【インド新幹線】全508kmの軌道設計を日本企業が完遂へ!難工事が必要な工区の契約締結でプロジェクトは新局面、2027年試験走行へ
イチオシスト

インドの未来をのせて走るムンバイ・アーメダバード間高速鉄道(MAHSR、インド高速鉄道)。この巨大プロジェクトにおいては、日本の新幹線システムや技術力が、事業の推進を支えています。。2025年12月5日、JR東日本グループの日本線路技術が、難所とされるT-1工区の軌道設計契約を締結。これにより、全508kmにおよぶ全区間の軌道設計を日本企業が担当することが決定しました。拠点となるスーラト駅の土木工事もほぼ完了し、2027年の試験走行に向けて加速する現場最前線のレポートを交えて、現状をお伝えします。
日本の技術が全線制覇!T-1工区の軌道設計契約を締結
インド高速鉄道(ムンバイ・アーメダバード高速鉄道・MAHSR)は、インド西部の2大都市、ムンバイとアーメダバード間の約508kmを結ぶインド初の高速鉄道プロジェクトで、日本の新幹線システムが採用されています。日本・インド両国政府間の協力のもと、インド高速鉄道公社が中心となりプロジェクトが進められています。2025年8月には、 JR東日本が東北新幹線用に開発を進めている新型車両「E10系」を導入する方向での合意が報道され、いよいよ形になりつつあります。
JR東日本グループの日本線路技術(NSG/ JRTC)は2025年12月5日、ムンバイ〜バピ間を担当するインド大手企業L&T社と、「T-1工区」の軌道設計に関するサブコン契約の締結を発表しました 。

今回の契約締結により、ムンバイ〜アーメダバード間の全区間(約508km)にわたる軌道設計を、日本企業が一貫して担当することが決定しました 。新たに手がけるT-1工区は、先行する区間と比べてトンネルが多いことが特徴で、高度な新幹線技術を活かした精緻な設計が期待されています。
日本の新幹線での技術をベースに、軌道設計や車両まで
この巨大プロジェクトの支え手の一つとなっているのが、日本の鉄道技術です。2015年12 月の日印首脳会談の共同声明により、日本の高速鉄道技術(新幹線システム) でこのプロジェクトを整備することが確認され、それに沿う形での整備が進んでいます。
軌道工事に関しては、日本線路技術が重要な役割を担っています。同社は2025年12月に最後の工事区間を受注したことで、全区間の軌道工事において、施工主であるインド鉄道省傘下の国営企業「IRCON International Limited」と軌道設計に関するサブコントラクター契約を締結しました。日本の新幹線システム導入に向けて、設計段階から技術力を注入しています。

◆T-2工区:バピ〜バドーダラ、約237km
2022年3月2日に軌道設計契約、スーラト駅を含む先行区間。土木工事はほぼ完了
◆T-3工区:バドーダラ〜アーメダバード、約114km
2022年8月30日に軌道設計契約、アーメダバード近郊。T-2とともに2026年度設計完了予定
◆T-1工区:ムンバイ〜バピ、約157km
2025年12月5日軌道設計契約、トンネルが多い難所。全線設計担当の決定打に
現地では日本の技術者による教育訓練も実施され、スラブ軌道(※)敷設のノウハウがインド人技術者に伝授されています。まさに、日印協力の象徴ともいえる現場となっているようです。
※スラブ軌道とは、日本の新幹線などで採用されている、高い耐久性と走行安定性を備えた軌道構造です。従来の砂利(バラスト)を敷き詰める方式とは異なり、コンクリート製の「軌道スラブ」を路盤の上に敷き並べるのが特徴です。今回のインド高速鉄道プロジェクトでも、このスラブ軌道システムが全線にわたって導入されます。
日本の総合商社である双日は、インド最大のゼネコン兼総合エンジニアリング会社ラーセン・アンド・トゥーブロ社と共同で、サバルマティ総合車両基地建設工事を2022年に受注。それに続き、ムンバイ~アーメダバード間の電力工事の受注も2024年1月に発表され、14ヶ所の変電所建設、電車線、駅舎や中央指令室への配電システムなどの工事が開始されています。
JR東日本グループは、インド高速鉄道プロジェクトにおいて日本政府からの協力要請により、現地事業主体として設立されたインド高速鉄道公社の職員の人材育成に協力しています。2025年8月下旬からはインド高速鉄道公社の研修員が実際の新幹線にて運転操縦などの訓練を行う「技能講習」を実施しています。
続々と進む高速鉄道の建設、スーラト駅はほぼ完成済み
既に工事が始まっている区間を、写真で見ててみましょう。

