「役になりきってラップを書く」MCアフロ、俳優としての今とMOROHA休止後の景色
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イチオシスト
ライター / 編集
イチオシ編集部 旬ニュース担当
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街の小さなバーガーショップ“シナントロープ”を舞台にした男女8人の青春群像ミステリー「シナントロープ」(毎週月曜夜11時6分~)。物語の謎が次々と明らかになる中、シナントロープを襲撃した裏組織・バーミンの内情も浮かび上がってきた。
バーミンに属する“きゅうちゃん”こと久太郎を演じているのが、MCのアフロ。ミュージシャンならではの役づくりや、俳優という仕事をどう捉えているのかについて、たっぷり話を聞いた。
【動画】ついにクライマックス! 16年前の事件が現在に繋がる…「シナントロープ」
――オファーを受けた時の感想を教えてください。
「いっぱいしゃべらせていただける脚本だったので、純粋にうれしかったです。情景もすぐに浮かんで、自分が演じるきゅうちゃんはこんな男なんだろうなと、リアルに想像できました。哲学的なことを話すシーンも多いので、セリフを噛み砕きながら、自分の中にきゅうちゃんのキャラクターを落とし込んでいきました」
――アフロさんならではの役作りの方法はあるのでしょうか。
「自分はプロの俳優ではなくミュージシャンなので、演技は不慣れです。でもキャスティングしてくださった方は、自分のこれまでの音楽活動を知ったうえで声をかけてくれたはず。自分の中にきゅうちゃんっぽさがどこかにあると信じて、それをグッと膨らませていきました。
2023年公開の映画『さよなら ほやマン』が演技初挑戦で、その時"素人だという自覚を持って挑まないと"と思ったんです。ドキュメンタリー的アプローチを交えないと芝居ができないと感じて、役になりきってラップを書きました。
今回も、きゅうちゃんとして書いたラップがあります。ラップというフォーマットの上に役を落とすと、台本だけでは気づけなかった役の感情が見えてきて、より体重が乗るんです。それが一番自分らしい役づくりなのかなと思います。
ちなみに自分ときゅうちゃんが似ているのは、末っ子で甘えん坊なところ。怠け者で、すぐ文句を言うところは自分そのものです(笑)」

――”龍ちゃん”こと龍二を演じる遠藤雄弥さんとのコンビネーションはいかがでしたか?
「衣装合わせの日が初対面で、その日のうちに連絡先を交換しました。自分は私生活も取り入れながら役に入っていきたいと最初に伝えて、オフの日に昼からカラオケボックスに集まったり、じっくり語り合ったりして、きゅうちゃんと龍ちゃんの空気感を作っていきました。
申し訳ないし恥ずかしいかもしれないけれど、『撮影中以外も役名で呼びます』と伝えました。彼は本当にいい男で、『とことん付き合うよ』と言ってくれて、クランクアップした今でも自分のことを"きゅうちゃん"と呼んでくれています。
龍ちゃんと久ちゃんは"2人で1つ"のような関係。1人で役を作るのは難しかったけど、龍ちゃんのおかげでスッと入っていけました。
ちなみに今回、龍ちゃんもラップを作っていて、お互いの関係性を理解する助けにもなりましたし、龍ちゃんが役をどう感じているのか知れて、うれしかったです」
――バーミンのトップ・折田浩平役を演じる染谷将太さんの印象はいかがでしょうか。
「初めて会ったとき、勇気を出して名字を呼び捨てで呼んでみました。自分のほうが年上だったのと、龍ちゃんも呼び捨てにしていたし、染谷さんならそんなことでとやかく言う人じゃないと信じて…(笑)。
めちゃくちゃドキドキしながら、お尻に力を入れて"染谷"と呼んだら、優しく笑ってくれて、全然気にしていない雰囲気でした。
龍ちゃんや染谷さんと芝居をして改めて感じたのは、プロの俳優さんって、自分自身が思ってもみなかった力を引き出してくれるということ。どうやってもちゃんと返してくれる安心感があります。
自分は素人なので、テストと本番で言い回しや間が変わっちゃったり、模索したりしながら進める部分もある。でも彼らは、その変化に柔軟に対応できる技術と余裕がある。そのすごさを間近で感じました」

――アフロさんといえば、ギターとMCの2人組バンド・MOROHAの印象も強いです。昨年、MOROHAは活動休止を発表。ソロでの活動になったこの1年はいかがでしたか?
「もちろんバンドでもっとできたことはあったと思うけど、自分はベストを尽くしたと感じています。だからこそ、この1年で次に進めている実感があります。もし芸事がダメになったとしても、ベストを尽くしたと言えるなら、また次も頑張れる。今はただ、できることを全力でやるだけです!」
――MOROHAで得た感覚は、芝居にどう影響していると感じますか?
「まず、音楽をしている時の自分と芝居の自分では、メンタルが全然違います。
もちろんお芝居も全力でやりますけど、自分はあくまでミュージシャン。ミュージシャンが芝居の現場に入ることで、ちょっと歪んだリズムが生まれて面白くなる、そこを期待されているのかなと思っています。だから極端に言えば、自分の場合は芝居の仕事は"あえて無責任"に。もし上手くいって注目されたとしても、それは自分の実力じゃなくて、共演者やスタッフさんのおかげ。そこが音楽の仕事とマインドが違うところです。
技術の話をしたら、自分よりできる人なんていくらでもいる。それでも声をかけてもらえるのは、音楽で培ってきたものに意味を見出してくれているからだと思うんです。だから"俺は俳優だぞ"みたいな意識を持たないほうが、自分の強みが活きる気がしています。どこかで自覚が足りないぞと怒られるかもしれませんが(笑)、今はこれでいいと思っています」

