なぜシェフラーは強い? マスターズの傾斜で足裏一点で支えて打つから正確だった【四の五の言わず振り氣れ】
イチオシスト
2024年でツアーから撤退した上田桃子や今年プロテストに合格した藤本愛菜、千田萌花が在籍している「チーム辻村」を率いるプロコーチの辻村明志氏。傾斜が激しいオーガスタで正確なショットを打つ名手たちを見て、改めて、ドッシリ構えるためには足裏でしっかりと地面をつかまなければならないと感じたという。
2024年に人生で初めてマスターズを生で観戦する機会に恵まれました。思えばゴルフを始めた小学5年生から、いつかは……と思っていたオーガスタに立つと、まるで夢を見ているような錯覚に陥ったものです。いい経験をさせてもらいました。その中で気づいたことを述べたいと思います。
その初日、フェードが必要とされるスタートホールでは、真後ろから選手のスイングが見られる『特等席』に陣取って、全選手のティショットを観察させてもらいました。ボクが記憶する限り、ドローボールを打っていったのは、ブライソン・デシャンボーを含めた数名だけだと思います。ほとんどの選手がフェードボール。もちろんストレートを打つ選手も多いのですが、そのほとんどがわずかにフェード回転していたように思います。
改めて現代のゴルフでは、フェードボールの重要性を思い知らされました。そこにはいろんな理由があると思います。ひとつはタイガー・ウッズの出現以来、選手のアスリート化が進んだことがあるでしょう。フェードでも飛ばせるようになりました。飛ぶだけでなく、飛んで止まるボールを打つことが世界のゴルフでは、特にマスターズでは重要なのです。
もうひとつはギアの進化で、ボールとクラブが曲がりにくくなっていることも大きく影響しています。余談ですが、プロの指導をしていて思うのは、ドライバーのミスの多くが右へのプッシュ。右に飛び出して、そのまま抜けていってしまうボールです。飛ぶには飛ぶのですが、ドローをかけてもなかなか戻ってこないケースも。それを防ぐためにも、計算しやすいフェードボールが主流になっているのかもしれません。
アマチュアの8割から9割はスライサーです。その原因の多くはアウトサイド・イン軌道。かつてはそれを矯正するため、極端なインサイド・アウトでドローボールを打たせていました。しかし今後は、腕とクラブが外から下りる動きは直すにせよ、フォローでインサイドに振り抜くことも同時に教える必要があります。もちろんそのためには、ドッシリとした下半身、ブレない軸が重要になります。改めて『ゴルフは傾斜地で打つスポーツ』だということを、オーガスタは教えてくれました。足裏は、唯一、地球と接している体の部位です。ドッシリと構えるためには、足裏でしっかりと地面をつかまなければなりません。
これまでボクはスイングでは、体を足裏の四点で支えている、と教えてきました。四点とは両足それぞれのツマ先とカカトです。ところが、そもそもコース全体がアンジュレーションのきついオーガスタでは、ときに三点、あるいは二点、状況によっては一点で立つ、それもドッシリと立つことが求められるのです。たとえばアーメンコーナー最後の13番パー5。2オンを狙うセカンド地点は、大きなツマ先上がり&左足下がりの複合傾斜。通常、このライではフックボールが出やすく、しかもロングアイアンで打つしかない。ピンが右に切られた場合、優勝したスコッティ・シェフラーなどは高いフェードで、右サイドを狙ってくるのです。思うに右足を宙に上げるくらいの意識で、左足カカト一点で立っているのではないでしょうか。
『練習場シングル』という言葉があります。平坦な場所では足裏四点で、安定した立ち方ができます。しかしコースは、もちろんオーガスタほどではないにせよ、すべてのショットは傾斜地から打たなければなりません。もちろんスイングの基礎を作るには、練習場では四点でしっかり立つことは大切です。しかし、ある程度スイングができたら、板やタオルなどを足裏で踏んで、ツマ先上がりや左足下がりなどの傾斜から打つ練習も必要でしょう。足裏二点や三点で立つコツも覚えられます。そうすると必然的にハーフショットかせいぜいスリークォーターショットと、スイングはコンパクトになるはずです。
アマチュア時代のタイガーは、マスターズの複雑な傾斜の洗礼を受けました。ややオーバースイングでシャフトクロスのスイングが、大きく変化していったのはマスターズを経験した後からでした。その後、1997年に史上最年少でのグリーンジャケット、5回の優勝のドラマは、こうして生まれたのです。
■辻村明志
つじむら・はるゆき/1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも教えている。今季は千田萌花と藤本愛菜をプロテスト合格に導いた。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフの指導に取り入れている。元(はじめ)ビルコート所属。
※『アルバトロス・ビュー』893号より抜粋し、加筆・修正しています
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