【沖縄そば&ゴーヤーチャンプルー】荻窪の名酒場を間借り営業するランチ店で、驚くほど洗練された沖縄料理と出会う:パリッコ『今週のハマりめし』第223回
イチオシスト
ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。
それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。
そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。
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この年末から年始にかけて、荻窪駅北口周辺再開発計画の影響により、駅前にあった味わい深いアーケード街「荻窪北口駅前通商店街」のほとんどの店が移転や閉店を決めてしまったようだ。

「荻窪北口駅前通商店街」
大衆酒場好きの酒飲みとしては、こういうエリアこそ国が率先して保護して欲しいと思うものの、もはや時代の流れにあらがうことができないこともわかっている。というか、度重なる経験によって慣れっ子になってしまった。

町中華が3軒並ぶ珍しい風景
そもそも建物の老朽化などの問題があり、災害や火災が起きたときの危険性を考えると、万が一の不安要素がなくなるほうが多くの地元民の方々にとって良いことなのだろう。商店街の裏側に回って建物を眺めてみると、美しいと思うとともに、さもありなんという気にもなる。

商店街の裏側
とにかく、寂しいけれどこの風景もそろそろ見納めだ。それでも周囲にはまだ味わい深い横丁が残っていて、今後のことはわからないけれど、元気に営業を続けている。
先日、このエリアで昼食を食べられる店を探し徘徊していて見つけたのが「寄港地」という居酒屋だった。不勉強ながら訪れたことのない店だが、店名や佇まいからすでに名店の雰囲気が漂っている。そこに「沖縄そば」ののぼりが立っていて、ランチ営業をしているようだ。

「寄港地」
沖縄そばランチ
真冬の沖縄そば、いいかも。入ってみよう。
店内には海を感じさせるオブジェやグッズが所狭しと飾られ、やはり名店の空気感。著名な漫画家の直筆サイン色紙がたくさん飾られていることから、出版関係の常連が多そうな、文化的な風も多分に感じる。なかでも大ファンである窪之内英策先生の美麗なイラストにはしばらく見とれてしまった。
さてメニューを選ぼう。メインは沖縄そばで、「三枚肉そば」(税込 900円)「軟骨ソーキそば」(900円)「カレー沖縄そば」(1,100円)の他に日替わりもあるよう。また、沖縄風の炊き込みご飯である「じゅーしぃ」が200円、「ミニカレーライス」が300円、「まかないお肉ご飯」が350円と、全体的にリーズナブルだ。
が、"限定"という言葉に弱い僕は、1日5食限定だという「日替わりチャンプルー定食」(1,300円)に決める。内容は日替わりチャンプルーとごはん、ハーフサイズの三枚肉そば、小鉢が2品。この日のチャンプルーはゴーヤーだそう。せっかくだから「オリオン中瓶」(800円)も頼んでしまおう。
一気に沖縄モード
お久しぶりのオリオンビールで喉を潤していると、少しずつ料理が届きはじめる。まずは小鉢がふたつ。沖縄名産のもずく酢と、水菜とミニトマトのサラダだ。好物のもずくをずずっとすすると、爽やかな酸味とともに強いだしの香りがし、かなりうまい。ごまドレッシングをまとったサラダの野菜もシャキシャキで、メインへの期待が高まる。

小鉢×2
ゴーヤーチャンプルー
続いてやってきたのが、熱々のゴーヤーチャンプルーとごはん。ゴーヤーは薄切りで、豆腐はほとんど型崩れしておらずサイコロ状で、肉は沖縄でおなじみの缶詰ポーク。さっそくひと口食べてみると、ぶわっと心地よいだしの香りと、ちょうどいい塩気をまとった、各食材のハーモニーがたまらない。ゴーヤーが柔らかくて苦味もほどよく、僕が今まで食べてきたゴーヤーチャンプルーのなかでも確実にトップクラスの味だ。繊細でありつつも上品すぎないというか。すかさず追いかける白米がさらなる幸せを運んでくれる。
しばらくその味にうっとりしつつ食べすすめ、調味料コーナーに島唐辛子の泡盛漬け、コーレーグースらしき瓶があったので「使ってもいいですか?」と聞いてみる、女性の店員さんが持ってきてくれたのが「プレミアムコーレーグス」という瓶だった。名護「三酒造所」の泡盛をブレントして作られたものらしく、そのこだわりが嬉しい。自作したこともあるくらい好きな調味料だが、なんでこうも沖縄料理に合うんだろうか。

「プレミアムコーレーグス NAGO maser」
そしていよいよ三枚肉そばが到着し、全セットが届く。沖縄料理フルコースの様相だ。ただ、それぞれの量のバランスがちょうどいいので、小食めな自分にもきっと食べ切れる予感がする。

1,300円でこれはかなりお得
三枚肉そば
いざ、沖縄そばへ。かつおだしがしっかりと利いたクリアなスープ。コシというよりはハリがあると表現したい、平打ちで太めの麺。ずずっとすすってもぐもぐと噛み締めると、つゆの奥深い味わいと小麦の風味が入り混じり、あぁこれ、と目を閉じる。沖縄そばって、ラーメンでもうどんでもそばでもなく、どこまでも沖縄そばなんだよな。大好き。

この麺がいい
大きな豚の三枚肉はとろりとやわらかく、ほんのりと甘く煮込まれていて塩味のスープとよく合う。
僕は沖縄が大好きで何度か本場にも飲み旅行にいき、現地で沖縄そばもたくさん食べたが、この店の味はかなり本格派であり、しかもかなり洗練されてクオリティの高いものだと感動した。まさかふと訪れた荻窪で、こんな味に出会えるとは。
お会計時に店員さんに聞いてみたところ、ここは、寄港地という酒場を間借りして、昨年の7月から始めた店なのだとか。営業は、火?金曜の昼間と、寄港地が定休日の日曜終日だそう。日曜にゆっくり飲みに来てみるのも良さそうだ。
ちなみに「なんというお店なんですか?」と店名を聞いてみたら、「え?と、間借り沖縄そば屋です」と、あまりにそのまますぎな答えが返ってきて思わず笑ってしまった。そしてあとから 検索をしてみたところ、確かに公式インスタグラムでは「沖縄そば屋」、食べログでは「間借りそば」と、決まった店名はないよう。こんなにも名店なんだから、なにかわかりやすい屋号をつけてもいいような気がするけど......。
とにかく荻窪でランチをお探しの方には、全力でおすすめしたい。
取材・文・撮影/パリッコ
記事提供元:週プレNEWS
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