ゾンビとミイラの合わせ技! 何でもアリの80年代ホラーが復活 『ミイラ転生 死霊の墓』
イチオシスト
飯塚克味のホラー道 第145回『ミイラ転生 死霊の墓』
日本では2001年に公開された『クイーンコング』(1976)という映画をご記憶の方はいらっしゃるだろうか?1976年版の『キングコング』のビジュアルをベースに女性用の水着か下着をコラージュしたポスターが印象的だった。映画は正に珍品という内容で、きわものとした宣伝もうまくいき、多くの映画ファンが駆け付けるという異常事態となった。そもそもこのパロディ作品は、76年版に合わせて公開するつもりだったのだが、76年版のプロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスが法的措置を取って、ほぼ全世界的に封印。長い間、陽の目を見ることはなかった。そんな『クイーンコング』を作ったエジプト人監督、フランク・アグラマが1981年に作り上げたホラーが本作である。
企画のスタートは、ハリウッド進出を果たしたアグラマに、ユニバーサルの元社長が「エジプト出身ならミイラ映画を作れば?」と進言したからだそうだが、何とも人間、単純なものである。当初はアートチックなポルノ映画を作り、『ネスティング』(1981)というホラー映画を撮ったばかりのアーマンド・ウェストンが監督をすることになっていたが、撮影開始後、しばらくすると降板してしまい、代わりにプロデューサーだったアグラマが監督をすることになったという。
内容はトレジャーハンターたちが、サフィラムンという古代エジプト王の墓を発掘していたところに、アメリカからモデルの撮影隊がやって来て、「ここ、いい雰囲気じゃん」と言って、強引にそこで撮影を始めたところ、照明で暖められたミイラが復活。その手下も甦り、人々を襲い始めるというもの。
話もかなりいい加減で、思わず「そんなアホな」と言いたくなるところが山盛り状態。だが甦ったミイラに触れたら肌が火傷を負ったようになる描写や、襲われた馬の内臓シーンなど、グロ描写に関してはかなり力が入っている。明け方、手下のミイラが砂の中から復活する場面はある種の美しさも感じられ、駄作と切り捨てることはできない。クライマックスでは、結婚式をミイラたちが襲撃し、手下がそこにいた人間たちをゾンビのように喰いまくる壮絶な場面も用意されている。
画質は、現存する最良のポジフィルムから2Kスキャンを行ったとあり、所々、黒のはずが紫や茶色になっていて違和感を覚えるが、VHS時代を思えば、目の覚めるようなクリアな映像になっていると言える。
特典はホラー・マニアックスらしく、超充実。まずは撮影監督のセルジオ・ルビーニへのロングインタビュー。アグラマと対立していたラウレンティスとの仕事も多かったことや、アグラマと家族ぐるみで付き合うようになったことも明かされる。本作ではイタリア人と現地のエジプト人との調整に苦労したことや、オアシスの水が猛烈に臭かったのに、女優たちが文句ひとつ言わずにそこで演技をしてくれたことに感謝するなど盛りだくさん。アグラマの半生を辿る「ミイラの包帯をほどいてみると アグラマと『ミイラ転生』」(14分)や、過去のミイラ映画の歴史を解説してくれる2本の映像も必見だ。80年代のホラー好きなら間違いなくチェックして、後悔はないだろう。
因みにホラー・マニアックスの第15期は3月にリリースされる『フェノミナ』の4K UHDとブルーレイで終了となる。今回も素晴らしい作品群のリリースに心から感謝したい。第16期も準備が進んでいると思うが、アナウンスを楽しみに待ちたいところだ。
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飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、WOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』の演出を担当した。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。
【商品情報】
ミイラ転生 死霊の墓 -2Kリマスター完全版-
発売中
価格:5,000円 (税抜)
発売元:株式会社ニューライン
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
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記事提供元:映画スクエア
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