元横綱・照ノ富士が堂々引退! 白鵬はじめ、各界の著名人が駆け付けた断髪式の様子を現地レポート
イチオシスト

大銀杏を切り落とした照ノ富士は、馴染みの美容師のもとで整髪をおこなった。「髪質は柔らかくて、素直」と美容師が語るように、整髪前の髪型は、まるで少年時代を彷彿させるかわいさだ。「整髪するのは、高校生以来(笑)」とは、照ノ富士の伊勢ヶ濱親方
昨年初場所途中で現役を引退した横綱・照ノ富士の「伊勢ヶ濱襲名 披露大相撲」が1月30日、両国国技館でおこなわれた。
照ノ富士と言えば、モンゴルから高校相撲の名門・鳥取城北高に「相撲留学」。2011年に大相撲・間垣部屋に入門したが、部屋の閉鎖に伴い伊勢ヶ濱部屋に転籍すると、みるみる才能が開花。
新入幕からわずか8場所で大関昇進を果たしたものの、ヒザの負傷や内臓疾患で休場が続き、番付は序二段まで降下。当時、本人は引退の意志が固く、師匠(伊勢ヶ濱親方=元横綱・旭富士)に幾度となく「引退させてください」と直訴したものの、師匠は首を縦に振らなかった。
序二段からの復帰は容易なものではなかった。それでも節制と努力で元の地位・大関を超えて、22年秋場所についに横綱に昇りつめた「苦労人」だ。
長年馴染んだ髷(まげ)と別れるこの日、国技館の観客席は1万人のファンで満員。さらに330人もの友人、知人らが鋏を入れた。
横綱の先輩でもあるタレント・花田虎上氏、ラグビーの稲垣啓太氏、水泳の北島康介氏、サッカーの小野伸二氏といったアスリートに加え、タレントの小島瑠璃子氏、東京オリンピック女子柔道金メダルの阿部詩選手らの女性陣も、土俵下から鋏を入れる。
会場が大きな歓声に包まれたのは、元横綱・白鵬の白鵬翔氏が登場した時だった。金色のモンゴルの伝統衣装「デール」に身を包んだ白鵬氏が鋏を入れた後、照ノ富士の肩にそっと手を置き耳元で囁く。
白鵬氏にとって照ノ富士は、白鵬氏の父親の関係でモンゴル時代から周知の間柄。日本行きのルートを作ったのも白鵬氏で、横綱・白鵬、現役最後の対戦相手でもある。
「お疲れさまです。がんばってください」
このシンプルな言葉にグッと来た照ノ富士だったが、「お祝いの場なんだから、絶対泣かない」と誓って臨んだ断髪式で、照ノ富士は最後まで涙を見せなかった。

昨年夏場所後に相撲協会を退職した白鵬(元宮城野親方)は、ド派手なモンゴルの伝統衣装で登場。伯乃富士、義ノ富士ら、元宮城野部屋の力士は、伊勢ヶ濱部屋の力士として、照ノ富士が育成していくことになる
今回の断髪式では、伊勢ヶ濱部屋の幕下以下の力士によるトーナメント戦(優勝は、初場所序ノ口優勝の旭富士=2代目)がおこなわれ、他にも初っ切り、相撲甚句、櫓太鼓の打ち分けなど、多彩なプログラムが並んだ。
元大関・魁皇の浅香山親方など、伊勢ヶ濱一門の親方衆の後は、横綱・豊昇龍、大関・安青錦らの現役力士が続いた。安青錦にとっては、力士に憧れてウクライナ代表として世界ジュニア相撲大会に出場した高校時代、日本で一番最初に会った力士が照ノ富士だったという特別な「縁」もある。実父、ダラム・ガントゥルガ氏の鋏入れが終わると、元師匠・宮城野親方(前・伊勢ヶ濱親方)が止め鋏を――。

連覇を果たして、来場所は「綱取り」がかかる大関・安青錦が鋏を入れる。安青錦が最初に来日した時に、初めて会った力士が当時の横綱・照ノ富士だった。また師匠の安治川親方(元関脇・安美錦)は、照ノ富士の伊勢ヶ濱部屋の兄弟子にあたる
照ノ富士が所属していた間垣部屋が閉鎖になると決まった時に、照ノ富士を受け入れたのが師匠(元伊勢ヶ濱親方=元横綱・旭富士=現宮城野親方)だった。負傷などの影響で、大関から序二段まで陥落した時も励まし続けた師匠のおかげで横綱に。止め鋏を入れた
「てるのふじ~」
館内全体を巻き込む大声援が飛ぶ中、髷に別れを告げた照ノ富士は、別室で整髪に臨んだ。
「髪をカットしてもらうなんて、高校生以来じゃないの?(笑)」と周囲を笑わせながら、美容師には「長め」の髪型をリクエスト。ドルジハンド夫人、長男・照務甚(てむじん)君も見守る中、カットが進んでいき、スッキリと若返った照ノ富士。
メディアから家族での記念写真をせがまれたのだが、髷を落として、タキシードを着用した見慣れない父を前に照務甚君は号泣。3歳ながら29キロという体重を誇る照務甚君の将来については、「本人が相撲をやりたいというなら、まあ、いいんじゃない?」と、寛容な照ノ富士。

バッチリと整髪後、モーニングに着替えて、ドルジハンド夫人にネクタイを直してもらう。長男のテムジンくんは、3歳で29キロというビッグサイズ。「本人がなりたいのなら、力士になることは反対しない」と父親の顔を見せた照ノ富士
昨年初場所中におこなわれた引退記者会見では、「(大関から陥落したり、横綱に昇進したり)相撲人生を2回楽しみました」と、現役時代を振り返った照ノ富士。
「伊勢ヶ濱部屋の師匠」という3回目の相撲人生では、これまでの経験を糧に、力強い力士を育ててもらいたいものだ。
取材・文/武田葉月 写真/松田嘉徳
記事提供元:週プレNEWS
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