターテインメントの新しい魅力を切り開く大友啓史監督の作品に吹く新しい風を、ぜひ感じてください。
CGとスタントマンを極力使わない、俳優たちの壁を駆け上がる、屋根の上を駆け抜ける、同時に斬り合う剣さばきのスピードなど、私たちの知っている時代劇とはまったく違う殺陣のダイナミックでスリリングなアクションに胸が震えました。
登場人物ひとり一人の熱量の大きさも『るろうに剣心』シリーズも魅力のひとつ。その熱量が重なりぶつかり合う緊迫感が、新しい時代へのウネリがみごとに表現しています。また、二度と見せないであろう俳優たちの瞬間をとらえる巧さも秀逸です。温和な剣心(佐藤健)が剣を持ったときに見せるまったく違う顔に、背筋が何度もゾクっとしたことを覚えています。
ハリウッドで演出や脚本を学んだ大友監督は、現場で鍛え蓄積してきた技術に着地することなく、さらに新しいものに挑戦しようとする妥協しない作品づくりをけん引してきました。既存を打破し新しい時代劇、新しいアクション映画として世界へと羽ばたいた『るろうに剣心』シリーズは必見です。
DATA
ワーナー・ブラザース『るろうに剣心 伝説の最期編』
出演:佐藤健、武井咲、青木崇高、蒼井優、神木隆之介ほか
原作:和月伸宏『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』(集英社)
監督:大友啓史
脚本:藤井清美、大友啓史
音楽:佐藤直紀
複数のカメラによる撮影は死角が生まれないため、セットは広範囲でのつくりこみが必要になることや、ワンカットワンカットと撮影が途切れないので、必然的に台本を叩き込んで現場に臨むこと(都度台本を確認する流れではなくなった)など、現場はタイトになりますが、極上のリアリティが作品にさらなる命を吹き込み数々の名シーンを生みました。
俳優陣の怪演に息をのんだ池田屋事件の描写や時代を大きく動かす切符を手にした『土佐の大勝負』のほか、坂本龍馬(福山雅治)と後藤象二郎(青木崇高)が対峙した18分間の長回しによる『清風亭の対決』など、手に汗握る緊迫感や迫真の演技は今も語り継がれています。クールな大河ドラマにしびれました。
DATA
NHK『龍馬伝』
出演:福山雅治、蒼井優、青木崇高、石橋凌、石橋蓮司ほか
ナレーター:香川照之
脚本:福田靖
チーフ演出:大友啓史
プロデューサー:土屋勝裕、鈴木圭、岩谷可奈子
海外を含め、数々の賞を受賞した社会派ドラマ『ハゲタカ』は、日本企業を買収する側、される側の息が詰まりそうな心理戦を非常に乾いた感覚で描いています。バブル崩壊後の右往左往とカリスマ性への傾倒は視聴者の探求心を刺激しますが、どこからかにじみ出る男たちの哀愁も私たちの胸の深くで、恋愛ドラマとはまた違う音色を静かに響かせました。
2019年に公開された映画『影裏』では、盛岡市を舞台に消えた友人を想いながらも彼の本質を探り当てることに揺れ動く、綾野剛演じる主人公の気持ちにいろんな匂いを感じます。
DATA
ソニー・ミュージックエンタテインメント『影裏』
出演:綾野剛、松田龍平、筒井真理子、中村倫也、平埜生成ほか
原作:沼田真佑『影裏』(文藝春秋)
監督:大友啓史
脚本:澤井香織
音楽:大友良英
学校、電車、交差点、私たちのよく知っている暮しが映り、これも大友作品なのかと驚きました。過剰なものや余分なものがまったくないため、濃厚なのにシンプル。そこには棋士たちが将棋盤に向かうときの真っ直ぐな心がそのまま登場人物たちが誰かに向き合う姿勢とシンクロし、観ているこちらまで心が洗われるようでした。
DATA
東宝/アスミック・エース『3月のライオン』
出演:神木隆之介、有村架純、倉科カナ、染谷将太、清原果耶ほか
原作:羽海野チカ『3月のライオン』(白泉社・ヤングアニマル連載)
監督:大友啓史
脚本:岩下悠子、渡部亮平、大友啓史
音楽:菅野祐悟
俳優たちの一瞬の表情をとらえるのが、どの作品もみごと。気持ちを抑え込んできた主人公の桐山零(神木隆之介)の激しさや、ふだん温和な剣心(佐藤健)の怖さなど、とらえる一瞬の表情は大友啓史ならではで、いつもゾクっとさせられます。
新しい何かに挑み続けるクリエイターとしての姿勢を徹底する大友監督が次に何を見せてくれるか、まずは2部作となる映画『るろうに剣心 最終章 The Final / The Beginning』に期待しましょう。
時代劇の新しさと可能性に胸躍る『るろうに剣心』
『るろうに剣ー明治剣客浪漫譚』の連載が『週刊少年ジャンプ』でスタートしたのは1994年、テレビアニメの放送開始は1996年です。『そばかす』をはじめ、ポップな楽曲が大人気となったことを覚えている人も多いのではないでしょうか。漫画の実写化は確立された世界観があるため望まないファンも多いなか、2012年に公開された大友啓史監督による実写版が描いた圧巻の世界観は、たくさんのひとを魅了しました。3部作が公開され、世界中で愛されるシリーズとなっています。CGとスタントマンを極力使わない、俳優たちの壁を駆け上がる、屋根の上を駆け抜ける、同時に斬り合う剣さばきのスピードなど、私たちの知っている時代劇とはまったく違う殺陣のダイナミックでスリリングなアクションに胸が震えました。
