【ガイド監修】雪山に行くなら覚えておきたい!もしもの時に備えた雪のドーム「イグルー」の作り方
その日のうちには目的地の山小屋や下山口に辿り着けなさそう、というときために是非とも覚えておいていただきたいのが、なんとかして一夜を明かすビバーク技術。雪の多い山の場合には雪洞を作れますが、雪山でも積雪が少ない場合にはどうしましょうか。そんなときに役に立つのが雪のブロックを積み上げて作るイグルーです。本格的イグルーは作るのにコツが要りますが、まずは簡易版から挑戦してみましょう。雪山をより安心して登れるように、この機会にぜひ身につけてみませんか。
The post 【ガイド監修】雪山に行くなら覚えておきたい!もしもの時に備えた雪のドーム「イグルー」の作り方 first appeared on 登山メディアYAMA HACK(ヤマハック)|山の“知りたい“がここにある.
イチオシスト
雪山で一夜越さなければいけない・・・そんなときのために

撮影:YAMA HACK編集部
その日のうちには目的地の山小屋や下山口に辿り着けなさそう・・・。そんなときのために是非とも覚えておいていただきたいのが「ビバーク」、つまりはなんとかして一夜を明かす心得です。
ツェルトという簡易テントを張って一夜をしのぐ方法が万能ではありますが、風を直接受けますし、外気温よりもそこまで暖かくなるものではありません。
雪山でのビバークの方法としては「雪洞」がよく取り上げられますが、雪のドーム「イグルー」も有効です。雪洞にはない長所もありますので、ぜひこの機会に覚えてみてくださいね。
イグルーってどんなもの?
簡単に言うと、イグルーとは雪の塊を積み上げて作ったシェルターです。

撮影:筆者
雪の断熱効果でツェルトよりも暖かいのは雪洞と同じ。これに加えて、雪洞は雪が1.5mは積もる場所でないと作れませんが、イグルーは積雪は少なくても締まってさえいれば作れます。
詳しく両者を比べてみましょう。

イラスト作成:はらぺこworks(左/イグルー、右/横穴式雪洞)
左がイグルー、右が雪洞。雪の斜面に掘る雪洞に対して、イグルーは雪のブロックを積み上げてドームを作ります。
本格派イグルーはちょっと難しいけど、「なんちゃって」はかんたん!

撮影:筆者(以降すべて同様)
イグルーの写真を見て、どうやってこんなドーム型に雪を積み上げるの?と思った方も多いと思います。筆者も直接教わるまではよく分かりませんでした。特に、天井の作り方にはけっこうコツがいります。
しかし逆に考えれば、天井を雪のブロックで塞ぐのにこだわらなければ一気に難易度が下がり、誰でも作ることができます。これを知っているだけで雪山のビバークはかなり安心です。
そんな「なんちゃってイグルー」をまずは作ってみましょう。
イグルー作りに必要な装備

作り方の手順を説明する前に、まずは作る時の服装・道具を紹介します。
外側には雨具または冬用のアウターウェアを着て、できるだけ濡れないようにしましょう。特に手はかなり濡れるので、中綿つき、またはインナーを入れたゴム手袋がおすすめ。
足回りはもちろん長靴や冬用の登山靴を履き、雪が入ってこないように裾を絞っておくのも大事です。

なんちゃってイグルーの作り方
まずはブロックの切り出し方を覚えよう!
イグルーは雪のブロックを積み上げて作ります。スコップでは積み上げやすいようなきれいな形の雪は切り出せませんので鋸を使います。まずは鋸を使って雪のブロックを切り出す方法を覚えましょう。
下の図のような直方体を切り出すつもりでやってみます。底面にも刃を入れますので、刃を入れられる場所(写真で筆者が立っている部分)はあらかじめ掘っておきます。

まずは筆者右側に刃を入れます。

次は向こう側。

今度は左側。

最後に底面。

どの面にも刃が通っていれば、スコップでこじると動きますので、手を入れて運び出します。動かない場合には刃が貫通していない部分があるのでやり直します。また、ブロックは動くのに出せない場合にはどこかが引っかかっていますので、端の方を鋸で少し削ってみてください。

こんなに大きな塊が取れました!

