【三角点=山頂じゃない?】役割と歴史を知ると、登山がもっと面白くなる
山頂で見かける三角点に関する記事。三角点の歴史や安全登山を支える役割などを交え、一等三角点が設置されている山を紹介。三角点探し登山の楽しみを提案します。
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イチオシスト
アイキャッチ画像撮影:筆者
三角点があるから山に登れる!?

三角点というのは聞いたことがあるものの、「誰が」「何のため」に設置したのか、実は知らないという人も多いのではないでしょうか?
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誰が
設置や管理は明治時代の工部省測量司から始まり、現在は国土地理院。 -
何のため
土地の位置や高さを正確に測るため。
三角点を基準にして“三角測量”を行うことで、土地の形や高さを正確に知ることができ、そこから精度の高い地図が作られます。そのおかげで、道路やダム、街づくりといったさまざまな工事が進められてきました。

実は、私たちが登山で使っている山岳地図の正確な位置や標高は、三角点という測量の基準があるからこそ成り立っています。つまり三角点は、山を正しく知り、安心して山歩きを楽しむための“縁の下の力持ち”なのです。
■詳細はコチラで
国土地理院|三角点これが三角点|どっちかわかる?
写真の左と右、どちらが三角点でしょうか。

正解は「左」です。

三角点は、四角柱の標石や、コンクリートに金属標を埋め込んだものが一般的。天面にはプラス(+)の刻印があり、「三角点」や「国土地理院」の文字が入っているのが目印です。摩耗して読みにくいこともありますが、刻印をよく見ると見分けがつきます。そばに白いポールが立っていることも。

一方で、よく似ているのが山林の境界標。赤いペンキが塗られていたり、「三角点」の文字がなかったりするのが特徴です。サイズはやや小ぶりで、三角点に比べると少し控えめな印象。じっくり観察すれば、違いが見えてきます。
なぜ山頂に多い?設置場所の理由を知ると面白い

三角点の地図記号は、文字どおり「△」に点が打たれた形をしています。そのため、「これは山頂のマークだ」と思っている人も多いかもしれません。
ですが、三角点は必ずしも山頂に設置されるものではありません。山頂に多いのは、単純に見晴らしが良いから。
なぜ見晴らしのいい場所?|三角点が最高点とは限らない

三角測量では、遠くにある別の三角点を目で確認する必要があるため、周囲を見渡せる場所であるのが絶対条件。そのため、最高点ではなく、見通しの良い尾根などに設置されていることもあるのです。
三角点は4種類ある|等級を知るとちょっと自慢できる
三角点は1等から4等までの4種類。役割や見分け方は以下の通りです。

1等の標石はなんと重さ約90kg。「えっ、そんなに重くなさそうだけど……そう思った人も多いはず。
実は……

この図のように、私たちが目にしているのは、ほんの一部にすぎません。実際に見えているのは「標石頭部」だけで、その大部分は地下に埋められています。90kgというのにも納得できますね。
三角点の多くが設置されたのは明治から大正時代で、現代のようにヘリコプターはありません。この重い標石を人の力だけで山頂まで背負い上げたのですから、さぞ、大変な作業だったことでしょう。
富士山は一等三角点じゃない!?

意外に思われるかもしれませんが、富士山(標高3,776m)の山頂に設置されている三角点は、一等三角点ではなく二等三角点です。
一方、日本で最も標高の高い場所にある一等三角点は、南アルプス・赤石岳(標高3,120m)の山頂付近に設置されています。

このことからも分かるように、三角点の等級は山の格や高さで決まるものではありません。測量が行われた目的や時代背景、そして全国的な配置計画によって定められています。富士山が二等三角点であるのも、「既存の測量網との関係」が大きく影響しているのです。
登山で三角点を楽しむポイント

登山において、三角点そのものを目的に山を歩く、いわゆる“三角点マニア”と呼ばれる人の「三角点登山」もあれば、山野草鑑賞や山ごはんと同じように、登山の楽しみのひとつとして三角点を探す人もいます。ちなみに筆者は後者で、山歩きの途中で三角点に出会えることを楽しんでいます。
楽しむポイント①|探索を楽しむ

三角点の設置場所が山頂の場合でも、実際の最高点から少しずれた場所に置かれていることがあります。また、雑草に覆われていたり、山頂ではなく尾根上などに設置されていたりすることもあり、必ずしも分かりやすい場所にあるとは限りません。だからこそ、「どこにあるんだろう?」と探しながら歩く楽しみがあるのも、魅力のひとつです。
まずはいつもの登山の途中で、見つけた三角点の標石にそっと触れてみる――そんな気軽な楽しみ方から始めてみるのがおすすめです。
楽しむポイント②|眺望を楽しむ

三角点の設置条件は見晴らしの良い場所であること。そのため、三角点を目指して歩けば、必然的に良い景色に出合えることが多いのも魅力です。もっとも、設置から長い年月が経ち、周囲の木々が成長して眺望が悪くなっている場合もありますが、それもまた時の流れを感じさせてくれます。
楽しむポイント③|歴史を楽しむ

