「這い上がれないと思った」 柏原明日架が涙とともに振り返った苦難の6年間【2025年“この1シーン”】
イチオシスト
白熱のシーズンが終わった国内女子ツアー。今季全36試合を振り返り、大会ごとに印象に残った“1シーン”を紹介する。
■NEC軽井沢72ゴルフトーナメント(8月15~17日、長野県・軽井沢72ゴルフ北コース、優勝:柏原明日架)
最終組で優勝争いを演じたのは、プロ12年目の柏原明日架と、ルーキーの寺岡沙弥香だった。29歳と22歳(当時)。世代の違う2人による競り合いは、トータル14アンダーで1打抜け出した柏原に軍配が上がった。
この勝利は、2019年の「マスターズGCレディース」以来、実に6年ぶり。だが柏原にとって、この6年間は単なるブランクではなかった。シード落ち、QT行き、環境の変化。思うように結果が出ない時期が続き、「這い上がれないと思っていた」「優勝するイメージなんて全然湧かない時期だった」と振り返るほど、長く苦しい時間だった。
ラウンド後、幼少期から指導を受けてきた父・武道さんと抱き合い、涙を流した場面があった。会見では「たくさんの方に心配や迷惑をかけて、ゴルフを続けてもいいのかなと思う時間もあった」と声を詰まらせた。その言葉が、この6年を象徴していた。
ツアーでは若手の台頭が続き、勢いと怖さを知らないプレーが目立つ時代になった。柏原自身も「若い時はあんな感じだったのかな」と感じる場面があったという。一方で、自分を「中堅、ベテラン」と位置づけ、「その立場だからこそできるゴルフもある」と考えるようになったのも、この時間があったからだ。
30歳を目前に控え、「自分の体と会話ができるようになった」と話す。練習量やトレーニングを見直し、無理をしない選択を覚えた。「ケガが少ないのも技術だと思う」。経験を積んだからこそたどり着いた境地だった。
20代最後のシーズンに手にした1勝は、復活の証しというより、積み重ねの結果だった。「感謝したい人たちがいっぱいいる」。その言葉とともに、柏原はようやく、自分のゴルフを取り戻していた。
<ゴルフ情報ALBA Net>
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