登場人物ひとり一人の熱量の大きさも『るろうに剣心』シリーズも魅力のひとつ。その熱量が重なりぶつかり合う緊迫感が、新しい時代へのウネリがみごとに表現しています。また、二度と見せないであろう俳優たちの瞬間をとらえる巧さも秀逸です。温和な剣心(佐藤健)が剣を持ったときに見せるまったく違う顔に、背筋が何度もゾクっとしたことを覚えています。
ハリウッドで演出や脚本を学んだ大友監督は、現場で鍛え蓄積してきた技術に着地することなく、さらに新しいものに挑戦しようとする妥協しない作品づくりをけん引してきました。既存を打破し新しい時代劇、新しいアクション映画として世界へと羽ばたいた『るろうに剣心』シリーズは必見です。
DATA
ワーナー・ブラザース『るろうに剣心 伝説の最期編』
出演:佐藤健、武井咲、青木崇高、蒼井優、神木隆之介ほか
原作:和月伸宏『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』(集英社)
監督:大友啓史
脚本:藤井清美、大友啓史
音楽:佐藤直紀
クールな大河に唸りしびれた『龍馬伝』
大友啓史が演出のチーフを担い、坂本龍馬の生涯を描いた『龍馬伝』(2010年/NHK)は、大河ドラマへの思い込みを壊し、新しい時代へ舵をきった作品と言えます。全編をプログレッシブカメラで撮影した深みのある映像は映画のような味わいと、複数のカメラが同時に撮影することで、途切れることのない芝居の臨場感が生まれ、私たちをグイグイと引き込みました。複数のカメラによる撮影は死角が生まれないため、セットは広範囲でのつくりこみが必要になることや、ワンカットワンカットと撮影が途切れないので、必然的に台本を叩き込んで現場に臨むこと(都度台本を確認する流れではなくなった)など、現場はタイトになりますが、極上のリアリティが作品にさらなる命を吹き込み数々の名シーンを生みました。
俳優陣の怪演に息をのんだ池田屋事件の描写や時代を大きく動かす切符を手にした『土佐の大勝負』のほか、坂本龍馬(福山雅治)と後藤象二郎(青木崇高)が対峙した18分間の長回しによる『清風亭の対決』など、手に汗握る緊迫感や迫真の演技は今も語り継がれています。クールな大河ドラマにしびれました。
DATA
NHK『龍馬伝』
出演:福山雅治、蒼井優、青木崇高、石橋凌、石橋蓮司ほか
ナレーター:香川照之
脚本:福田靖
チーフ演出:大友啓史
プロデューサー:土屋勝裕、鈴木圭、岩谷可奈子
漂う哀愁が大人を魅了した『ハゲタカ』
インパクトのある映像が印象的な大友作品ですが、男の哀愁の奥底にあるものを静かに描く感性にも唯一無二を感じます。海外を含め、数々の賞を受賞した社会派ドラマ『ハゲタカ』は、日本企業を買収する側、される側の息が詰まりそうな心理戦を非常に乾いた感覚で描いています。バブル崩壊後の右往左往とカリスマ性への傾倒は視聴者の探求心を刺激しますが、どこからかにじみ出る男たちの哀愁も私たちの胸の深くで、恋愛ドラマとはまた違う音色を静かに響かせました。
2019年に公開された映画『影裏』では、盛岡市を舞台に消えた友人を想いながらも彼の本質を探り当てることに揺れ動く、綾野剛演じる主人公の気持ちにいろんな匂いを感じます。
DATA
ソニー・ミュージックエンタテインメント『影裏』
出演:綾野剛、松田龍平、筒井真理子、中村倫也、平埜生成ほか
原作:沼田真佑『影裏』(文藝春秋)
監督:大友啓史
脚本:澤井香織
音楽:大友良英
極めていく道の向こうに射す光 『3月のライオン』
2017年に公開された2部作『3月のライオン』も、漫画の世界をサラリと飛び越えた作品となりました。登場人物一人ひとりが抱えるものの重たさに、ふと織り込まれる軽やかな空気が心地よく、キラキラと光る若い演技が非常に印象的な名作です。学校、電車、交差点、私たちのよく知っている暮しが映り、これも大友作品なのかと驚きました。過剰なものや余分なものがまったくないため、濃厚なのにシンプル。そこには棋士たちが将棋盤に向かうときの真っ直ぐな心がそのまま登場人物たちが誰かに向き合う姿勢とシンクロし、観ているこちらまで心が洗われるようでした。
DATA
東宝/アスミック・エース『3月のライオン』
出演:神木隆之介、有村架純、倉科カナ、染谷将太、清原果耶ほか
原作:羽海野チカ『3月のライオン』(白泉社・ヤングアニマル連載)
監督:大友啓史
脚本:岩下悠子、渡部亮平、大友啓史
音楽:菅野祐悟
俳優たちの一瞬の表情をとらえるのが、どの作品もみごと。気持ちを抑え込んできた主人公の桐山零(神木隆之介)の激しさや、ふだん温和な剣心(佐藤健)の怖さなど、とらえる一瞬の表情は大友啓史ならではで、いつもゾクっとさせられます。
新しい何かに挑み続けるクリエイターとしての姿勢を徹底する大友監督が次に何を見せてくれるか、まずは2部作となる映画『るろうに剣心 最終章 The Final / The Beginning』に期待しましょう。
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