キムタクのドラマを厳選―キムタクを脱皮してキムタクを進化させる、俳優・木村拓哉
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数々のドラマや映画に出演し、私達を魅了してきた木村拓哉。ドラマガイドの竹本さんによると、「キムタク」を脱皮し、常に進化し続けている楽しさが魅力的なんだとか。俳優・木村拓哉の存在感が光る、イチオシ作品を教えていただきました。
イチオシスト:竹本 道子
『太陽にほえろ!』のスクラップブックをつくり友人と盛り上がったこども時代。夕方の再放送が見たくて一目散に帰宅した青春時代。撮影現場を垣間見た平成時代。尽きないドラマへの好奇心は令和もつづく。All About ドラマ ガイドを務める。
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『BG~身辺警護人~』『グランメゾン★東京』『教場』など……最近、木村拓哉のドラマから目が離せません。
それは、不要なものをそぎ落としながら「キムタク」を脱皮し進化させる楽しさを、私たちと共有しているかのように見えます。
みんなを引き込み時代をけん引したキムタクのドラマ
「ぶっちゃけ」「ちょ、待てよ」「よろしこ」といった台詞が印象的だったキムタク。ちょっと型破りな人物に、私たちは”キムタクらしさ”を感じてきました。『HERO』に登場する茶髪でロン毛の検察官・久利生公平や、他人とぶつかることを恐れない『GOOD LUCK!!』の新海元、ノリの良さとスポーツの熱さを交えた『プライド』の里中ハルらにグイグイと引き込まれたものです。そして、それらの作品は女性ファンだけでなく、少年やおじさん世代に支持されました。
人びとはなぜ”キムタク”に熱狂したのでしょう。
相手が誰であっても立ち向かう意志の強さと、軽やかで自由な生き方で魅了する人物を演じてきたことだけで、キムタクの軌跡が生まれたわけではありません。誰もが心を揺さぶられ共感し応援したくなる登場人物たちを生き生きと輝かせた、木村拓哉の感性と努力があったからです。
たとえば、検事を演じた『HERO』における法廷での尋問や、史上最年少で内閣総理大臣に就任する朝倉啓太を演じた『CHANGE』の最終回における22分30秒の演説など、彼には誰もが耳を傾け、最後まで話を聞かせる術があります。
長い台詞をコントロールしながら、伝えたいことと伝えるべきことを鮮明にして、一言一句を大切にわかりやすく血の通ったことばで伝える。だからこそ、何のための裁判か、どんな国にしたいのかを私たちは理解し、胸を熱くできたんですよね。
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フジテレビ┃『HERO』
出演:木村拓哉、小日向文世、八嶋智人、田中要次、正名僕蔵、角野卓造ほか
脚本:福田靖、大竹研(第1期)、秦建日子(第1期)、田辺満(第1期)
演出:鈴木雅之、平野眞。加門幾生(第1期)、澤田鎌作(第1期・特別編)、金井紘(第2期)、森脇智延(第2期)
新しいキムタクを見せる木村拓哉の遊び心としなやかさ
40代後半となった彼が主演している最近のドラマはどうでしょう。”キムタクらしさ”を予感させた『グランメゾン★東京』は、進化した映像技術で命を吹き込まれた美しい料理や、実力ある俳優陣のエネルギッシュなぶつかり合いなど、画面いっぱいに夢への情熱と躍動感があふれた大人の青春ドラマです。オーナーシェフ・早見倫子(鈴木京香)への態度にキムタクっぽさを温存させつつ、最終回で熱いスピーチを繰り広げたのは倫子。かつてなら、物語はキムタクにスポットを向ける流れをつくりそうですが、そうではないところに清々しさと新しさを感じました。
『BG~身辺警護人~』でも、観た目の派手さや自由な立ち振る舞いを封印しつつ、「やめろぉ!」と声をあげ、指でカウントする姿にキムタクっぽさを感じさせています。
おじさん世代を等身大で演じることで、キムタクという型を外しながら、キムタクっぽさを織り込む演技は大人の遊び心すら感じますよね。
『グランメゾン★東京』も『GB~身辺警護人~』も、すばらしい作品でした。
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TBSテレビ┃『グランメゾン★東京』
出演:木村拓哉、鈴木京香、玉森裕太 (Kis-My-Ft2)、寛一郎、朝倉あきほか
脚本:黒岩勉
演出:塚原あゆ子、山室大輔、青山貴洋
料理監修:岸田周三(カンテサンス)、トーマス・フレベル(INUA)、服部栄養専門学校
プロデューサー:伊與田英徳、東仲恵吾
音楽:木村秀彬
主題歌:山下達郎『RECIPE(レシピ)』(Warner Music Japan)
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テレビ朝日┃『BG~身辺警護人~』
出演:木村拓哉、斎藤工、菜々緒、間宮祥太朗ほか
脚本:井上由美子
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子
プロデューサー:三輪祐見子(GP)、川島誠史、秋山貴人、田上リサ
『教場』の圧倒的な木村拓哉で可能性を開花させる
『教場』では、圧倒的な木村拓哉に震えました。動作ひとつひとつに一寸の違いも見せない警察学校の訓練生の演技から、現場がいかにタイトであるかは想像できますが、あの緊張感は木村拓哉が演じたニコリともしない教官・風間公親の存在があってこそです。若き俳優たちの迫真の演技を堪能できる、最高にクールな作品となりました。
クライマックスにおける訓練生・都築耀太(味方良介)との対峙では、回想シーンを絡めることなく、2人の台詞で過去を見せきったことにただ驚きました。感情をぶつけ合いさらけ出し、過去を解放していく濃厚な時間にこちらも緊張し続けたことを覚えています。
周囲への気配りにおいても突出した座長力を発揮する木村拓哉のすごさは、自らを律して完璧にコントロールし、現場ですさまじい集中力を見せるところ。そのプロフェッショナルが若い演技の宝庫とも言える傑作『教場』の誕生に貢献しています。
DATA
フジテレビ┃『教場』
出演:木村拓哉、工藤阿須加、川口春奈、林遣都、葵わかな、味方良介ほか
原作:長岡弘樹『教場』シリーズ(小学館)
脚本:君塚良一
演出:中江功
プロデューサー:中江功、西坂瑞城、髙石明彦(The icon)
視聴者の胸をキュンキュンさせた『あすなろ白書』での黒ぶちメガネが似合う取手治や、ことば少なでその危うさに胸をドキドキさせた『眠れる森』の伊藤直季、クライム・ロマンドラマ『ギフト』でのクローゼットから発見された記憶のない男・早坂由紀夫など、振り返ってみるといかに彼の演技を見続けてきたかを実感します。
たしかに”木村拓哉だから観てしまう”のですが、それは、彼の作品への信頼があるから。この先50代、60代となる俳優・木村拓哉が、何を見せてくれるのか、まだまだ楽しみは尽きません。
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