世界を関税で振り回し、内政も崩壊寸前だけど、実は、これ全部シナリオどおり!? トランプ大統領(秘)マニュアル「PROJECT 2025」を解読せよ!!
保守系シンクタンク・ヘリテージ財団がまとめた「Project 2025」。その中核とされる『Mandate for Leadership: The Conservative Promise(訳「リーダーシップの使命:保守派の誓い」)』は誰でも購入可能
教育省の解体案をぶち上げたり、不法移民の一斉摘発を行なったり、報道機関や大学に圧力をかけたり。まだ在任期間の8分の1なのに、トランプ政権は破壊と支配の手を次々と国内外に広げている。こうした動きは、トランプというキャラクターの暴走と思われがちだが、実はその多くが、ある"予言の書"にあらかじめ書かれていたとおり......ってガチ!?
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■トランプ本人は「読んだことない」1月20日の大統領就任式から、間もなく半年を迎える第2次トランプ政権。
「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」の合言葉の下、やりたい放題の政権運営は、しばしばドナルド・トランプという個人の強烈なキャラクターの暴走として片づけられてきた。
だが、そんな政権が〝最初の180日〟に打ち出してきた政策の多くを、政権誕生の1年以上前に記していた〝予言の書〟がある。
それは、アメリカの保守系シンクタンク・ヘリテージ財団が2023年の4月に発表した政策提言「Project 2025」だ。
「『Project 2025』は、25年のトランプ政権の復活に向けてまとめられた900ページ超の政策提言書です」
そう語るのは、現代アメリカ政治が専門の国際政治学者で、上智大学教授の前嶋和弘氏だ。
「執筆に関わったのは、ヘリテージ財団の内外から集められた100人ほどの〝ゴリゴリの保守派〟で、現政権で要職に就いている人物も多く含まれます。
トランプ本人は『読んだことがない』と表向きには距離を取っていますが、就任直後に出した47個の大統領令のうち、37個が『Project 2025』に記されていたといわれており、実態としては、政権復活に向けて入念に準備されたシナリオだと言えるでしょう。
その後の半年間に打ち出された政策の多くも内容が重なっているため、第2次トランプ政権の〝予言の書〟というよりは〝設計図〟、あるいは〝作戦計画書〟と呼んだほうがいいかもしれません」
■移民の取り締まりも連邦軍の投入もシナリオどおりでは、「Project 2025」に示されたどのような政策が第2次トランプ政権によって具体的に実行されてきたのだろうか。
今年7月、「ビッグ・ビューティフル・ビル」と呼ばれる税制・移民法案に署名するトランプ大統領
「まずは、政権に従わない省庁や官僚を連邦政府から徹底的に排除して、政府機関を完全に大統領の支配下に置くこと。そのために、司法省、FBI、商務省、国土安全保障省などの重要な省庁・機関の主要ポストを大統領に従順な人材で固める。
それを実現するために、『Project 2025』はトランプ政権復活前から保守派の人材を大量に募集し、発足と同時に政治任用の形で政府内部に送り込んでいます。
さらに、地球温暖化対策などの環境問題や感染症対策、多様性、国際協調、教育など、政権の方針と合わない領域には、廃止や予算・人員の削減などで介入する。
イーロン・マスクがかつて率いていたDOGE(政府効率化省)も『連邦政府予算の大幅削減』を掲げて、予算や人員の大幅カットを強行しましたが、これも『Project 2025』の一環だったと考えれば、外からは主役に見えたマスクが、実際にはその実行役の〝ピエロ〟を演じさせられていた......とも言えます。
また、こうした政府機関への支配強化を足がかりに『不法移民の強硬な取り締まり』『人種やジェンダー問題などの多様性・公平性・包摂性プログラムの廃止』『気候変動対策を目的とした規制の廃止』『教育やメディアへの政治介入』『国内での治安維持に大統領が連邦軍を投入』など、第2次トランプ政権下で行なわれた政策の多くが『Project 2025』に記されています。
一見、メチャクチャに見える政策の背後に、保守系シンクタンクによって緻密(ちみつ)に練られたシナリオが存在する。今、起きていることはトランプ個人のキャラクターの問題ではないのです」
■まだ未公開のページもでは「Project 2025」の目的はなんなのか? 彼らは、それを通じてアメリカをどのような国に変えようとしているのか?
「その策定や実践を支えている多くが『キリスト教ナショナリズム』と呼ばれる宗教的な保守主義思想の信奉者です。
つまり、その目的はアメリカを『邪悪なリベラルに支配された官僚機構』――つまり彼らの言う『ディープステート』から取り戻し、キリスト教中心の国家に変えること。
リベラルを嫌悪し、キリスト教的な価値観を正義と見なす彼らにとっては、官僚機構も、司法も、大手メディアも、大学のような教育機関もすべて『邪悪なリベラル』に支配された敵であり、自由や多様性を重視する〝意識高い系〟や移民、非キリスト教徒もまた排除すべき対象。
それらの敵から社会を取り戻すためには、民主主義や三権分立、基本的人権の原則を無視してでも、大統領権限を徹底的に強化し、保守派の理想とする社会に変革すべきだと考えている。
冷静に考えれば、これは保守派が嫌う中国の毛沢東独裁時代に行なわれた文化大革命やイランのイスラム革命に近く、むしろ彼らこそが『ディープステート』では?と突っ込みたくもなりますが(苦笑)、それでも彼らはそれが正義だと信じて疑わない。そんな彼らにとってトランプは『自分たちの目的を実現するための担ぎやすいみこし』でもあるのだと思います」
ちなみに「Project 2025」には政府関係者以外には未公開の〝秘密の提言〟も隠されているという。
そこには、どんなシナリオが記されているのか? 残る3年半の任期で、アメリカ社会は彼らに〝取り戻される〟のか? 日本の選挙でも「既存メディア」や「外国人」を敵視する政党が目立ってきた。アメリカで起きていることは、もはや人ごとではない。
取材・文/川喜田 研 写真/時事通信社
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