日本人客が急増するラオス児童買春の"絶望現場"に潜入! 斡旋ホテルの"隠し部屋"には9歳の少女も...
児童買春を斡旋する拠点ホテルXの大きな部屋には、ほとんどが10代であろう女性が大勢いた
今年6月、外務省『海外安全ホームページ』で、東南アジアの内陸国ラオスに関する注意喚起が発せられた。それは「日本人による児童買春」の横行を示唆するものだった。
その実態を調査すべく、現地に潜入取材を敢行。醜い、おぞましい、そんな言葉では言い足りないほどの闇が、そこにはあった。
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■ラオスは"聖地"深夜1時を過ぎた頃、寂れたホテルの部屋の中から人影が出てきた。続いて、部屋の内側からドアを施錠する金属音が廊下に響く。
人影をよく見ると、プリント柄の大きなTシャツにサンダル姿。うつむいた姿や体格、雰囲気から、年は10代前半の女児だろう。彼女と擦れ違った瞬間、ある異変に気づいた。声を押し殺すように、すすり泣いていたのだった。
「ペン チャン ダイ?」
ラオ語で「どうしたの?」と声をかけてみた。すると彼女は一瞬驚いた表情でこちらを見た後、足早に去っていった――。
これは、ラオス人民民主共和国の首都・ビエンチャンにあるホテルでの一幕だ。この場所は、児童買春を斡旋(あっせん)する拠点として、地元住民はもちろん、世界の小児性愛者にはよく知られているという。こうした場所に今、多くの日本人が幼女を求めて集まっているというのだ。
今回、ラオスを舞台にした児童買春の実態を取材すべく、潜入取材を敢行。現地に行くと、そこにはおぞましい光景が広がっていた。
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在ラオス日本国大使館が外務省のホームページを通じて「児童買春に関する注意喚起」を出したのは6月17日のこと。
〈昨今、SNS上でラオスにおける日本人による児童買春を示唆するような内容の投稿が見受けられます〉
そう冒頭に記された注意喚起には、ラオスにおける児童買春は現地捜査当局による取り締まりの対象であり、日本国民による国外犯としても処罰されることなどが記されている。
外務省大臣官房報道課によれば、「児童買春の状況を網羅的に把握することは困難」だという。
ラオスは約50の民族と言語がある多民族国家で、人口の多くが農村地帯や山地の村落に住んでいる。首都ビエンチャンは、他国の都市と比べて経済規模が小さいなどの理由で「世界一何もない首都」と呼ばれている
児童買春という非人道的行為を、わざわざ改めて日本大使館が注意喚起しなければならなかったのはなぜなのか。
東南アジアの風俗事情に詳しいライターはこう話す。
「近年、ラオスでは小学生くらいの女の子が買えるとの情報が急速にネットで広まっていました。
これまではカンボジアの"売春村"と呼ばれた漁村をはじめ、近隣国で児童買春が目立っていた。ところが国際的な批判を受けた各国は取り締まりを強化。
すると今度は小児性愛者らの間で、『ラオスなら幼い子が買える』『ラオスはロリの聖地』などという情報が拡散し始めたのです」
ラオスに少女を買いに来る日本人男性は近年増えているという。
「2019年には30代の日本人医師がラオスの少女を撮影した児童ポルノ動画を大量に所持し逮捕されました。
またこの数年、日本人ユーチューバーがラオスでの児童買春の関連動画をSNSに投稿し、その内容に『卑劣だ』『吐き気がする』などと批判が殺到しました。
日本の小児性愛者の中には、『俺たちが貧困の子を助けてやってる』などと開き直り、今も現地で少女を食い物にしている者がいるのです」
■闇の中へ7月某日の21時。ビエンチャンの中心部からタクシーで十数分走ると、周囲は突然深い闇に包まれた。古びた建物の前で車を降りると、看板に「ホテルX(仮名)」とある。ここは、ラオスに複数あるとされる売春拠点のひとつだ。
「表向きはなんの変哲もない寂(さび)れたホテルで、日本の大手旅行代理店も取引しています。しかし、このホテル裏手の敷地内で多くの幼女が売られているのです」
そう話すのは、前出のライターだ。同氏によれば、ラオスの売春には、いくつかの形態があるという。
