「代打・吉田」体制も? WBC連覇へ! 必勝のカギは大谷翔平の"前後"と"火消し"!
イチオシスト

前回大会は投打で躍動しMVPに輝いた大谷。今大会は打者専念となる
史上最強クラスのメンバーが集結した井端ジャパン。打順、守備位置、継投策など、「WBC連覇」に向けた最適解とは?
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【離脱続きの投手陣。"史上最強"の野手陣】開幕が目前に迫ったWBC。前回大会決勝、大谷翔平(ドジャース)が当時エンゼルスでチームメイトだった米国主将のマイク・トラウトから三振を奪って優勝を決めるという、ドラマチックすぎる世界一からはや3年。大会連覇に挑む侍ジャパンの戦いがいよいよ始まる。
そもそも、今大会に臨む日本代表の陣容はどのように評価できるのか?
「大谷を筆頭に、鈴木誠也(カブス)、吉田正尚(まさたか/レッドソックス)、岡本和真(ブルージェイズ)、村上宗隆(ホワイトソックス)のメジャー野手全員を招集できました。さらに、NPBからも佐藤輝明と森下翔太の阪神コンビ、近藤健介(ソフトバンク)、牧秀悟(DeNA)ら好打者がズラリ。打力に関しては間違いなく史上最強クラス。投手陣で故障離脱が相次いだことを差し引いても90点はつけていい強力布陣です」
こう語るのは、本誌おなじみの野球評論家・お股ニキ氏。現役投手を指導するピッチングデザイナーでMLBにも精通する識者と共に、連覇への道筋や課題を考えたい。
まずは、史上最強の呼び声高い野手陣について考察していこう。
「日本代表が優勝した2006年大会、2009年大会、前回2023年大会に共通するのは、野手が充実していたこと。逆に、勝ち切れなかった2013年大会と2017年大会の打撃陣は火力不足が否めませんでした。
やはり、優勝を狙うには打力が重要であり、今回はこれまで以上に守備力度外視で打てるメンバーを選考した、と言えます」
そんな極端なメンバー選考による弊害はないのか?
「打撃重視で考えればレフト吉田、センター鈴木、ライト近藤の布陣もありえますが、さすがにこれは"ファイヤーフォーメーション"すぎます。準々決勝以降の試合会場であるローンデポ・パークは外野が広く、センター鈴木は東京ラウンド限定としたい。センター森下のほうが攻守のバランスを保てると思います」

