戸田恵梨香のドラマをイチオシ！彼女が演じる潔く強く美しい女性たち

草木が芽吹き花が咲きやがて散りゆく。その瞬間の輝きを自然体で見せる戸田恵梨香は、満開の花の美しさだけを見せる女優ではありません。年齢を重ねるほどに透明感を増していく、そんな彼女が演じる女性たちもまた、潔く強くやさしく、そして美しいと感じます。

今回は、戸田恵梨香がどんな女性を演じてきたのか振り返ってみたいと思います。

 

果てしない闘いに、すべてをかけて挑んだ当麻紗綾（『SPEC～警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿』）

映画も3本制作された人気ドラマ『SPEC～警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿～』の主人公・当麻紗綾は、IQ201、協調性なし、偏食で大食いの超個性派。そんな刑事らしからぬキャラクターを戸田恵梨香が軽やかに演じています。しかし、物語が進むにつれ、彼女のはかり知れない切なさと、終わりの見えないSPECホルダーとの闘いに臨む覚悟を知り、胸がしめつけられていきました。

パロディや小ネタに笑いながらも、思い出すのは当麻紗綾というひとりの女性がこの世界を生きた軌跡。この世界を守り抜くという想いに突き動かされ、全身全霊で闘い続けた主人公の姿は、女優をまっとうする戸田恵梨香の姿に重なり合うのかもしれません。
 

DATA
TBSテレビ『SPEC～警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿』
出演者：戸田恵梨香、加瀬亮、神木隆之介、福田沙紀、城田優ほか
脚本：西荻弓絵
監督：堤幸彦、加藤新、今井夏木、金子文紀

 

あふれる愛で生き抜いた北澤尚（『大恋愛～僕を忘れる君と～』)

『大恋愛～僕を忘れる君と～』で演じたのは、若年性アルツハイマーを発症する医師・北澤尚（結婚後は間宮尚）。進行していく症状に混乱する心情はもちろん、張り詰めている心が安堵を見せる瞬間でも彼女の巧さが光りました。やがて決心し、愛する人たちに、あふれんばかりの愛を注ぎ込む尚の姿に涙腺は崩壊します。

哀しさに”いかにも”の高揚を含めず、内なる声をまっすぐに届ける飾らない演技が秀逸だった一方で、恋する女性の華やぎは実にキュートでした。私たちは何度も笑顔になりながら尚の人生に寄り添うことができたのは、彼女の演技があってこそです。
 
DATA
TBSテレビ『大恋愛～僕を忘れる君と～』
出演者：戸田恵梨香、ムロツヨシ、富澤たけし（サンドウィッチマン）、杉野遥亮、小篠恵奈ほか
脚本：大石静
音楽：河野伸
プロデューサー：宮﨑真佐子、佐藤敦司
演出：金子文紀、岡本伸吾、棚澤孝義
主題歌：back number「オールドファッション」（ユニバーサル シグマ）

 

強さとやさしさで意志を貫く緋山美帆子（『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』）

今という時代を生きる若き医師たちを描いた『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』では、常に前へと自らを奮い立たせる緋山美帆子を演じています。一見彼女らしい役柄と感じますが、青春の匂いを残した群像劇の一面を持つ医療ドラマでの戸田恵梨香は新鮮でした。

失敗もする、挫けもする、ぶっきら棒なもの言いもする、人間味あふれた緋山の姿を、決して独りよがりで強がりな女性という枠におさめず、たゆまない努力を重ねる強さと聡明さに、クール×キュートというエッセンスを加えながら、私たちが大好きな緋山美帆子をつくりあげてくれました。
 
DATA
フジテレビ『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』
出演者：山下智久、新垣結衣、戸田恵梨香、比嘉愛未、浅利洋介ほか
脚本：林宏司、安達奈緒子、金沢達也
演出：西浦正記、葉山浩樹、関野宗紀、田中亮、野田悠介
監督：西浦正記
オープニング：佐藤直紀「Code Blue」
エンディング：Mr.Children「HANABI」

 

自らの意志で扉を開いた じょご（『駆込み女と駆出し男』）

余分なものをそぎ落とした彼女の演技に息をのんだのが、映画『駆け込み女と駆け出し男』。日本の四季の美しさと粋な日本語が印象的な作品で、東慶寺という広い世界への扉を、駆込むことで開いた好奇心豊かな鉄練りの”じょご”を、生き生きと表現しています。

重たいエピソードが続くものの、独特のテンポと笑いあり涙ありのしゃれっ気ある作品は、戸田恵梨香が、緑の匂いと土の匂いをまといながら、味わい深く見せた傑作。彼女に内在していた才能が、風のようにふと舞い上がった瞬間を目撃できます。
 
DATA
松竹『大恋愛～僕を忘れる君と～』
出演者：大泉洋、戸田恵梨香、満島ひかり、内山理名、陽月華ほか
原作：井上ひさし『東慶寺花だより』
脚本：原田眞人
音楽：富貴晴美
撮影：柴主高秀
編集：原田遊人
監督：原田眞人
主題歌：back number「オールドファッション」（ユニバーサル シグマ）

 

鍛錬の日々が放つ輝きを永遠にした 川原喜美子（『スカーレット』）

朝の連続テレビ小説『スカーレット』は、実在する女性がモデルであることから、哀しみも痛みも骨太に描かれた力作です。きらびやかな瞬間をインパクトを持って見せるというよりは、自らを追い込む鍛錬の日々から生まれる女性陶芸家・川原喜美子の輝きを戸田恵梨香が丹精込めて磨き上げています。その粘り強さが、主人公が灯し続けた情熱を鮮明にしているのでしょう。
 
DATA
NHK『スカーレット』
出演者：戸田恵梨香、富田靖子、松下洸平、伊藤健太郎、大島優子ほか
ナレーター：中條誠子（語り）
作：水橋文美江、三谷昌登
音楽：冬野ユミ
制作統括：内田ゆき
プロデューサー：長谷知記、葛西勇也
演出：中島由貴、佐藤譲、鈴木航、小谷高義、泉並敬眞、野田雄介
オープニング：Superfly「フレア」

日々自分を見つめ、整えることを大切にしているのは女優・戸田恵梨香自身にも通じること。彼女の演技を観ていると、「一生懸命演じています！」と分からせることが”熱演”ではなく、俳優が人物に命を注ぎ、その人物の放つ熱量に圧倒されたとき、”熱演”と感じるのではないだろうかと思うようになりました。10年後、20年後と何を見せてくれるのか、非常に気になる存在です。