――ミュージシャンでありながら演技することに、最初から抵抗はありませんでしたか?
「自分は田舎育ちなので、テレビの世界への憧れがめちゃくちゃ強かったんです。だからいつかこういう仕事をしたいとずっと思っていました。俳優の仕事は自分にとっては非日常。撮影も毎回楽しくて、ワクワクした気持ちで現場に向かっています」
――出身は長野県。東京にも憧れはあったのでしょうか。
「かなりありました。地元は田舎だったので、通っていた中学校には部活が剣道とバレーしかなかった。そういうところから、ずっと田舎の選択肢の少なさを感じていて、"選択肢が多い象徴"が東京だったんです。
東京で暮らすことも夢だったので、それが叶っている今は、できすぎなくらい。だから今はやることをやって、もし世間からの需要がなくなったら地元に帰って働こうと思っています。もちろん、そのためには"これだけやったんだからもういいや"と言えるくらい、やりきらないとダメですけど」
――まもなくクライマックスを迎える「シナントロープ」。最後に、視聴者に向けてメッセージをお願いいたします。
「自分らのことを、ぜひ最後までしっかり見届けてください。これまで出てきたセリフの中にも伏線がたくさんあるので、最終回を見終えたあとに第1話から見返すと、また違って見えてくるはずです。楽しみにご覧ください!」
【アフロ プロフィール】
1988年1月7日生まれ、長野県出身。2008年、高校の同級生だったUKとともにMOROHAを結成。2024年12月21日、「恵比寿The Garden Hall」でのライブをもって活動休止。個人としては、2023年に初主演映画「さよなら ほやマン」で俳優活動をスタート。第78回「毎日映画コンクール」スポニチグランプリ新人賞、第33回「日本映画批評家大賞」新人男優賞(南俊子賞)を受賞。
2025年6月、エッセイ「東京失格」(株式会社実業之日本社) 出版。
(取材・文/玉置晴子)
バーミンに属する“きゅうちゃん”こと久太郎を演じているのが、MCのアフロ。ミュージシャンならではの役づくりや、俳優という仕事をどう捉えているのかについて、たっぷり話を聞いた。
【動画】ついにクライマックス! 16年前の事件が現在に繋がる…「シナントロープ」
「ラップというフォーマットの上に落とすと、役の感情が見えてくる」
――オファーを受けた時の感想を教えてください。
「いっぱいしゃべらせていただける脚本だったので、純粋にうれしかったです。情景もすぐに浮かんで、自分が演じるきゅうちゃんはこんな男なんだろうなと、リアルに想像できました。哲学的なことを話すシーンも多いので、セリフを噛み砕きながら、自分の中にきゅうちゃんのキャラクターを落とし込んでいきました」
――アフロさんならではの役作りの方法はあるのでしょうか。
「自分はプロの俳優ではなくミュージシャンなので、演技は不慣れです。でもキャスティングしてくださった方は、自分のこれまでの音楽活動を知ったうえで声をかけてくれたはず。自分の中にきゅうちゃんっぽさがどこかにあると信じて、それをグッと膨らませていきました。
2023年公開の映画『さよなら ほやマン』が演技初挑戦で、その時"素人だという自覚を持って挑まないと"と思ったんです。ドキュメンタリー的アプローチを交えないと芝居ができないと感じて、役になりきってラップを書きました。
今回も、きゅうちゃんとして書いたラップがあります。ラップというフォーマットの上に役を落とすと、台本だけでは気づけなかった役の感情が見えてきて、より体重が乗るんです。それが一番自分らしい役づくりなのかなと思います。
ちなみに自分ときゅうちゃんが似ているのは、末っ子で甘えん坊なところ。怠け者で、すぐ文句を言うところは自分そのものです(笑)」