三角点は明治から大正時代にかけて設置された、いわば山に残る歴史的な建造物でもあります。設置の記録は「基準点成果等閲覧サービス」で調べることができます。
国土地理院・基準点成果等閲覧サービス基準点成果等閲覧サービスを利用すると、三角点設置の記録である「点の記(てんのき)」を閲覧できます。
この点の記を題材にしたのが、新田次郎の小説『剱岳 点の記』。明治時代、劔岳への三角点設置に命懸けで挑んだ測量士たちを描いた物語で、映画化もされ、多くの人に知られています。
劔岳のようなドラマティックな例でなくても、どの三角点にもそれぞれの歴史があります。「点の記」はもちろん、郷土史などに記録が残っていることも少なくありません。山で出会った三角点の背景を知ることで、当時の測量の苦労や時代の様子が見えてきます。三角点巡りは、そんな物語に触れられる奥深い楽しみでもあります。
三角点は測量法で守られた国家基準点です。破損や落書きは禁止されています。撮影する人も多いため、ザックを置いて占有しないなどの配慮も心がけましょう。
一等三角点がある山に登ろう!地図を支える山の目印を探す旅
一等三角点が設置されている山の中から、比較的登りやすく、人気の山を11座紹介します。
①大雪山・旭岳(北海道)

- 設置場所:旭岳山頂
- 点名:瓊多窟(ぬたっく)
- 選点日付:明治33年9月10日
大雪山(たいせつざん)は北海道中央部に位置し、最高峰・旭岳(あさひだけ/標高2,291m)をはじめとする広大な山塊です。夏にはチングルマの大群落、秋には鮮やかな紅葉が広がり、北海道ならではの雄大な自然を満喫できます。

この旭岳山頂に設置された一等三角点の点名は「瓊多窟(ぬたっく)」。少し変わった名称ですが、これは大雪山をアイヌ語で「ヌタクカムシュッペ」と呼んでいたことに由来します。このように、実際の山名と三角点名が異なる例もあり、その背景を調べてみるのも楽しみのひとつです。
旭岳へは、大雪山旭岳ロープウェイを利用すれば、姿見駅から山頂までおよそ2時間30分で到達できます。
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②秋田駒ヶ岳・男女岳(秋田県・岩手県)

- 設置場所:男女岳山頂
- 点名:駒ヶ岳(こまがたけ)
- 選点日付:明治41年6月15日
秋田県と岩手県にまたがる秋田駒ヶ岳(あきたこまがたけ)は、最高峰の男女岳(おなめだけ/標高1,637m)を中心に、男岳や女岳など複数の峰を有する複合火山。数百種類もの高山植物が咲き誇る「花の山」として知られ、紅葉の季節には多くの登山者でにぎわいます。

8合目まで車道が通じており、季節によってはバスも運行されます。8合目登山口から男女岳山頂までは最短で約1時間30分。一等三角点は男女岳の山頂標識のすぐそばに設置されており、見つけやすい場所にあります。
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③栗駒山(宮城県・岩手県・秋田県)

- 設置場所:栗駒山山頂
- 点名:酢川岳(すかわだけ)
- 選点日付:明治21年9月
栗駒山(くりこまやま/標高1,626m)は活火山です。夏には可憐な高山植物が咲き誇りますが、何といっても「神の絨毯」と称されるほどの見事な紅葉が有名で、毎年多くの登山者を魅了しています。

一等三角点の点名「酢川岳(すかわだけ)」は、栗駒山を岩手県側から呼ぶ名称に由来。これは須川温泉(酢川=強酸性の湯)にちなむものといわれています。
いわかがみ平登山口からであれば山頂まで約1時間30分と歩きやすく、初心者から上級者まで幅広く楽しめる山です。
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④赤城山・地蔵岳(群馬県)

- 設置場所:地蔵岳山頂
- 点名:赤城山(あかぎやま)
- 選点日付:明治25年10月31日
群馬県北部の赤城山(あかぎやま)は、最高峰の黒檜山(くろびやま/標高1,827m)を中心に、駒ヶ岳、地蔵岳、鈴ヶ岳などの峰々からなる山域です。首都圏からのアクセスが良く、多彩な登山コースが整備された人気の山です。

赤城山の一等三角点は、最高峰の黒檜山ではなく地蔵岳(じぞうだけ/標高1,674m)に設置されています。地蔵岳は独立した地形で見晴らしが良く、登山口からのアクセスも容易なため、測量に適していたと考えられます。一等三角点は、必ずしも最も標高の高い場所に置かれるとは限りません。
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⑤乗鞍岳・剣ヶ峰(長野県・岐阜県)

- 設置場所:剣ヶ峰山頂
- 点名:乗鞍岳(のりくらだけ)
- 選点日付:明治27年10月11日
長野県と岐阜県にまたがる乗鞍岳(のりくらだけ)は、北アルプス最南端に位置する独立峰で、最高峰の剣ヶ峰(けんがみね/標高3,025m)を主峰とする峰々の総称です。畳平バスターミナルは標高2,702mにあり、剣ヶ峰まで約1時間40分。危険な箇所が少なく、初心者でも気軽に3,000m峰を体験できる山として人気があります。

