「外来魚を釣って食べて減らす?」 注目の【本栖湖レイクトラウト釣り大会】開催までは山あり谷あり

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本栖湖レイクトラウト釣り大会が開催 本栖湖でレイクトラウトの釣り大会と聞くと、「へぇ、本栖湖にそんな魚がいるんだ」くらいの印象の方も多いかもしれません。しかし、今回の釣り大会は、単に釣りを楽しむことだ …
イチオシスト
2025年10月5日、山梨県本栖湖にて「Lake Trout Fishing Competition &Food Festival at Lake Motosu」(本栖湖レイクトラウト釣り大会)が開催。外来魚レイクトラウトが対象ということもあり、注目が集まった大会の開催の目的とは果たして?
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・福永正博)


本栖湖レイクトラウト釣り大会が開催
本栖湖でレイクトラウトの釣り大会と聞くと、「へぇ、本栖湖にそんな魚がいるんだ」くらいの印象の方も多いかもしれません。しかし、今回の釣り大会は、単に釣りを楽しむことだけが目的の大会ではないのです。
それを理解するには、本栖湖におけるレイクトラウトの現状を知る必要があるでしょう。
レイクトラウトとは?
今回のターゲットである魚種「レイクトラウト」とは、北米大陸北部に広く生息するイワナ属の魚です。大きなものは体長1mを超えて寿命も長く、なんと48歳の個体が捕獲されたデータも残っています。
日本には、昭和41年(1966年)にカナダから栃木県の中禅寺湖に導入されました。以後しばらくは、中禅寺湖以外にはいないはずの魚だったのですが、近年本栖湖でも生息が確認されています。
どのような経路で本栖湖に入ったかは不明ですが、流入河川が無くても繁殖でき、低水温を好むことなどから、本栖湖の環境に適応したと考えられています。
本栖湖の立て看板(提供:TSURINEWSライター・福永正博)
生態系への悪影響
また、大型になるほど魚食性が強くなり、しばしば生態系に影響を与えることも。そして、本栖湖においてもレイクトラウトの被害が懸念されており、とくにヒメマスへの食害が問題視されている状況なのです。
ヒメマスの被害
ヒメマスは陸封型のベニザケで、大正6年(1917年)に十和田湖から本栖湖に移入された魚です。マス類の中でも格別に美味とされ、観光資源や釣りの対象魚として長年親しまれてきました。
しかし、ここ数年はめっきり釣れなくなってしまい、春と秋年2回のヒメマス釣り解禁は、期間短縮や中止になるほど深刻な不調に。まだ判明していない環境の変化などが影響している可能性があるとはいえ、レイクトラウトの存在が本栖湖のヒメマス減少の一因と考えられています。
本栖湖漁協の取り組み
本栖湖漁協では、捕獲されたレイクトラウトに発信機を付けて生態調査をしたり、漁協にレイクトラウトを持ち込んだ人に1匹1,000円を支給したりと様々な取り組みを実施しています。
もちろん、ヒメマスの放流も実施しており、稚魚を放流してもレイクトラウトの餌食になりやすいため、幼魚になるまで成長させてから放流するなどの工夫もされています。
ですが、現状ではその効果は限定的と言わざるを得ません。もはや、本栖湖では釣りが成立しないほど、ヒメマスの生息数が減少しているのが現実なのです。
発信機付きの魚が釣れた際の注意書き(提供:TSURINEWSライター・福永正博)
レイクトラウト問題の啓蒙に
以上のような現状から、「ヒメマス釣りを未来に」をスローガンに、レイクトラウトの数を減らし、さらに有効活用するべく企画されたのが今回の釣り大会。釣り人にレイクトラウトをたくさん釣ってもらい、釣れた魚は美味しく食べて活用しようという目論見です。
そのため、釣り大会だけでなく一流シェフによるレイクトラウト料理の出店もあり、釣りをしない一般の方も楽しめるイベントを企画。釣り人だけでなく、多くの人にレイクトラウト問題を知ってもらうキッカケになっていました。
