東日本大震災の実話をもとにした映画『遺体 明日への十日間』で観る真実
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本業の傍ら、地域の方々をサポートする民生委員としても活動されている介護ジャーナリストの小山さんが紹介してくれたのは、映画『遺体 明日への十日間』。東日本大震災直後の釜石市で、民生委員を努めていた主人公は、遺体安置所となった体育館を訪れます。そこで起きていた真実とは――。
イチオシスト:小山 朝子
介護福祉士の資格を持つ介護ジャーナリスト。全国の介護現場での取材経験と自らの10年近くの介護経験を踏まえ、各地で講演、執筆活動を展開している。
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みなさんは「民生委員」をご存知でしょうか。民生委員は、子どもから高齢者まで、困りごとのある地域の方々の相談に応じ、必要な場合には役所や関係機関とのパイプ役を果たしてくれるボランティアのことです。
しかし現在は全国的に、民生委員の高齢化が課題となっています。2019年、全国民生委員児童委員連合会では、その認知度を高める目的でプロモーション動画を公開。実際に民生委員として活動しているみなさんがラップを歌うという内容で話題となりました。ちなみに、私も仕事と並行しながら地域では民生委員として活動しています。
今回イチオシする映画『遺体 明日への十日間』は、釜石市で活動していた1人の民生委員の行動を軸に描かれるヒューマン・ドラマです。
震災直後の遺体安置所を舞台にしたストーリー
2011年3月11日、東日本大震災による津波で多大な被害に遭った岩手県釜石市では、廃校の体育館が遺体安置所として使われることになりました。安置所で多数の遺体が物のようにぞんざいな扱いをされていることに心を痛めた民生委員の相葉は、ボランティアとして安置所で活動したいと申し出ます。相場はかつて葬儀社で働いていた経験を生かし、遺体をどう扱ったらいいのか周囲に伝え、目の前の遺体に敬意を払いながら話しかけます。当初、市の職員などは相場の言動に戸惑いますが、やがてそれまでの殺伐とした空気が変わっていきます。そして遺体を前に悲しみに打ちひしがれる家族も、少しずつ落ち着きを取り戻してゆくのです。
かけがえのない1人の命
この映画の原作は、震災直後の釜石市を取材し、多くの証言をもとに書き上げられたルポルタージュ『遺体 ―震災、津波の果てに』(石井光太著・新潮社)のため、主人公にも実在のモデルがいます。なので、ボランティアの主人公に対しておにぎりひとつ配られない厳しいルールが設けられていたリアルな現状も描かれています。ニュースで報じられる「第三者の命」は「かけがえのない1人の命」であることにあらためて気づかされる作品です。
DATA
君塚良一┃遺体 明日への十日間
監督・脚本:君塚良一
出演:西田敏行、佐藤浩市、國村隼、緒形直人
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