エリートアマ時代は「ぬるいお湯につかっていた」 開幕戦3位の出利葉太一郎が明かすプロテスト受験への“覚悟”
<PGA資格認定プロテスト 最終プロテスト 3日目◇4日◇烏山城カントリークラブ 本丸・三の丸(栃木県)◇7118ヤード・パー70>
日本プロゴルフ協会(PGA)では、2025年のPGA資格認定プロテストが9月2日から4日間の日程で開催されている。5位で3日目を迎えた24歳の出利葉太一郎が、8バーディ・1ダブルボギーの「64」をマーク。トータル12アンダーで首位タイに浮上し、最終日へコマを進めた。
初日は「68」、2日目は「66」と着実にスコアを伸ばしてきたが、この2日間は納得のいくゴルフではなかった。「(グリーンが)砲台で、打ち上げが多く、グリーン周りに木がないので距離感がつかみにくい。丘みたいになっていて奥に木がないから距離感を合わせるのがきのうまで大変で、もったいないことをずっとしていた」と悔しい表情を見せる。
この日は、ショットのタテ距離の感覚が噛み合いはじめ、前半から6バーディを奪う「29」と猛チャージ。「やっと合わせられるようになってバーディチャンスが多くなってきた。よく言ったら、もっといけましたけど、明日また頑張りたい」と手応えをつかんだ。
出利葉は2023年から日本ゴルフツアー機構(JGTO)のメンバーとしてツアーに参戦。今季はQT55位の資格で下部のACNツアーを主戦場としているが、レギュラーツアー開幕戦「東建ホームメイトカップ」では3位と健闘。賞金ランキングは現在56位で、第1回リランキングは上位での通過が見込めている。
同ツアーの直近2試合は推薦出場で、「ISPS HANDA 夏の決戦・誰が一番強いんだトーナメント」では2日目に2位タイまで浮上したものの最終日に伸ばせず42位タイ。「Sansan KBCオーガスタゴルフトーナメント」も38位タイに終わり、「本当に悔しい」気持ちを抱えて今週を迎えていた。
「先週、先々週と推薦で出させてもらったのにトップ10入りできず悔しかった。ここ(最終プロテスト)でどんな気持ちで臨むべきか、葛藤もあった。でも“同じ1打”というのを常に言い聞かせて、目の前の一打に集中してきました」と胸の内を明かした。
現在の位置ならシード獲得も見えるが、プロテストを受験。「東建が良かったのでシードも見えてきましたが、昨年はQTが悪くて下部ツアーしか出られない状況。スケジュールも空くと思って、プロテストにエントリーしました」と理由を語る。
PGAでは、JGTOの賞金ランキングによるシード権を獲得した選手、また顕著な実績を持つ選手が申し出た場合に対し、当該年度のPGA資格認定プロテストを免除し、協会が定めた入会セミナーを受講するという条件の下、PGAに入会できる特別制度がある。「去年はシードが取れると思って受けなかった。でもそんなに甘くなかった。そこは少し勘違いしていました…」。気持ちを切り替えて「いまはすごくゴルフに向き合えている」と強いまなざしを向けた。
自身のキャリアを振り返れば、「大学のときは、コロナもあって、なんとなくレギュラーに定着して、なんとなくナショナルチームやって、競争社会からはちょっと緩かったというか…ぬるいお湯につかっていた。プロになって『シード取れるでしょ』という、ちょっと甘えていたなっていうのを最近すごく思って。“僕は今からシード選手に勝っていくんだ”というのをリシャールの時に薬丸(龍一)キャディと組んで感じた。いろんなひとのおかげで強くなっている」とさまざまなことを感じていた。
だからこそ「本当はここ(プロテスト)にいること自体悔しいし、スコアもずば抜けていないことが悔しい。俺はこんなもんじゃない。ここでやっている場合じゃない」。そんな悔しさと覚悟を胸に、この日は3位タイに3打差をつける首位に立った。
ここ最近のレギュラーツアーで納得のいく結果が出ていないからこそ、「いい機会。3日目をどうやって伸ばすかや、(連戦明けの)疲労でどんな球が出るのかも勉強になる。いまは、うまくいっても悪くても学びの時間。怪我はしたくないけど、してもいいくらいやり切りたい」と成長への糧にするつもりだ。
出利葉は日大ゴルフ部出身。同大出身でツアー通算2勝を誇る51歳の高橋竜彦は「第二の父親」であり師匠でもある。「ゴルフは竜彦さんに教わって本当に良くなってきている。技術的にも焦るなよと言ってくれて、一番信頼している人。トップ通過を報告したい。また来週会いに行けるので」と笑顔を見せる。恩師への感謝を胸に、結果で恩返ししたい。(文・高木彩音)
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