――”龍ちゃん”こと龍二を演じる遠藤雄弥さんとのコンビネーションはいかがでしたか?
「衣装合わせの日が初対面で、その日のうちに連絡先を交換しました。自分は私生活も取り入れながら役に入っていきたいと最初に伝えて、オフの日に昼からカラオケボックスに集まったり、じっくり語り合ったりして、きゅうちゃんと龍ちゃんの空気感を作っていきました。
申し訳ないし恥ずかしいかもしれないけれど、『撮影中以外も役名で呼びます』と伝えました。彼は本当にいい男で、『とことん付き合うよ』と言ってくれて、クランクアップした今でも自分のことを"きゅうちゃん"と呼んでくれています。
龍ちゃんと久ちゃんは"2人で1つ"のような関係。1人で役を作るのは難しかったけど、龍ちゃんのおかげでスッと入っていけました。
ちなみに今回、龍ちゃんもラップを作っていて、お互いの関係性を理解する助けにもなりましたし、龍ちゃんが役をどう感じているのか知れて、うれしかったです」
――バーミンのトップ・折田浩平役を演じる染谷将太さんの印象はいかがでしょうか。
「初めて会ったとき、勇気を出して名字を呼び捨てで呼んでみました。自分のほうが年上だったのと、龍ちゃんも呼び捨てにしていたし、染谷さんならそんなことでとやかく言う人じゃないと信じて…(笑)。
めちゃくちゃドキドキしながら、お尻に力を入れて"染谷"と呼んだら、優しく笑ってくれて、全然気にしていない雰囲気でした。
龍ちゃんや染谷さんと芝居をして改めて感じたのは、プロの俳優さんって、自分自身が思ってもみなかった力を引き出してくれるということ。どうやってもちゃんと返してくれる安心感があります。
自分は素人なので、テストと本番で言い回しや間が変わっちゃったり、模索したりしながら進める部分もある。でも彼らは、その変化に柔軟に対応できる技術と余裕がある。そのすごさを間近で感じました」

ミュージシャンだからこそ見える"芝居のリズム"
――アフロさんといえば、ギターとMCの2人組バンド・MOROHAの印象も強いです。昨年、MOROHAは活動休止を発表。ソロでの活動になったこの1年はいかがでしたか?
「もちろんバンドでもっとできたことはあったと思うけど、自分はベストを尽くしたと感じています。だからこそ、この1年で次に進めている実感があります。もし芸事がダメになったとしても、ベストを尽くしたと言えるなら、また次も頑張れる。今はただ、できることを全力でやるだけです!」
――MOROHAで得た感覚は、芝居にどう影響していると感じますか?
「まず、音楽をしている時の自分と芝居の自分では、メンタルが全然違います。
もちろんお芝居も全力でやりますけど、自分はあくまでミュージシャン。ミュージシャンが芝居の現場に入ることで、ちょっと歪んだリズムが生まれて面白くなる、そこを期待されているのかなと思っています。だから極端に言えば、自分の場合は芝居の仕事は"あえて無責任"に。もし上手くいって注目されたとしても、それは自分の実力じゃなくて、共演者やスタッフさんのおかげ。そこが音楽の仕事とマインドが違うところです。
技術の話をしたら、自分よりできる人なんていくらでもいる。それでも声をかけてもらえるのは、音楽で培ってきたものに意味を見出してくれているからだと思うんです。だから"俺は俳優だぞ"みたいな意識を持たないほうが、自分の強みが活きる気がしています。どこかで自覚が足りないぞと怒られるかもしれませんが(笑)、今はこれでいいと思っています」

――ミュージシャンでありながら演技することに、最初から抵抗はありませんでしたか?
「自分は田舎育ちなので、テレビの世界への憧れがめちゃくちゃ強かったんです。だからいつかこういう仕事をしたいとずっと思っていました。俳優の仕事は自分にとっては非日常。撮影も毎回楽しくて、ワクワクした気持ちで現場に向かっています」
――出身は長野県。東京にも憧れはあったのでしょうか。
「かなりありました。地元は田舎だったので、通っていた中学校には部活が剣道とバレーしかなかった。そういうところから、ずっと田舎の選択肢の少なさを感じていて、"選択肢が多い象徴"が東京だったんです。
東京で暮らすことも夢だったので、それが叶っている今は、できすぎなくらい。だから今はやることをやって、もし世間からの需要がなくなったら地元に帰って働こうと思っています。もちろん、そのためには"これだけやったんだからもういいや"と言えるくらい、やりきらないとダメですけど」
――まもなくクライマックスを迎える「シナントロープ」。最後に、視聴者に向けてメッセージをお願いいたします。
「自分らのことを、ぜひ最後までしっかり見届けてください。これまで出てきたセリフの中にも伏線がたくさんあるので、最終回を見終えたあとに第1話から見返すと、また違って見えてくるはずです。楽しみにご覧ください!」
【アフロ プロフィール】
1988年1月7日生まれ、長野県出身。2008年、高校の同級生だったUKとともにMOROHAを結成。2024年12月21日、「恵比寿The Garden Hall」でのライブをもって活動休止。個人としては、2023年に初主演映画「さよなら ほやマン」で俳優活動をスタート。第78回「毎日映画コンクール」スポニチグランプリ新人賞、第33回「日本映画批評家大賞」新人男優賞(南俊子賞)を受賞。
2025年6月、エッセイ「東京失格」(株式会社実業之日本社) 出版。
(取材・文/玉置晴子)
記事提供元:テレ東プラス
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