【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】電気エネルギーのマネジメントが中心になるF1は見たくない!
イチオシスト

新レギュレーションのマシンに批判的なフェルスタッペン。電気エネルギーのマネジメントが重視され、「今年のマシンは不自然なドライビングを強いられる。運転していて楽しくない」と語る
2月に中東バーレーンで行なわれた2度の公式テストが終了し、今週末にはいよいよ2026年シーズンの戦いの火蓋が切って落とされる。開幕戦(3月7日~9日)の舞台となるのはオーストラリア・メルボルンのアルバートパーク・サーキット。
今年は新たなレギュレーションが導入され、マシンが劇的に変わった。開幕前のテストを見る限り、これまでとは違うドライビングやレース戦術が求められ、中でもパワーユニット(PU)の電気エネルギーのマネジメントが勝負の鍵を握ると言われている。
それに対して、一部のチームやドライバーだけでなく世界中のファンからも不満の声が上がっているが、果たして開幕戦はどんなレースになるのか!?
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【フェラーリが驚きの新型ウイングを投入!】レギュレーションが大きく変わったことで、バーレーンでの開幕前のテストでは各チームが独自のアイデアを盛り込んだニューマシンを投入していました。その中で、もっとも印象的だったのはフェラーリのリヤウイングです。
今年からアクティブエアロと呼ばれる可変式のフロントウイングとリヤウイングが搭載されますが、フェラーリのリヤウイングはストレートでグルっと180度回転します。あのアイデアには驚きました。
回転することでドラッグを減らして直線のスピードを伸ばすだけでなく、リフト(揚力=浮き上がろうとする力)も発生させているようです。その結果、リアの荷重を減らすことでタイヤへの負担も減るという効果が見込めそうですが、本当にあの革新的なウイングを実戦投入してくるのか、要注目ですね。

革新的なデザインのフェラーリのニューマシンSF-26。軽量化も進んでおり、テストでは高い競争力を発揮。フェラーリのハミルトンとルクレールは王座争いの本命に名乗りを上げた
フェラーリはリア周りに独自の設計を行ない、エキゾーストの後方に小型のフィンを装着するなど、興味深いアイデアをいくつか試しています。フェラーリはテストでも、好タイムを安定してマークしており、楽しみな存在です。
【F1は世界最速のレースを目指すべき】フェラーリを始め、各チームのニューマシンにはワクワクさせられていますが、F1のレース全体として見ると、とても不安を感じています。
なぜなら今シーズンは、レース本来の姿である「限界まで攻めて走る」というドライビングスタイルよりも、「いかに効率よく電気エネルギーをマネジメントするのか」という走りが重視されそうだからです。
例えば、高速コーナーでは少しでもタイムを削るために速く走るのではなく、次の直線に向けて電気エネルギーを回収するためにアクセルを抜くという場面が出てきそうです。
マックス・フェルスタッペン選手を始め、多くのドライバーが「今年のマシンは運転していて楽しくない」などと不満を漏らしています。F1は世界最速を目指すレースであってほしい。
特にコーナーリングではどんなレーシングカーよりも速いというのがF1マシンです。でも今年のレギュレーションでは、その"F1らしさ"が消えてしまうかもしれない。
不安はそれだけではありません。5年振りにワークス復帰するホンダは、バーレーンのテストでトラブルが続き、まともに走ることができませんでした。
もちろんテストの結果がすべてではありませんが、ラップタイムを見る限り、昨年から勢力図に大きな変化はありませんでした。結局はメルセデス、フェラーリ、レッドブル、マクラーレンが上位を占めるという結果になりました。
【ワークス復帰するホンダへの不安と期待】オフのテストではホンダのいいところと悪いところの両方が出てしまったと感じました。ホンダは2021年シーズン限りでF1から撤退していたとはいえ、レッドブルのPU製造会社、レッドブル・パワートレインズ(RBPT)に技術支援するという形でPUを供給していました。
F1には関わり続けていたので、ホンダは新しいレギュレーションにもしっかりと対応するだろうと、どこか安心感があったんですよね。ただしワークス活動が終了した後、それまでF1プロジェクトで開発に携わっていた人たちが別の部署に異動して、エンジニア不在の期間があったといいます。
結局、ホンダのPUは撤退後も結果を出していましたが、F1プロジェクトは社内ではいったんリセットされてしまったのかもしれません。やはり、参戦と撤退を繰り返したことが影響しているのでしょうか。F1は甘くない、そう改めて感じました。
苦戦するホンダを尻目に、昨年までパートナーシップを組んでいたレッドブルは初めて自社で開発したPUにもかかわらず、テストで安定した走りを披露していました。その背景には、RBPTがメルセデスなどからスタッフを大量に引き抜いて、外部からの知見を取り入れているからだといわれています。
ホンダはその逆で、全部自分たちの手でやる。テストでの不振は、そうしたことも影響しているのかもしれませんが、困難に挑戦することで技術が磨かれていく、というのは第4期のレッドブル・ホンダの躍進で目の当たりにしてきましたし、それがホンダの魂なんですよね。
ホンダはテストでのトラブルについて「異常振動によってバッテリーシステム系にダメージを負った」と発表していますが、その原因はまだわかっていないようです。PUか車体のどこかに問題があるのか、あるいはアストンマーティンが初めて作ったギヤボックスとホンダのPUとのマッチングに問題があるのか......さまざまな可能性が考えられます。
アストンマーティン・ホンダという全体のパッケージのどこかに原因があるはずなのですが、なぜかホンダにだけ批判が集中するというのがF1ではよくあるパターンです。第4期のマクラーレン・ホンダのときはまさにそうで、最終的には両者の関係が悪化し、一度も勝つことなくパートナーシップは終わってしまいました。
今回はそんなふうにならなければいいなと思っていますし、アストンマーティンとともに困難を乗り越えて、フェルナンド・アロンソ選手が一日でも早く元気いっぱいに走る姿を見せてほしいですね。
【シーズン序盤は荒れた展開になる!?】シーズン序盤は、ドライバーもチームも新レギュレーションを習熟できていないために、波乱含みの展開になりそうな気がします。例えば、スタートです。今年はMGU-H(熱エネルギー回生システム)が廃止されるので、ターボラグが発生します。
アクセルを踏み込んでからターボチャージャーが効き始め、マシンが加速するまでに時間差が生じるので、フェラーリ陣営はかなり前から「2026年はスタートが問題になる」と指摘していたようです。でも他のチームはあまり感心を示さなかったようです。
フェラーリはターボラグに対応するためにレスポンス性に優れた小型のターボを採用しており、バーレーンのテスト中に行なわれたスタートのシミュレーションでは抜群のダッシュを見せていました。安全性を考慮してターボラグが出にくくなるようにスタートの手順が一部見直されましたが、今年のスタートは荒れそうです。

