武居由樹がまさかの王座陥落。メディナの徹底したサウスポー対策とハードパンチに苦しんで衝撃の4RTKO負け【Lemino BOXING】

誰がこの結末を予想しただろうか。指名挑戦者との防衛戦をクリアし、ライバルとのドリームマッチを目指していたチャンピオンに思わぬ結果が待っていた。
WBO世界バンタム級王者の武居由樹(大橋)にとっては自身3度目の防衛戦。ユッタポン・トンディ(タイ)と対戦した5月のV2戦ではわずか開始127秒でのTKO勝利を収め、那須川天心戦や他団体統一戦の実現に向けて準備が整いつつあると見られていた。
そのためにクリアしなければならないハードルとして迎えたのが、14日に名古屋・IGアリーナで行われた指名挑戦者のクリスチャン・メディナ(メキシコ)との防衛戦だった。ここをしっかりと乗り越えて先に進む──。だが、王者が思い描いていたストーリーは、チャレンジャーの徹底したサウスポー対策と強烈なパンチによって打ち砕かれてしまう。
試合の立ち上がり、距離を置きながら様子を見ようとした武居の左フックに対して、メディナが強烈に右を合わせてくる。その後も武居のパンチにしっかりとタイミングを合わせ、会場がどよめくほどのパワフルなパンチを繰り出し続ける挑戦者。1R2分18秒にはコンビネーションに完全にタイミングを合わされ、至近距離から体重の乗った強烈な右を食らってダウン。武居にとってはプロ12戦目にして初のダウンを喫する形となった。
メディナに対して「パンチの強さはすごく感じた。体の頑丈さも」と武居が振り返ったように、想像以上の仕上がりとパフォーマンスを見せてきた挑戦者に完全にペースを握られてしまった。
2R以降も展開は変わらない。チャンピオンのパンチに合わせながらKOを狙って大振りになるメディナに対して、武居もコンビネーションや左フックを中心に反撃を試みた。だが、挑戦者は強じんな体幹を武器に構わず前進して力強いパンチを打ち込んでくる。相打ち覚悟で打ち合うシーンも見られ、武居も2R終了間際に強烈な左ボディを見舞って相手の足を止めることに成功したかと思われた。チャンピオンも「左ボディを効かせられた手応えがあったので、どこかで逆転するチャンスがあると思っていた」と語る。
しかし、4Rに衝撃の展開が待ち受けていた。ジャブの手数を増やしてリズムを作ろうとする武居に、メディナが強烈な右フックを合わせる。タイミングを合わされた武居がカウンター気味に右を食らってロープからコーナーへと追い詰められると、繰り返し連続して強烈な右アッパーを食らったところでレフェリーストップ。まさかの4R1分21秒TKO負けという結末に、武居はコーナーにもたれかかりながら涙を流した。
チャレンジャーの準備が武居のスタイルを大きく上回った。2023年8月にサウスポーの西田凌佑に敗れたことを契機に、帝拳ジムで那須川天心ら世界レベルのサウスポーのスパーリングパートナーを務めるなど経験を積んだ。継続してきた努力が実った形だ。プロ初黒星を喫し、王座から陥落してしまった武居がメディナ戦を振り返る。
「メディナ選手が本当に強かった。全部自分のパンチが読まれていて、それに合わされた。パワーもあったし、対策もされていたし、技術の差も感じた。悔しいです。(涙の理由は)ただ悔しくて。応援してくれた皆さんにあんな姿を見せてしまって本当に申し訳ない」
武居とともに歩んできた八重樫東トレーナーも「世界中のボクサーから注目され、分析され、武居由樹のボクシングを研究されていた。さらに裏をかくような動きとか新しい武器を身に着けていかなければならない。そこは自分の責任でもある」と悔しさをにじませる。
元K-1王者、プロデビューから11戦11勝9KOという華々しい経歴で連勝街道を歩んできた男が初めて直面した屈辱。未来に向かって敷かれていたレールの行き先も見えなくなってしまった。今後については「ゆっくりしてからちゃんと答えを出します」と話すにとどめた武居。チャレンジャーの入念なサウスポー対策とハードパンチの前に完敗を喫し、目を赤くして頭を下げながら花道を戻っていった。
【制作・編集:Blue Star Productions】
記事提供元:Lemino ニュース
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。