高層ビル建設に欠かせないコンクリ素材のシェアは驚異の95%! 知られざる超安定企業【坂本慎太郎の街歩き投資ラボ】【坂本慎太郎の街歩き投資ラボ】
イチオシスト

1941年創業。遠心分離機の専門メーカーと化学品の専門商社のふたつの顔を持つ。自己資本比率70%超と好財務。配当利回りは約3%
『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!
今週の研究対象高層ビル(巴工業)
再開発エリアに立つ高層ビル。その建設には、どんな会社が関わっているのだろう? そこで注目したのが巴工業だ。コンクリ素材のシェアは驚異の95%! こりゃ儲かるにおいがするぞ~!
助手 虎ノ門や八重洲とか、最近再開発が多いですね。歩いてると高層ビルが前より増えた気がします。あのガラス張りのタワーなんて、見上げると首が痛くなりますよ。こんなデカいビルを普通に建ててるって、冷静に考えるとすごいことですよね。
坂本 ええ。この辺りは再開発で景色がガラッと変わりました。地震が多い日本でこれだけの超高層ビルが建つのは、実はコンクリート技術が世界的にも高水準だからなんです。
助手 コンクリートにも技術的な差があるんですか?
坂本 あるよ。例えば、超高層ビルには"超高強度コンクリート"が欠かせません。その超高強度コンクリートの原料のひとつは「シリカフューム」という粉なんですが、巴工業という上場企業が建築向けの国内シェア約95%を押さえているんです。
助手 ほぼ独占じゃないですか! なんでそんなに強いんですか?
坂本 同社は、ゼネコンが「新しいビルはどんなコンクリート配合にしようか」と考える、かなり初期の段階から打ち合わせに入るんです。そこで強度や施工性といった条件を一緒に詰めて配合を提案します。
助手 なるほど。
坂本 超高層ビルで使うコンクリートは国土交通省の大臣認定を取らないといけないんですが、いったんその配合で認定を取ると、別の材料に変えるにはまた試験や申請がやり直しになる。だからゼネコンとしても簡単には変えたくない。そうなると初期段階から入り込んでいた巴工業のシリカフュームが、そのまま標準仕様になっていくわけ。
助手 じゃあ超高層ビル建設が続く限り、巴工業はこれからも安定的な収益を上げられると。投資先としても面白そうですね。
坂本 そう。しかも、巴工業はシリカフュームをはじめとする化学品事業だけの会社じゃないのがいい。同社はもともと機械メーカーでもあって、下水処理場や石油化学プラント向けに1万台以上の遠心分離機を納入してきた実績がある。
助手 遠心分離機って、ぐるぐる回して物質を分けるアレですか?
坂本 そう。ドロドロの汚水を高速で回して泥と水に分けたり、食品工場で原料を分けたりする機械です。日本の下水処理場の多くや石油化学のラインで巴工業の機械が動いています。工場のラインはいったん据えつけたら簡単には他社品に替えにくいから、更新工事や部品交換を継続的に任されやすいんです。
助手 なるほど、こっちも安定的な事業っぽいですね。
坂本 ええ。機械事業でインフラ周りの安定した収益を取りつつ、シリカフュームや半導体向けの材料を扱う化学品事業で成長を狙う。この2本柱が巴工業のビジネスモデルです。景気の波で再開発や半導体生産が落ち込んでも下水処理は止まらないから、全体としてはバランスがとれた面白い組み合わせだと思います。
助手 インフラと材料、両方に強いってけっこう安心感ありますね。
坂本 ええ。派手さはないですが、「なくなると困るところ」にきっちり入り込んでいるのが強みだね。
助手 じゃあ、投資しても大丈夫そうですね。
坂本 そうだね。同社のPERは現状13倍くらい。将来の成長もある程度は織り込まれている水準です。つまり激安ではないですが、長く需要が続きそうなのは確かだから、じっくり付き合う長期銘柄として検討してみるとよさそうです。
今週の実験結果
ホットな半導体材料に加えてインフラ関連の事業も持つ面白い会社です!
構成/西田哲郎 撮影/榊 智朗
記事提供元:週プレNEWS
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