最も有名なのが通称「食堂置き屋(ハンノイ)」「ホテル置き屋」などと呼ばれるもの。食堂置き屋とは、飲食もできるバー営業を装った売春店のことを指す。
そしてホテル置き屋と呼ばれるのは、宿泊施設を隠れみのにした売春拠点。中でも、ビエンチャンには、複数のホテル置き屋が今も存在しているという。
そこで、小児性愛者の中で最も有名とされるホテルXを事前にネット予約し、宿泊してみることにした。
ラオス産業商業省の企業登録情報などの資料を調べてみると、ホテルXの経営者は、Pと名乗るラオス人の男性だ。ホテルXはほかにもグループホテルを運営しているが、すべてP氏により経営されている。
ちなみに、このグループのほかのホテルにも置き屋が併設されているという。フロントの受付は24時間対応。朝食サービスやランドリーサービスなどを提供し、館内にはレストランが併設されている。表向きは普通の三つ星ランクのホテルだ。
ホテルXに着くと、フロントにはラオス人の男性スタッフがひとり。このスタッフはタイ語と英語を操り、ちょうど電話で日本人ツアー客の手配をしていたとして、こう話した。
「うちでは、旅行者のビザの手配もやっている」
児童買春を斡旋する男性スタッフ。ふたりとも現地のラオス人だと思われる
ホテル内はロビーも廊下も薄暗い。チェックインを済ませ4階の部屋に入ると、室内はかび臭く、テレビの画面には大きな手あか、かけ布団には赤黒いシミがこびりついている。おまけに部屋のカギまで壊れていた。
「女の子はどこですか?」
1階へ下りて、フロントの男性スタッフに声をかけると、不愛想に「裏に行け」と後方を指さした。目を向けると、色あせたTシャツを着た10代くらいの少年が、薄暗い廊下の突き当たりからこちらを見ている。目が合うと隠れるように暗闇に消えた。
「レディ?」
ホテルの裏手に回ると、小さな中庭があった。20代半ばくらいの青年が英語で「女か?」と話しかけてくる。その瞬間、7、8人の少年たちに囲まれていることに気づいた。少年らの中にはリーダー格と思われる30代くらいの青年が3人いた。
ホテルXの廊下。男性客は少女を自分の部屋に連れ込む
金色のネックレスをしたひとりの青年が、たばこをふかしながら、「こっちに来い」と先頭を歩く。筆者は両腕をふたりの少年につかまれながら、まるで連行されるかのように建物の中に吸い込まれた。
連れていかれたのはホテルの1階部分とつながる"隠し部屋"のような場所だ。真っ暗な廊下を挟んで右手に3部屋、左手に1部屋あった。左の部屋は、3部屋分の広さがあり、最初は、この最も大きな部屋に通された。
青年がドアを開ける。室内には工事現場で使われる投光器が置かれ、まぶしいくらいだ。たばこの煙が充満した部屋には、20人近くの女性がおり、こちらに気づくと一斉に立ち上がった。
「あれは11歳。若い。どうだ?」
リーダー格の男が女児を指さしながら、こちらに顔を近づけてきた。この汗臭い男性に、若い子がいいなどと言った覚えはないが、こちらが日本人だとわかったため、女児を斡旋しているようだった。
立ち上がった少女たちは、笑顔を見せる者もいれば、険しい表情の子もいる。ほぼ全員が10代だろう。
筆者が、もっと若い子はいないのか、と青年に聞くと、別のリーダー格の青年が「OK」と言いながら、「こっちに来い」と、向かいの部屋に案内した。青年は、彼女が最も若いと指をさす。表情も体形も確かに幼い。
「何歳?」
そう青年に聞いてみると、驚くべき答えが返ってきた。
「ナイン」
思わず聞き返した。9歳だという。日本では小学校3年生だ。胸元が開いた安っぽい白のドレス風の服を着ていたが、まるで大人が選んだものを着せられているかのようで、違和感がある。
無表情の女児は、警戒するかのように時折こちらをチラリと見た。青年の説明によれば、1時間彼女を連れ出すと、60万キープ(取材時のレートで約5000円)。
宿泊客は、女性をそのまま部屋に連れて帰り、追加料金を払えば女性と宿泊もできるという。宿泊者以外はホテルの部屋を時間単位で借りるシステムだと話した。
「OK? OK?」
男たちは「早く決断しろ」と言わんばかりにせき立てる。
適当な理由をつけて断ると、今度は、口元にひげを生やしたまた別のリーダー格の男が「こっちの部屋に来い」とばかりに、筆者の腕を引っ張った。今度の部屋には6、7人の女性がいたが、やはり10代前半が中心だ。ここでも断ると、さらに別の部屋へと連れていかれる。
