『今日から俺は!!』に学ぶ、福田雄一監督ドラマの魅力!笑う門には福田作品
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『今日から俺は!!』など、さまざまなコメディ作品を手掛ける奇才・福田雄一。登場人物が出てくるだけで笑ってしまうなど、観ていて明るくなれるのが特徴です。今回はドラマに精通する竹本さんに、福田雄一監督の映画・ドラマの魅力を伺いました。
イチオシスト:竹本 道子
『太陽にほえろ!』のスクラップブックをつくり友人と盛り上がったこども時代。夕方の再放送が見たくて一目散に帰宅した青春時代。撮影現場を垣間見た平成時代。尽きないドラマへの好奇心は令和もつづく。All About ドラマ ガイドを務める。
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2018年に大人気となったドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ系)の映画版『今日から俺は!!劇場版』が大ヒットしています。監督は、脚本も手掛けるコメディの奇才・福田雄一。バラエティやミュージカルなど多彩な分野で磨かれたコメディセンスに、世代を問わず日本中が沸いています。
今回は、笑って泣ける福田雄一作品の魅力を『今日から俺は!!』をベースにひも解いていきましょう。
達観でもなく傍観でもない。あるのは”おもしろいこと”への流儀
ドラマといえば、メッセージが明確であるとか、時代を生き生きと描写しているなど、ドラマたる深みを求められるものですが、福田作品すばらしさはそこではありません。「むずかしいこと抜き」の単純明快な姿勢をドラマの根底に感じられます。実力派の俳優たちが、全力でバカバカしいことを言い放ち、変な顔をして、かっこよくない動きに全力で取り組む姿にプッと吹き出すおかしさがあるんですよね。おもしろいことに全力投球する登場人物たちは、一方で、生きる時代を主体的にしなやかに楽しんでいるようにも見えて、とても魅力的です。
社会を変えようとか、社会に何かを投げかけようというかしこまった何かを優先させないものの、メッセージを手放しているわけでもありません。『今日から俺は!!』では「仲間を守る」「弱い者いじめはしない」など、胸の熱くなるシーンが数多いことも印象的です。
笑って明るい気持ちになることがエンターテインメントの目指すところであり、その笑いは、誰かを傷つけるものでもなく、特別な知識を有する人たちだけのものではありません。社会を達観しているわけでもなく、社会を傍観しているわけでもない、福田監督の絶妙な立ち位置には大きな人間愛があってこそ。「笑って幸せな気持ちになれる」、それが福田作品の真髄です。
DATA
福田雄一┃今日から俺は!!
キャスト:賀来賢人、伊藤健太郎、清野菜名、橋本環奈ほか
原作:西森博之 「今日から俺は!!」(小学館「少年サンデーコミックス」刊)
脚本・監督:福田雄一
演出:福田雄一、鈴木勇馬
音楽:瀬川英史
主題歌:今日俺バンド「男の勲章」
マンガの実写化で実現する、みごとな立体感
『今日から俺は!!』のほかにも、『アオイホノオ』『ニーチェ先生』『聖☆おにいさん』、映画『銀魂』など、福田作品にはマンガの実写化が目立ちます。そしてどれもが最高に楽しくおもしろい。マンガの中の人物たちに命が注ぎ込まれる躍動感もあれば、マンガと違う世界観で映像の醍醐味を見せることもあり、そのバランスには福田監督だけが持つ特殊なセンサーを感じます。狙いすぎると、映像の中が遠く感じて白けてしまうマンガの実写化ですが、つくりこまない空気と演者の想像力にたくされる現場の風土が、ギャグマンガの映像化をうまく成功させているのでしょう。80年代のツッパリたちを描いた『今日から俺は!!』では、コスチュームや髪型などマンガの世界を忠実に再現していますが、伊藤(伊藤健太郎)と京子(橋本環奈)のバカップルぶりや主題歌『男の勲章』、福田組・ムロツヨシを筆頭にした牧歌的職員室など、ポップな要素を詰め込むことで、さらに明るさを増しています。それらを実現する俳優陣のスペックを引き出す福田監督の手腕とも言えそうです。
マンガの持つ物語のおもしろさと演者のおもしろさをいかに掛け合わせるか。福田監督のたしかな先見があるからこそ、私たちはマンガの世界を生き生きと楽しむことができるのです。
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福田雄一┃アオイホノオ
キャスト:柳楽優弥、山本美月、安田顕、ムロツヨシほか
原作:島本和彦「アオイホノオ」(小学館「ゲッサン」連載中)
脚本・監督:福田雄一
音楽:瀬川英史
OP:ウルフルズ「あーだこーだそーだ!」
ED:柴咲コウ「蒼い星」
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福田雄一┃銀魂
キャスト:小栗旬、菅田将暉、橋本環奈ほか
原作:空知英秋「銀魂」(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
脚本・監督:福田雄一
音楽:瀬川英史
主題歌:UVERworld「DECIDED」
青春×コメディの相乗効果で、全世代に笑いを届ける
『今日から俺は!!映画版』には、80年代のツッパリ文化を実体験しているシニア世代に加え、大勢の子どもたちが見にきていました。佐藤二朗が演じる理子(清野菜名)の父親・赤坂哲夫が登場するだけでどよめき、主人公・三橋貴志(賀来賢人)の両親・一郎(吉田鋼太郎)と愛美(瀬奈じゅん)の大きな声にケラケラと笑いが起きる。登場するだけで盛り上がるキャラクターの存在に、なぜかワクワクできることも魅力のひとつ。これこそがマニアックなようで、実は万人向けの明るい笑いは世代を選びません。また、福田作品には若々しさを感じます。コンビニの前で、電車の座席で、友だちと一緒にいるだけで笑っていた青春時代。毎日が理屈じゃないおもしろさあふれていた青春時代と、コメディの相性のよさを最大限にとらえる巧さも福田作品ならではです。早弁、屋上、商店街、友だちといるだけで楽しい風景は『今日から俺は!!』でも随所に見られます。
※ご相談:『ニーチェ先生』は、この見出し内の関連作品として紹介できますか?もしよければ青春×コメディのテーマでの関連性を加筆お願いします。
DATA
福田雄一┃ニーチェ先生
キャスト:間宮祥太朗、浦井健治、松井玲奈、内田理央ほか
原作:漫画・ハシモト/原作・松駒「ニーチェ先生~コンビニに、さとり世代の新人が舞い降りた~」(KADOKAWA「月刊コミックジーン」連載中)
脚本・演出:福田雄一
主題歌:Shout it out「ハナウタ」
登場人物たちが若い心を持ち続けている。人生を明るいものだととらえている。だから、観ている私たちも明るく笑える――明るく笑うところには生命力がわきあがります。笑う門には福来るで、これからも多いに笑いたいと思います。
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