前回大会では大谷につなぐ2番打者として全試合出場を果たした近藤。今大会も注目だ
今回のメンバー選考で懸念のひとつが「センター問題」だ。本職と言えるのは周東佑京(うきょう/ソフトバンク)だけだが、足のスペシャリストという特性上、試合終盤に残しておきたい選手でもある。
「大事な場面では、周東と牧原大成(ソフトバンク)頼みになりそう。このふたりの使い勝手の良さは貴重で、牧原は本職こそ内野ですが、自チームでもセンターで好守を連発するなど外野守備にも定評がある。
スタメンは鈴木でも、試合終盤は周東や牧原で守備固めをしたい。同様に、ショートも打撃重視なら小園海斗(広島)でしょうが、試合終盤やアメリカラウンドでは源田壮亮(西武)を起用したいです」
一方、開幕前に平良海馬(かいま/西武)、石井大智(阪神)、松井裕樹(パドレス)と3人のリリーバーがケガで辞退となった投手陣はどうか?
「投手陣で重視したいのは"間違えない投手"であること。この3人の中で最も不用意な投球をしない石井の離脱は正直痛い。肩や肘の"勤続疲労"は懸念していましたが、まさか足の故障とは......。やはりリリーバーのコンディション維持は難しい、ということでしょう」
辞退した3人に代わり、予備登録メンバーから、藤平尚真(楽天)、隅田知一郎(ちひろ/西武)、金丸夢斗(中日)の3人が代表入りした。
「"間違えない投手"という意味で重要なのは、スプリットなどの落ち球を駆使できること。藤平はスプリット投手ですし、プレミア12でも活躍した実績があります。また、藤平の加入でNPB全球団から選手が招集されたことになり、『総力結集』の観点からも悪くない人選です。
隅田と金丸はチェンジアップの質が良く、第2先発として重宝しそう。ただ、"間違えない"という意味ではスプリットが武器の杉山一樹(ソフトバンク)を選んでほしかったです」
昨季パ・リーグのセーブ王である杉山は、今井達也(アストロズ)、小笠原慎之介(ナショナルズ傘下)と共に、残る3人の予備登録メンバーには名を連ねている。今後、さらなる故障者が出た場合、この3投手が候補となる。
「ソフトバンクは代表選手がすでに多く、さらに藤井皓哉(こうや)がトミー・ジョン手術を受けて今季絶望という状況なので、杉山を追加で選びにくい事情もあるとは思いますが......。
今井は参加するとしてもアメリカラウンドからになりそうですが、『不測の事態があっても今井がいる』と考えることができるのは心強いです」
【大谷は何番が最適? "代打の切り札"は?】ここからは「史上最強の打力」をより生かすための打順を考察したい。誰もが気になるのは、大谷が何番を打つのか。お股ニキ氏は「あまり予断を持ちすぎず、調子や相性を踏まえて柔軟に戦いたい」と語る。
「前回大会も、当初は村上が4番でしたが、極度の不振に悩み、途中から吉田を4番に起用。この采配が当たり、吉田は大会打点王に輝く活躍を見せました。ある程度パターンと型を持ちつつ、選手の調子や対戦相手を踏まえて戦うのが理想です」
ひとつのひな型になりそうなのは、ドジャース同様に大谷を1番に起用する案だ。
「1番が大谷なら、2番以降には右打者の森下や鈴木を並べたい。大谷対策で左腕をぶつけてきた相手に、大谷の後を打つ右打者のムーキー・ベッツやウィル・スミスが勝負強い打撃を見せていたイメージです。そして、仕事人フレディ・フリーマンの位置には近藤。ドジャース打線以上の破壊力も期待できます」
「2番・大谷」や前回大会同様の「3番・大谷」の可能性も十分にある。
「前回大会の『1番・ラーズ・ヌートバー』の位置に森下が来てもいい。あとは2番・近藤、3番・大谷という前回大会同様の並び。大谷の後ろを打つのは、実績からいっても鈴木がふさわしいでしょう。
または、出塁率の高い近藤を1番に置き、2番・大谷が続く並びも強力。近藤、大谷と左が並ぶことを考えると、3番・鈴木、4番・岡本、5番・佐藤のクリーンナップ。6番・森下、7番・牧と続いて、8番と9番はショートと捕手がどちらに入ってもいい」
打順がどうであれ、お股ニキ氏がオススメしたいのは、勝負どころでの「代打・吉田」だという。
「前回大会の村上もそうですし、昨季後半の鈴木など、一度不調に陥るとなかなか抜け出せないタイプもいる一方、吉田は安定していることが強み。大事な場面で代打に出せば仕事をしてくれそうな期待があります。そして、吉田が出塁すれば代走で周東に切り替え、そのまま守備固めにもなる。

代打の切り札として期待がかかる吉田。「吉田は安定していることが強み」(お股ニキ氏)
吉田以外にも牧、牧原、近藤、森下と代打でも力を発揮できるタイプが控えています。躊躇(ちゅうちょ)なく代打と代走を起用できる点は、今回の侍ジャパンの強みです」
ここまでのキャンプや強化試合での状態から、キーマンとなりそうなのは誰か?
「森下と佐藤は相当いい状態です。森下はチャンスに強く、落ち球や低めの球を苦にしないスイング軌道なので、特に期待できる選手。佐藤は軽く振っても飛ぶ昨季のスタイルが健在で、対応力も高い。
WBCのボールはNPBのボールよりも飛ぶので、普段より気楽に打てるはず。4打席立たせたいので、打順もなるべく前に置きたい。足もあるので1番起用も面白いです」