ホテルXには総勢約50人の女性がいた。そのうち、9歳だという女児が少なくともふたり。もうひとりの9歳は、大きめの黒い柄Tシャツを着ており、ストリート風の格好だ。
左の子は9歳だという。ホテルXに集った女性たちの中でも、おそらく最も若い
筆者とカメラマンは、彼らの執拗(しつよう)な勧誘を振り切って、なんとか建物から脱出したのだった。
ラオスでは、売春行為は違法とされており、建前では売春斡旋施設も存在しないことになっている。
また、18歳未満の者を児童と定義し、国際基準に沿った保護対象と位置づけているが、これも表向きの話だ。法律では、ナイトクラブ、ゲストハウス、ホテル、レストランで児童を雇用することを明確に禁止しているにもかかわらず、今も公然と児童が性的搾取の被害に遭っている。
「ラオスは警察が腐敗しているため、賄賂を払えばたいていのことができます。もちろん売春が黙認されることも。
逆に賄賂を払えないような小規模店は、見せしめで摘発されています。ホテルXや、中国系の別の売春ホテルなどが、これまで摘発されていないことを見れば、当局となんらかの取引があると容易に想像がつきます」(元ラオス駐在員)
■家族と自分のためにそんなホテルXの前に1台のタクシーが止まったのは23時頃。20代後半から30代前半の日本人と思われる男性ふたりが降りてきた。Tシャツに短パンというラフな格好の彼らはフロントへ向かわず、慣れた様子で真っすぐ建物の裏手に歩き出した。
「日本人ですか?」
彼らにそう声をかけると、ひとりが目を丸くして立ち止まった。
「な、なんですか?」
そう日本語で答えたので、児童買春の取材で来たことを告げた。すると、逃げるようにして質問を遮り、ホテルの裏手に消えていった。しばらく路上で待ち伏せたが、男たちは戻ってこない。恐らく女性を選び、通用口からホテルの部屋に入ったのだろう。
その晩、ホテルの廊下を歩いていると、女児と共に部屋に入る男の姿があった。先ほどとは別の日本人だ。50代だろうか。男性と目が合うと、バツが悪そうな表情をして扉を閉めた。連れていたのは、やはり10代前半の、あどけない少女だった。
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別の日に訪れたのは、日本人もよく来るとされる通称、食堂置き屋だ。店先には老婆がおり、奥の個室に案内された。店内には10人ほどの女性。上は20代、下は15歳だと説明されたが、もっと幼く見えた。
ビエンチャンの食堂置き屋。奥の個室には若い女性が10人ほど待機していた
店内は小さな裸電球があるだけで真っ暗だ。老婆が面倒くさそうに、「女の子を選んで」と言った。自分たちの飲食代に加え、女性をひとりテーブルに呼ぶごとに10万キープ(約700円)が加算される仕組みだと言う。店の外に女性を連れ出すこともできるが、その場合はさらに別料金がかかるそうだ。
15歳だと言い張る少女はティダと名乗った。そして同じく15歳だと言うスキタと共にふたりで席に着いた。
ティダの出身はビエンチャン。スキタは首都から車で5時間ほど離れた農村地帯のサワンナケート出身だという。ふたりとも、英語がまったく話せない。学校にも行っていないそうだ。
翻訳アプリで、「本当に15歳?」と聞くと、ふたりは顔を見合わせて笑うだけ。続けてスキタに、なんのために働いているのかと聞くと、こう答えた。
「家族と自分のため」
この日、老婆に飲食代だけ支払って、店を後にした。
NGO関係者によると、こうした店で働く女性は、店側にショバ代を払っている子と、仲介業者を経由して売られてきた子がいるという。
「農村の子を、都会で給仕の仕事があるとだまして連れてくるケースもあります。多民族国家のラオスでは、識字率が低い民族もおり、契約書の読めない親にサインをさせて娘を連れ去るケースもある。
中には、家族にお金が入るのは最初だけなのに、そうした事情も知らず『家族のため』と、売春を続けさせられている子もいるのです」(NGO関係者)
ラオスで醜い欲望を満たす日本人の男たち。異国で恥をさらす彼らは、何食わぬ顔で帰国し、普段と変わらぬ生活に戻るのだろう。
取材・文/甚野博則 撮影/郡山総一郎
記事提供元:週プレNEWS
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