ムンバイ起点約266kmに位置するスーラト駅では、2025年7月現在で高架橋などの土木工事進捗率がほぼ100%に到達。すでに駅舎の内装工事や軌道工事が始まっており、現場の熱気が伝わってくるような状況ということです。

また、その駅近くに位置するスーラト車両基地も土木工事が完了し、現在は電気設備の準備中。スーラト付近の約50km区間においては、「2027年に試験車両を走行させる」という計画もあるそうです。
インド高速鉄道プロジェクト進捗状況(2025年10月10日現在)
インド初となる全長508kmの高速鉄道、ムンバイ〜アーメダバード間。
■土木・構造物工事
高架橋・橋脚:全508kmのうち、325kmの高架橋と400kmの橋脚工事が完了しています。
橋梁:河川橋17カ所、PSC(プレストレスト・コンクリート)橋5カ所、および鋼橋10カ所の建設が完了しました。
遮音壁:216kmの区間にわたり、40万枚以上の遮音壁が設置されました。
■軌道・電気設備工事
RC軌道路盤:217トラックキロ(tkm)のRC(鉄筋コンクリート)軌道路盤建設が完了。
架線設備:本線高架橋の約57ルートキロにわたり、2,300本以上の架線柱(OHEマスト)が設置されました。
■トンネル工事
山岳トンネル:パルガル地区にある7カ所の山岳トンネルで掘削工事が進行中です。
地下トンネル:マハーラーシュトラ州のBKC(バンドラ・クルラ・コンプレックス)〜シルパタ間のトンネル(計21km)のうち、5km分のNATMトンネルの掘削が完了しました。
■車両基地・駅舎
車両基地:スーラトおよびアーメダバードの車両基地建設が進行中です。
駅舎(グジャラート州):州内すべての駅において、上部構造(スーパーストラクチャー)工事が最終段階に入っています。
駅舎(マハーラーシュトラ州):3つの高架駅すべてで工事が開始されたほか、ムンバイ地下駅ではベーススラブ(基礎床版)のコンクリート打ち込みが進行中です。

現地からの状況を見ると、プロジェクトは順調に推移しているようです。
車両はJR東日本の新型新幹線 E10形 を採用
2025年8月のインドのモディ首相と石破茂首相(当時)の会談では、JR東日本が開発中の次世代新幹線車両「E10系」の導入を日本側が提案したと報道されました。「E10系」は、E2系およびE5系新幹線車両の後継となる次期東北新幹線車両で、 最高営業運転速度320km/h、究極の安全の追求と、より快適な移動空間の提供を目指して開発が進んでいます。2027年秋以降の車両落成、その後の各種の走行試験を実施した上で、東北新幹線で2030年度内の営業運転開始を目指すとされています。

一方、インド高速鉄道(MAHSR)は2027年の一部開業を目指すとされており、開業時には新型車両「E10系」は間に合いません。そのため、開業当初は、速度を引き上げる改造を施したインドの準高速列車で運用されるとみられています。その後、日本での運用開始と同時期の2030年頃からは、E10系を導入したい意向です。
また、インド高速鉄道(MAHSR)の検査用車両として、JR東日本のE5系・E3系車両が2026年初頭までに無償で提供され、インドの高温・粉じん環境下での各種データの収集などが行われるようです。
インド高速鉄道(ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道)概要
・区間:ムンバイ(マハーラーシュトラ州)~サバルマティ(グジャラート州・アーメダバード近郊)
・延長:約508km
・最高速度:320km/h
・所要時間:最速2時間7分
・駅数:12駅
・編成:当初10両編成(将来16両編成)
2015年の日印首脳会談から始まったこの壮大な夢は、トンネルが連続する難関のT-1工区の設計契約締結、そして間もなく完成するスーラトの巨大な駅舎など、徐々に完成に近づいているようです。2027年からの試験走行・一部開業という目標に向け、日印の技術者たちが行っている挑戦の行く末を、これからも追い続けていきましょう。
(画像:インド高速鉄道公社、日本線路技術、双日)
鉄道チャンネル編集部
(旅と週末おでかけ!鉄道チャンネル)
記事提供元:旅とおでかけ 鉄道チャンネル
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