選手に歩み寄る協会の工夫に期待… 日本女子OP出場の障壁になる“強行日程”【現地記者コラム】
北海道で行われた先週の「ニトリレディス」の会場では、“焦る”選手の姿をよく見かけることになった。その背景には、翌週の月曜日、火曜日(9月1、2日)に、10月2~5日に開催される国内女子メジャー「日本女子オープン」(兵庫・チェリーヒルズGC)の出場権をかけた最終予選会を控えていたことがある。
日本女子オープンは、優勝やメルセデス・ランキングなどですでに出場権を確保している選手もいるが、予選を通過する必要がある選手も多い。最終予選会の会場は兵庫県と千葉県の2カ所。そのため最終日には北海道から移動するため、該当する選手は慌ただしく準備を進めていた。
大会3日目には、こんな声も。「“勝ちたい”という気持ちよりも、このままでは(予選会に)行けないから、ここで“勝たないと”…という思いのほうが強い。いつもの優勝争いとはまた違う緊張感があります」。2位に1打差をつけ、単独首位で最終日を迎えた後藤未有だ。兵庫会場にエントリーしていた後藤は、焦りの色を隠さなかった。
ツアー未勝利の後藤は、昨季シードを失い、今季はQTランク32位の資格でツアーに参戦。日本女子オープン出場条件も満たしておらず、その舞台に立つためには、現状では最終予選会突破が必須だった。
だが函館空港からの便数は限られるうえに、大会最終日のスタート時間は最終組だったこともあり午前10時31分。「夜の便はすでに満席で、今、取れるのは午後3時台の便だけ。これでは絶対に間に合わない」と焦燥感を滲ませていた。だからこそ「優勝」を狙って、『前年本競技の翌週から当年本競技前週までのJLPGAツアー優勝者』になる必要があった。
結果は17位で初優勝と出場権を同時に逃した。なんとか午後10時30分ごろに兵庫に着く便の空席を見つけたため、ラウンドを終えるとすぐさま移動。翌朝8時20分スタートの最終予選会に参加できたが、ここでも1打足りず唇をかむ結果となった。
ほかにも、ローアマチュアを獲得した16歳の後藤あい、大会最終日に優勝争いを演じた大出瑞月や阿部未悠のほか、吉澤柚月、中村心、都玲華といった面々が翌日に最終予選会を控えていた。そのなかで千葉の鷹之台CCを会場に選んでいた大出は、最終日終了後に午後7時30分の便で移動し、翌朝7時30分にはティオフ。だが初日に5オーバーを叩き、棄権した。
本人は、その結果をスケジュールのせいにしたくもないだろうし、実際していないかもしれない。しかし、北海道で4日間いい位置で戦っていたからこそ、せめて1日でも体を休められる余裕、そして心の余裕があれば、もう少し違う結果になっていた可能性もあったはずだ。
一方、ローアマを受賞した後藤は表彰式に出席があったため、それを終えると夜の便に飛び乗り、兵庫へ移動。バタバタのなか、3位タイで通過することができた。ほかにも、阿部や中村も通過を果たしている。
こうした“強行スケジュール”は、なにも今に始まった話ではない。また昨年の「アース・モンダミンカップ」では、降雨の影響により、最終ラウンドが月曜日にずれ込んだが、実はこの日は日本女子オープンの地区予選があった、という事例もあった。この時は決勝ラウンドに進んだ選手たちが、泣く泣く予選会出場を諦めたという事態も起こっている。
日本女子オープンを主催するのは日本ゴルフ協会(JGA)だが、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の試合に組み込まれ、公式戦となっている。それならば、両者間でスケジュールを調整し、もう少し“選手に寄り添った”日程を模索することもできないかと思う。
JGAの試合とはいえ、出場選手の大半がJLPGA会員の選手。このようなことが続いた場合に、今後、予選会を優先としない選手が多く出てもおかしくないのでは…と、思ってしまうほどだ。優勝争いのなか、その後のギリギリの移動を考えないといけない彼女たちの姿を見て、素直にそう感じた。
例えば、スケジュールを組む段階で開催コースを近くしたり、あるいは今年、同週の「ゴルフ5レディス」のように3日間大会であるなら、1日遅らせて火曜、水曜の2日間で最終予選会を実施する、オープンウィーク明けを利用する…など工夫の余地はありそうな気がする。
どのようなやり取りがあったのかはわからないが、例えば、今年の「全米オープン」最終予選会(5月19日/タラオカントリークラブ・滋賀県)は、前日18日まで行われていた「関西オープン」の日野ゴルフ倶楽部から車でおよそ1時間と近いため、移動の負担が少ない。このような距離感ではあれば、選手たちも出場しやすいだろう。
大会最終日のクラブハウスで、荷物をまとめながら“大慌て”で空港に向かう選手たち。「やばい! 間に合うかな? 大丈夫?」という声が聞こえたかと思ったら、「お疲れ様でした! 行ってきます!」と駆け足で去っていく姿もみかけた。「どうか移動中に事故などが起きませんように…」と筆者は心の中で祈りながら、選手を見送った。(文・高木彩音)
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