昨季40本塁打を放ち、自身初のリーグMVPに輝いた佐藤。「相当いい状態」(お股ニキ氏)
チャンスに強い森下。「落ち球や低めの球を苦にしないスイング軌道」(お股ニキ氏)
捕手は坂本誠志郎(阪神)、若月健矢(オリックス)、中村悠平(ヤクルト)の3人。どんな起用法になりそうか?
「山本由伸(ドジャース)や髙橋宏斗(中日)らスプリットを駆使するタイプには若月。菅野智之(ロッキーズ)や伊藤大海(ひろみ/日本ハム)ら制球力のある投手には坂本。前回大会決勝でマスクをかぶった中村はその経験値を生かしてコーチ的な役割も担いつつ、試合終盤には出番もありそう。誰がマスクをかぶっても安心できます」
【14人でつなぐ投手陣。鍵は「ゾーン対応」】決勝まで見据えると最大で7試合。投手陣はどのようなローテや継投策が最適解か。懸念は、大谷が打者に専念するため、DH登録になったこと。これにより、投手は前回大会よりも少ない14人という陣容になった。
「人数は少なくなったものの、今回は『先発ながらリリーフもできる投手』が数多く招集されているのが特徴です。『先発』『リリーフ』と区分けすることなく、こまめな継投で戦うことになりそうです」
前回大会のアメリカとの決勝戦も、7人の投手をつぎ込み、5回以降は1人1イニングという極限継投だった。
「平良、石井のリリーバーが抜けたことも影響してか、井端弘和監督も今大会は早め早めの継投を徹底していく意向を語っていました。特にアメリカでの準々決勝以降は細かい継投策を講じることになりそうです」
そのアメリカラウンドに進むためにも、負けられない東京ラウンド4試合。4人の先発はどんな顔ぶれになるか?
「先発の軸は、山本、菅野、菊池雄星(エンゼルス)の3人。4人目は"格"を考えると昨季沢村賞受賞の伊藤ですが、抑え適性もあるので、あえて先発では使わず、曽谷龍平(オリックス)らが候補になると思います。調子が良ければ曽谷のスライダーとスプリットは十分通用します」

昨季、自身初の沢村賞を受賞した伊藤。東京五輪、前回大会でも抜群の安定感を誇った
そして、先発以上に重要な役回りとなるのが第2先発と"火消し役"だ。
「伊藤はまだ本調子ではないものの、経験も豊富なだけに本番までに仕上げてくるはず。髙橋と宮城大弥(オリックス)も前回大会でリリーフを経験していますし、今投げている球も抜群にいい。奪三振能力が高い点も魅力です。
北山亘基(日本ハム)も自チームでは先発も抑えも経験しているので、十分にこの役回りをこなせます」

前回大会、高卒3年目の最年少で代表入りした髙橋。決勝でも無失点リリーフで貢献した
WBC特有の球数制限、春先の調整段階であることを考えれば、先発投手は4回途中前後で降板する可能性もある。イニング途中での交代となった場合は、「先発→リリーフ(火消し)→第2先発→リリーフ(抑え)」といった継投も十分に考えられるという。
「抑えの第1候補は大勢(巨人)ですが、連投を得意としていないので、伊藤や北山ら、試合ごとに抑えが変わることもありえます。
私が一番注目しているのは種市篤暉(あつき/ロッテ)で、第2先発でもいけるし、今のストレートとスプリットの質なら火消し役でも相当な威力を発揮するはずです」

火消し役も期待の種市。「今のストレートとスプリットの質なら相当な威力」(お股ニキ氏)
髙橋同様に前回大会でリリーフ登板した宮城。今大会でもその経験が生きそうだ
自慢の投手陣が本来の力を発揮する上で、今大会の注目点のひとつに「ピッチコム」と「ピッチクロック」への対応があるが、お股ニキ氏はもうひとつ、今大会で苦慮しそうな課題として、ストライクゾーンへの対応も挙げる。
「外国人審判のストライクゾーンはとにかく横が狭い。強化試合で多くの投手が『ここもボール!?』と驚く表情を見せていて、本来は制球のいい伊藤や宮城でも手を焼いている様子でした。一方で、高低はNPBよりも広く、だからこそスプリットを使う投手が生きます。
この点は代表合宿でアドバイザーを務めたダルビッシュ有(パドレス)からも細かく指示があったようです。ダルビッシュも本来は横変化の球種を得意とする投手ですし、メジャーでこれまで散々苦労してきましたから」
相次ぐ故障離脱やさまざまな課題もあるにせよ、優勝候補の一角であることは間違いないわれらが侍ジャパン。日本の野球人気のさらなる盛り上がりのためにも、ドラマチックな戦いと最高の結果を期待したい。
文/オグマナオト 写真/時事通信社
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