「今年は僕もできたら…」 勝ち方、スイング、理想のプレースタイル…、プロ5年目の25歳が“追い求めるモノ”【蟬川泰果インタビュー・後編】
イチオシスト
2022年に史上初となるアマチュア2勝を含む、通算5勝を挙げている蟬川泰果。今季の国内男子ツアーを代表する存在の一人になることは間違いない。そんな蟬川が思う勝ちパターンや目指すプレースタイル、目標としている選手について語ってくれた。取材は、蟬川がジュニア時代から練習を重ねてきた兵庫県・樫山ゴルフランドで行った。(後編・取材/構成・高木彩音)
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■現在の国内男子ツアーで勝つには最終日に“爆発”的なスコアが必要?
――これまで5勝を挙げているけど自分の中で勝ちパターンなどはある?
そこはまだ探しているところ。最近の国内男子ツアーは、(最終日の優勝争いは)出だしからすごい伸ばし合いになってきていて、後半のバックナインで伸ばしても間に合わなくなってくる。
25年の「リシャールミル・チャリティトーナメント」の河本力選手(河本は初日から首位を守り、最終日を迎えたが「64」をマークした池村寛世にかわされて2位)を見ていて、すごく感じました。
僕が勝った「ツアー選手権」の時も、最終組の3人全員が前半3アンダーぐらい伸ばしていた。出だしで1アンダーかイーブンパーになってしまうと、後半に追いつけない状況になりやすいというのが、最近の(国内男子ツアーでの)統計ではあると思います。
PGAツアーとか見ていると、前半から後続にすごい差をつけるプレーをしていても、後半、後続が伸ばしてきて終わって見れば1、2打差しか空いてない試合が多い。僕的には、エンジンをかけた時にショットをつけたり、パッティングを決めたり。自分のスイッチとゴルフの調子が噛み合うようなものを作っていかないといけないと思っています。
――自身のゴルフ、そういった面でどのような課題が思い浮かぶ?
スイッチが入った時に荒れてしまったり、逆にスイッチを入れればよかったって思う試合だったり。もちろん、その人によって違いはあるとは思うんですけど、そのギャップが思っているよりも、今までの自分よりもあったかなとは思う。ケガしてすぐにシーズンを迎えた影響はあったかなとは思うんですけど、そのギャップの差を3日目までいい調子を持ってこられたなら、最低限のゴルフはできるのかなと。自分の予想をできないところがすごく多かったので、その辺のショットだったり、全部最低ラインにはしたいです。
――最低ラインとは?
例えば120ヤードだったら、絶対にワンピン以内(2.5メートル)には寄せたい。ミスしても、優勝争いの中だったら(ピンに)つけられるようなショット力だったり。その円をもっと(小さく)。もちろん、番手が長くなればなるほど、少し円は大きくなってくるんですけど。
かといって200ヤードでも向こう(PGAツアー)の選手はベタベタつけている。僕的には稲森(佑貴)さんとか、すごく(ショットを)ビタビタつけるイメージです。(堀川)未来夢さんだったら、パッティングがどこからでも入りそうな雰囲気があった。そういった、僕には足りないものを持っている選手というのは、すごくいっぱいいると思っています。
■大学進学を決めてになった理想のプレーヤー像は清水大成
――理想の戦い方、ゴルフスタイルは?
1番の理想としては、海外選手でローリー・マキロイ(北アイルランド)やスコッティ・シェフラー(米国)とかすごい選手がいるんですけど、僕は最初、清水大成さんに憧れて大学行きも決めました。
(高校)卒業後にプロになろうと思っていた高校2年生の時に、大学生と高校生の対抗戦みたいな試合であって、たまたま大成さんと桂川有人さんと平田憲聖選手と同じペアリングになりました。(清水が)ボギー、ダボって来ても、イーグル、バーディで取り返す。なんて言うんですかね…攻撃的なんですけど、どこまで(スコアを)伸ばしてしまうのか、予想がつかないような。「ちょっと怖いな…」みたいな。自分もそうなりたいなと思って、大学行きを決めたんです。
――プロ転向後も清水大成のプレーには圧倒される?
はい。どこかの試合で大成さんと回った時に、(清水が)前半2オーバーぐらいまで途中行っていたけど、上がってみたら3アンダーだった。そういったところを僕は目標にしたい。悪い流れが来ても、また戻ってくる。日本人選手で、ゴルフすごいなというか、(スコアが)出るなって思うのは大成さん。そこを今年は僕もできたらいいな、と考えています。
――ライバルと思う人はいる?