レイクトラウト料理の出店(提供:TSURINEWSライター・福永正博)
本栖湖でのカヤックフィッシング
冒頭でも触れたように、今回はホビーカヤックに限り特別にカヤックからの釣りが許可されました。その経緯についてもご説明しておく必要がありますね。
本栖湖は本来カヤックフィッシング禁止
本栖湖では、レンタルカヤック・SUPでのツアー体験や、カヤック持ち込みによるクルージングが人気のアクティビティ。富士山を間近に望む素晴らしいシチュエーションの中、澄み切ったブルーの湖上を漕ぎ進んでいくのは実に爽快でしょう。
また、水質保全の観点からエンジンを積んだ動力船やジェットスキーの航行を禁止しているため、引き波などがない落ち着いた湖面が維持されるのも魅力の一つです。
しかし、レンタルか持ち込みかに関わらず、残念ながらカヤックからの釣りは認められていません。では、なぜ今回の釣り大会に限り本栖湖でのカヤックフィッシングが実現したかというと、ホビーカヤックの日本国内総代理店であるホビージャパンの尽力があったからなのです。
本栖湖ブルーと呼ばれる澄んだ湖水(提供:TSURINEWSライター・福永正博)
ホビージャパンの働きかけ
本栖湖でカヤックフィッシングが禁止されているのは、安全性や他の湖上利用者とのトラブルなどに対する懸念が大きな理由です。もちろん、湖を管理する立場として、事故やトラブルを避けたいのは理解できますよね。
しかし、「カヤックが安全でトラブルが少ない乗り物と理解してもらい、さらにカヤックフィッシングが本栖湖に人を呼ぶ観光資源になる可能性も提案できれば、道は開けるかも!」と考え、実行に移したのがホビージャパン。
富士河口湖町、身延町、本栖湖漁協が構成する釣り大会実行委員会と幾度もの交渉やプレゼンテーションを重ねたとのこと。
さらに、関係者の方々に実際にホビーカヤックに乗ってもらい、決して危険な乗り物ではないとの理解を得ることに成功したそうです。そのような経緯があり、初の試みとして本栖湖でのカヤックフィッシングが可能となったのです。
町長さんと写真撮影(提供:TSURINEWSライター・福永正博)
大会参加にあたり講じられた安全対策
本大会では、ホビージャパンが事前に選考したホビーカヤック経験者のみがホビー部門に参加できることになりました。ホビーカヤックの取り扱いや、カヤックでの釣りマナーを知っているアングラーに限定することで、より安全性を高めるためです。
その他にも、ホビージャパンが講じた安全対策は多数ありましたので挙げてみましょう。
オンラインミーティング
事前にオンラインによる参加者ミーティングを開催し、大会の趣旨や注意事項を入念に確認。本栖湖におけるカヤックフィッシングの第一印象は自分たち次第ということを認識して気が引き締まる思いでした。
緊急時用の連絡網
急用や体調不良などで岸まで戻りたくなった場合や、釣りを中止して早上がりしたくなった場合などは、必ず大会スタッフに電話連絡することを徹底。「いつの間にか一人足りない」なんて事態は絶対NGですからね。
安全装備をチェック
ライフジャケットは手動式や自動膨張式ではなく「固定式」を必須として、万が一の転覆があった際の安全性を最大限に。
また、セーフティフラッグも配布され、視認性向上によってトラブルを予防します。個人的には、HOBIEのロゴ入りフラッグが持ち帰りOKだったので得した気分でした。
配布されたHOBIEのセーフティフラッグ(提供:TSURINEWSライター・福永正博)
GPSを装備
ホビー部門に出場する参加者には、各自にGPS発信機が配られ、常に湖上のどこにいるのか把握されます。20機の発信機を用意するコストなどを考えると、ホビージャパンの徹底した安全意識と大会へかける意気込みが伝わってきますね。
安全確保のためのGPS(提供:TSURINEWSライター・福永正博)
次の記事では、いよいよカヤックジギングでレイクトラウトに挑戦した模様をレポートします。
<福永正博/TSURINEWSライター>
記事提供元:TSURINEWS
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
