【要注意】固定電話を解約すると「電話加入権」7万2千円が返ってくるのは本当か?
イチオシスト

X(旧Twitter)やTikTokなどのSNS上で今、「固定電話のメタル回線が撤廃されることに伴い、電話加入権の費用7万2,000円が返金される」「手続きの期限は2027年7月5日まで」といった情報が拡散しています。
この情報は、固定電話を契約している多くの人にとって「知らなければ損をする」と思わせる内容で、不安や期待から急速に拡散しています。しかし、結論から申し上げると、固定電話の解約によって「電話加入権」が返金されるという噂は誤り、つまりデマです。
なぜこのような噂が広がり、本当はどのようなお金が、いつまでに返ってくる可能性があるのでしょうか。この記事では、「電話加入権」の正体と、噂の背景にある「ある債券」について詳しく解説します。
「電話加入権」7万2,000円が返金されることはあり得るのか
電話加入権とは「加入電話契約者が加入電話契約に基づいて加入電話の提供を受ける権利」(電話サービス契約約款第21条)です。
一方、施設設置負担金は、電話サービスを利用開始する際に、電話回線(メタルケーブル)を引くための工事費や設備の維持管理費用の一部を利用者が負担する形で支払っていた費用です。金額は、時代によって変動しましたが、2005年以降は39,600円(税込)で、それ以前は72,000円(税別)の時代が長く続きました。噂にある「7万2千円」という数字は、この時代の金額に由来しています。
この施設設置負担金は、一見すると「保証金」や「敷金」のように思えますが、その性質は全く異なります。
「前払い」的な位置づけ
施設設置負担金は、電話回線というインフラの整備・維持費用を契約者が「前払い」するような性格のものでした。この費用によって、NTTは全国に均一な電話サービスを提供するための資金を確保していたのです。

そして最も重要な点は、NTTが「解約時に施設設置負担金(電話加入権)の返金は行わない」ことを明言していることです。
たとえばNTT西日本では、公式サイトで次のように明記しています。「この施設設置負担金は(中略)月々の基本料を割安な水準に設定することでお客様に還元しており、解約時等にも返還しておりません。従って、施設設置負担金は、弊社が電話加入権の財産的価値を保証しているものではありませんが、社会実態としては、電話加入権の取引市場が形成されています。また、質権の設定が認められ、法人税法上非減価償却資産とされる等の諸制度が設けられています。」としています。
総じて施設設置負担金(電話加入権)は、加入者が支払ったお金が「電話回線を利用するための権利を得るための費用」であり、建物の敷金のように後に戻ってくる性格のお金ではないと言えるでしょう。したがって、固定電話の解約やメタル回線から光回線への切り替えで電話加入権の7万2,000円が返金されるという情報は、完全な誤りです。
なぜ「2027年7月5日」という期限が噂されるのか?
電話加入権の返金がデマであるにもかかわらず、「2027年7月5日まで」という具体的な期限が広まっているのには、大きな理由があります。その背景には、「電話加入権」と非常によく似た時期に存在し、本当に返金を受け取れる可能性がある「ある債券」の存在があります。
そのお金の正体こそが「加入者等引受電信電話債券(以下、加入者債券)」です。

加入者債券とは、電話加入権とは別に、日本電信電話公社が1953年(昭和28年)から1983年(昭和58年)までの間に発行した債券のことです。
当時は電話の需要が非常に高く、新たに電話回線を引きたい人が殺到していました。そこで、電話設備の拡充に必要な資金を調達するために、電話加入者に「債券(借用証書)」を購入してもらう形がとられました。この債券は、満期が来れば元金と利子が支払われる、国が発行する国債などと同じ性格を持つ有価証券です。
つまり、電話加入権が「回線を使うための費用」であったのに対し、加入者債券は「設備投資のためにNTTにお金を貸していた」証拠であり、全く別物なのです。
この加入者債券は、すべての債券の満期日がすでに到来しており、本来であれば時効が成立しています。しかし、NTTグループは、公社時代の債券について、元金と利子(元利金)の支払いを現在でも受け付けています。
そして、NTTグループは、長期間にわたり支払いの時効にかかわらず対応してきたこの債券について、元利金のお支払いを2027年7月5日をもって終了することを公表しています。
この「2027年7月5日」という期限が、SNS上で広まった噂の発端となり、「電話加入権」と混同された可能性が高いと言えます。
もし、ご自宅に「加入者等引受電信電話債券」や、それに類する昔の公社が発行した証書が残されている場合は、お持ちの債券がNTTグループの支払い対象であるかを確認し、2027年7月5日までに手続きを行う必要があります。心当たりのある方は、ご自宅の重要な書類を一度確認してみましょう。誤情報に惑わされず、本当に返金対象となる債券がある場合は、期限内に手続きを行うようにしましょう。
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記事提供元:スマホライフPLUS
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