「地上波で久しぶりにF1が放送されるのに、電気エネルギーをどうマネジメントするのかというレースはなかなか多くの方に伝わりづらいような気がします。そこが心配ですね」と語る光一
それに開幕戦オーストラリアGPの舞台となるアルバートパークはアクセル全開率が高く、ドライバーにとっては非常に難しいレースになりそうですし、各PUメーカーのバッテリー性能の良し悪しがはっきりと出そうです。
今年はフェラーリに頑張ってもらおうと僕は言ってきましたが、オフのテストは好調で、久しぶりにタイトル獲得のチャンスが訪れそうです。
フェラーリが最後にタイトルを手にしたのは2008年のコンストラクターズ選手権です。ドライバーズ選手権は2007年のキミ・ライコネン選手を最後に約20年近くも遠ざかっています。
開幕戦のオーストラリアGPはフェラーリの2台がスタートで飛び出し、ルイス・ハミルトン選手とシャルル・ルクレール選手がワンツー・フィニッシュを決めてくれたら最高ですね。でも一番の期待したいのは、"F1らしい"レースを引き続き見せてほしいということです。
今シーズンのF1に対してチームやドライバーだけでなく、ファンからも不安や困惑の声が上がっています。繰り返しになりますが、電気エネルギーのマネジメントが中心になるF1は見たくありません。
僕の不安は杞憂に終わり、これまで通りに世界最速を競う、エキサイティングなレースが展開されることを心から願っています。
☆取材こぼれ話☆フジテレビは、開幕戦のオーストラリアGPと第3戦の日本GPの予選と決勝のハイライトを全国放送する。
「フジテレビが久しぶりに地上波でF1を放送するわけですから、少しでも興味を持ってくれる人が増えてほしいと思います。これでホンダの調子がよくて、日本人ドライバーがいたら最高だったんですけどね。
アストンマーティン・ホンダはオフのテストだけで判断すると、開幕戦は完走を目指す戦いになりそうですが、そこを裏切ってほしい。最低でも新規参入のキャデラックとアウディの上、できればウイリアムズ、ハース、アルピーヌよりも上でフィニッシュすることを期待しています。
今年は6年振りに日本人のレギュラードライバー不在のシーズンになりますが、レーシングブルズは角田裕毅(つのだ・ゆうき)選手と岩佐歩夢(いわさ・あゆむ)選手がリザーブドライバーを務めると発表しました。
角田選手はレッドブルとレーシングブルズの両方のリザーブを兼任することになるので、出場のチャンスをつかんでほしいですね」
スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/tk.TAKEO KIKUCHI THE BOLDMAN/株式会社シビア ヘア&メイク/大平真輝
構成/川原田 剛 撮影/樋口 涼(堂本氏) 写真/Redbull Ferrari
記事提供元:週プレNEWS
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