通常、三角点は花崗岩で造られますが、剣ヶ峰には乗鞍の安山岩で造られた、珍しい三角点が設置されています。
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⑥蓼科山(長野県)

- 設置場所:蓼科山山頂
- 点名:蓼科山(たてしなやま)
- 選点日付:明治25年11月22日
八ヶ岳連峰の北端、「諏訪富士」とも呼ばれる美しい円錐形の蓼科山(たてしなやま/標高2,531m)。八ヶ岳連峰の北端に位置する独立峰で、山頂からは遮るものが無い大パノラマを堪能できます。

一等三角点は山頂に設置。見晴らしの良さが三角点に選ばれた一因でしょう。七合目登山口からなら山頂まで2時間程度です。
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⑦大台ヶ原山・日出ヶ岳(奈良県・三重県)

- 設置場所:日出ヶ岳山頂
- 点名:大台ヶ原山(おおだいがはらやま)
- 選点日付:明治28年5月10日
大台ヶ原山(おおだいがはら)は、奈良県と三重県にまたがる広大な台地状の山地です。最高峰は日出ヶ岳(ひのでがたけ/標高1,695m)で、大蛇嵓(だいじゃぐら)の断崖絶壁や瀑布、笹の草原など見所が多く、特に紅葉の季節は多くの人でにぎわいます。

一等三角点が設置されている日出ヶ岳山頂や、大蛇嵓を巡るハイキングコースの「東大台コース」は、所要時間約4時間です。
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⑧伊吹山(滋賀県・岐阜県)

- 設置場所:伊吹山山頂
- 点名:伊吹山(いぶきやま)
- 選点日付:明治17年
伊吹山(いぶきやま/標高1,377m)は、滋賀県と岐阜県にまたがる山です。春から夏にかけて多くの山野草が咲き、伊吹山の名を冠した固有種も数多く自生しています。

一等三角点は広い山頂の一角に設置。山頂標が設置されている中心部より少し離れているため、やや見つけにくいかもしれません。登山の際はぜひ探してみてください。
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⑨三瓶山・男三瓶山(島根県)

- 設置場所:男三瓶山山頂
- 点名:三瓶山(さんべさん)
- 選点日付:明治(年不明)
島根県のほぼ中央部に位置する三瓶山(さんべさん)は、火口跡の室ノ内を囲むように、主峰の男三瓶山(おさんべさん/標高1,126m)をはじめとする6つの峰が連なる火山です。

一等三角点は男三瓶山の山頂に設置されています。広々とした山頂からは日本海まで見渡せる絶景が広がります。三瓶観光リフトを利用すれば、リフト終点から男三瓶山山頂まで約1時間30分です。
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➉剣山(徳島県)

- 設置場所:剣山山頂
- 点名:剣山(つるぎさん)
- 選点日付:明治19年9月
剣山(つるぎさん/標高1,955m)は、徳島県北西部に位置する西日本で2番目に高い山です。別名「太郎笈(たろうぎゅう)」とも呼ばれ、対をなす次郎笈(じろうぎゅう)へ続く、雄大で眺望に優れた尾根歩きが人気です。

山頂の一等三角点は、しめ縄で囲まれた、まるで相撲の土俵のような珍しい造り。立ち入ることはできませんが、一見の価値があります。
剣山観光登山リフトを使用すれば、リフト終点から山頂まで約1時間です。
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⑪くじゅう連山・久住山(大分県)

- 設置場所:久住山山頂
- 点名:久住山(くじゅうさん)
- 選点日付:明治21年10月
くじゅう連山は、最高峰の中岳(なかだけ/標高1,791m)を中心とした峰々の総称です。初夏にはミヤマキリシマが咲き、秋には紅葉が山を彩るなど、四季折々の景観が魅力で、登山コースの多彩さから多くの登山者に親しまれています。

一等三角点は久住山(くじゅうさん/標高1,786m)の山頂に設置されています。最高峰ではありませんが、中岳との差はわずか5m。選点当時(明治21年)は正確な標高計測が難しく、久住山が主峰と考えられていたことに加え、見通しの良さや設置のしやすさも要因と考えられます。
牧ノ戸峠登山口から久住山山頂まで約2時間30分です。
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三角点を探してみよう!山の見え方が、きっと少し変わるはず

三角点は、ただの石ではありません。地図をつくり、山の位置を正確に伝え続けてきた“日本の測量の原点”です。
一等三角点がある山は、今回紹介した以外にも数多くあります。また、三角点は山頂だけでなく、里山や公園など身近な場所にも設置されています。
山に登ったら、足元にも目を向けてみてください。そこには、山と地図をつなぐ小さな証があります。
次の登山は、三角点を目的に。山を歩く楽しみが、きっともうひとつ増えるはずです。
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