さぁ!作るぞ~!
基本を覚えたところで、いよいよ作ってみましょう。
まずはどんな形にするかおおよその印をつけます。

表面の雪は固まっていませんので、スコップでどけて捨ててしまいます。踏めば固まるような雪質であれば、踏んで固めてしまっても構いません。

シェルター内部になる部分の雪をブロックとして掘り出していきます。土台になる部分のブロックはできるだけ大きく切り出すのがポイントです。

一段掘り出すだけで天井の高さは50cm以上にはなります。非常時のシェルターとしては、この上にツェルトを張れば十分でしょう。
広さもここまで広くなくて十分です。ゆっくり作ってここまで15分。
今回は居心地も重視して、もう一段掘り下げます。

2段目を積む際には、1段目の並びから横にずらして積んでいくと崩れにくくなります。

2段目を積み、出入り口も作りました。

この上にツェルトやタープを張って屋根にするわけですが、ただ張っただけだと中がたるんでしまいますので、ストックなどを渡しておきます。枯れ枝などがあれば使うのもよいでしょう。

今回はタープを張りました。完成です。

中の様子です。隙間が多少ありますが、外から雪を詰めて塞げば問題ありません。

広く作ったのでゆったりです。

ブロックで入り口を塞ぐと風を防げます。雪洞と違って閉じ込められる心配はありません。

「なんちゃって」の限界
もうこれでいいじゃん!と思った方もいるかもしれません。
たしかに、樹林帯や標高の低いところならばこれで万能なのですが、強い風に吹かれる稜線や平原のような場所でビバークすることを考えると、天井が布では飛ばされる可能性があり、リスクが高すぎます。
そんな場所でもビバークするには、本格的なイグルーが必要です。
本格的なイグルーに挑戦!
雪に対する慣れは比較的必要ですが、屋根付きの本格的なイグルーの作り方もご紹介しておきます。
こちらは屋根を積みやすくするために円形または楕円形にブロックを積んでいきます。最初は「なんちゃって」と同じように大きなブロックを積んでいきますが、2段目以降は少しずつ内側に寄せながら、ブロックとブロックの間に橋渡しするように積んでいきます。

2段積んだところですが、内転びになっているのが分かるでしょうか。このようにずらして積む土台を作るために大きなブロックを切り出す必要があるのです

上に行くにしたがって、だんだん薄く軽いブロックを乗せていきます。
長いブロックを切り出し、2つのブロックに橋を渡すように積んでいくのがコツです。隙間は後で小さなブロックを積めて塞ぎます。

内側からの写真を見るとよく分かりますね。
屋根も雪のブロックで作るには、ブロックを切り出しながら、どれくらいの太さでどれくらいの強度が出るかという感覚を掴んでいくのがポイントなのですが、それには雪をたくさん扱って慣れている必要があります。
実はこのイグルーは筆者の4作目なのですが、これだけ早くに覚えられたのは、雪国暮らしの経験もあり、ガイドとしても訓練を積んでいたためでしょう。

無事に屋根を積み終わりました。

完成です。
中から見ると隙間はたくさん空いていますが、間に小さいブロックをはめ込んでいけば問題ありません。雪面にクラストができていれば、クラストを切り出して乗せれば簡単です。
荒れている時以外は寝たり座ったりする高さに風が通らないくらい塞げば十分です。隙間から星影や月影が差すのも乙なものです。
積雪がそこそこある場合には小さめに作って雪の中を横に掘り進めて住空間を広げることで、ドームを作る手間を減らすことができます。横を掘り進める時にもブロックを切り出していけば一石二鳥です。
ワンポイントアドバイス

吹雪の一晩を越したイグルー。
イグルーは隙間を埋めても埋め切れないのが弱点。吹雪のときにはちょっとした隙間から雪が降ってきて、少しずつですがイグルーの中に積もっていきます。風がなく、外よりも暖かいだけ相当ましなのですが、これも程度問題。酷い場合にはイグルーの中にツェルトを張ったりかぶったりしてしのぎましょう。
どうしても大きな雪のブロックを切り出せないなどの問題で屋根を作れないときは、ストックや木の枝を渡してそこにブロックを乗せると屋根を作ることができます。
また、雪が融けてしまうような、気温の高い日や雨の日には屋根付きの本格イグルーは作れません。別の方法を考えましょう。
最後に。本格イグルーは作っている間に崩れてしまうこともあります。それもまたトレーニングと思って、気を取り直して途中からまた作ってみましょう。
雪洞だけではない雪のシェルター。ビバークのバリエーションを増やして安心な雪山ライフを

ビバークのバリエーションが広がり、いつでもどこでもできるようになれば、安心して山に行けるようになります。テントなどを用意して、万が一失敗した時の備えも万端にした上で、イグルーも練習してみてはいかがでしょうか。
いつでも作れるようになれば、テントを持って行く必要もなくなり、荷物も軽くなりますよ。
この記事を読んでいる人にはこちらもおすすめ
記事提供元:YAMA HACK
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