プロ転向した時は、(周囲からは同学年の)中島(啓太)選手とか平田選手って言われていたんですけど、中島選手に関しては、中学校の時からナショナルチームのメンバーで、日本アマ2位に入って、本当に同級生で言うと飛び抜けた存在だった。
いきなり1、2試合良くて対等になれるなんて全く思わなかった。海外経験とかいろんな部分でも、向こうがまさっているなと思っています。でも負けるつもりもないです。それでも、すごく努力しているので、どっちかっていうと“追いつきたい”気持ちです。
平田選手に関しては、僕も去年戦おうと思っていた舞台のコーン・フェリーツアーに出て、(PGAツアーに)昇格して、今年はPGAツアーに出ている。すごいなっていう一言が真っ先に浮かんでくる。
僕も何年後かには追いつきたいと思っているので、ライバルというよりは、この選手のここがすごいな、と思うところを見ていることのほうが多いですね。
――自分の道をいくことが、ゴルフでは大事?
そうですね。結局は個人スポーツなので。人から言われることも、ゴルフってすごいタイプが分かれると思います。アマチュアの方も多いと思うんですけど、ティーチングプロの方からレッスンしてもらった時に、「腰を止めて打て」って言われたり、逆に「腰をもっと動かして、上半身を止めて」っていう人もいたり。人によって言うことがバラバラだと思うんですよ。
その人の言い方のニュアンスであって、(全体を見たスイングの)動き自体は多分みんな一緒なんですけど、動きすぎる人が、腰をもう少し止めたほうがいいと言う場合もあったり。その辺、逆にプロたちから聞いた時でも、そんなふうに見えないけど、そういうイメージをしているから振ったほうがいいんじゃない、って言われたりすることもあるので。いっぱい情報を吸収するっていうのもすごく大事なんですけど、やっぱり最初は自分でとにかくやってみることが、今の僕にはすごい大事かなとは思うので、考えながらいろいろやっています。
■2026年は“キャリアグランドスラム”がかかる
日本タイトルは全部で4試合。蟬川はアマチュア時代の2022年に「日本オープン」、2023年に「ゴルフ日本シリーズJTカップ」、2025年に「BMW 日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」と3冠を挙げている。「日本プロ」を制せば、07年の片山晋呉以来、史上6人目の日本タイトル4冠、いわゆる“キャリアグランドスラム”達成となる。
――2026年シーズンに向けての準備は?
今年のオフシーズンは、自分の中で良くないスイングにならないようなドリルをやっています。トレーニングは、一昨年などはシーズン中に週2~3回しっかりやってから試合に臨んでいました。でも(ケガの影響もあり)去年1年間、全然やっていなかったので、筋肉量が落ちる傾向でした。今年は体を作りながら、今までやってきたトレーニング内容から変えて、ウエイトでも少し変わったトレーニングをやっています。
特にやっているのは、体幹が弱いので今年は体幹トレーニングを一番やっています。本当に、初歩的なことですけどね。昔は機械を使ってガチャガチャやっていましたけど、逆に体幹が弱かったかなと。あまり(体幹は)好きなトレーニングではなかったので、ガチャガチャやるほうが好きだったので、そっちを優先にやっていました。
――スイング面での課題は?
怪我から復帰して、万全ではない状態でシーズンを迎えていたんですけど、試合中に(スイングを)変えることが難しかった。とにかく振り切ることだけをずっとやっていました。そのぶんオーバースイングとか、あまりスイングを意識しないことから来る“良くない要素”がすごく多かった。
オーバースイングは、いい部分よりも悪い部分がまさってきていた。一番は(切り返す)タイミングを少し早くするとか。逆に(バックスイングで)股関節が開きすぎているのを、少しずつですけど、可動域を狭くすれば、バックスイングの捻転量を少し小さくできる。いろんな要素で少しずつカバーしていっています。そうしたほうが球自体も曲がらなくなってくるんじゃないかなと…。
結構向こうの選手って関節というか、そのインパクトの瞬間、左腰が向こう(目標方向)に向いてしまっている。僕の捻転量と比べると、バックスイングはすごく入っているのに、フォロースルーで全然捻転量が足りていないっていうのがけっこう見えたので、その辺は直したいと思ってやっています。
――課題を修正できたらさらにショットが安定して優勝回数も増えそうですね。いろいろなお話しを聞かせていただき、ありがとうございました。
■蟬川泰果
せみかわ・たいが/2001年1月11日生まれ、兵庫県出身。2022年に2022年9月の国内男子ツアー「パナソニックオープン」で史上6人目となるアマチュア優勝を達成。同年10月には「日本オープン」で第一回大会以来95年ぶりとなるアマチュア優勝を遂げ、史上初となるアマ2勝を飾った。2022年10月31日にプロ転向を宣言。23年の「関西オープン」でプロ初優勝。同年の最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」では史上最年少での大会制覇を果たした。24年11月にタレントの久保葵さんとの結婚を発表した。25年「BMWツアー選手権森ビル杯」でプレーオフの末優勝。24歳148日での日本タイトル3冠は、ジャンボ尾崎の27歳248日を更新して史上最年少となった。
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