『ブラッドハウンド』で今最も注目の俳優ウ・ドファン、初めて挑戦した時代劇『私の国』で魅力を回顧
次々とスターが現れ、ファンを楽しませてくれる韓国ドラマ。見るものを惹きつけて止まない容姿と演技力の高さを兼ね備えたニュースターたちの中で、今最も注目される俳優のひとりが、ウ・ドファンだろう。
現在、全世界で大ヒットしているNetflixの韓国ドラマ『ブラッドハウンド』で主演のウ・ドファンは今や時の人だ。筋骨隆々に鍛え上げた体で見せるボクシングシーンは迫力満点。だが、闘いを離れると眼光鋭い目つきが一変、純朴で母親思いの優しき青年というギャップある役どころで魅力を炸裂させている。
そんな彼が出演している『私の国』のコンパクトBlu-ray BOXが8月23日(水)にリリースされる。高麗末期から朝鮮開国の激動期を舞台に、3人の若き男女の理想の“私の国”を目指す姿を壮大なスケールで描く物語。メインキャストのひとりを演じたウ・ドファンにとって初めての時代劇であり、野心を抱きながらも友情と信念の狭間で揺れる難役に挑んでいる。
朝鮮開国の激動の時代を描いた『私の国』
時は高麗末期の1338年。病弱な妹を抱えて貧しく暮らすソ・フィ(ヤン・セジョン)と、高官の息子に生まれながら母親が奴婢で庶子であるという理由で差別されてきたナム・ソノ(ウ・ドファン)は、幼い頃から無二の親友で互いに武芸の腕を磨く良きライバルだった。ある日、2人は街で役人に追われていたハン・ヒジェ(ソリョン)を救う。ヒジェはフィがかつて自分を救った武将ソ・ゴム(ユ・オソン)の息子だったことを知り、フィに宿縁を感じて惹かれていく。そんな中、武科の試験で首席合格をかけて対決したフィとソノ。フィが勝つが、ソノの父ナム・ジョン(アン・ネサン)の裏工作でソノが合格。父からフィを殺せと命じられたソノは、仕方なくフィを遼東征伐軍の先発隊として戦地に送る。地獄のような地で生き延び、功績を挙げたフィはリーダー的な存在になるが、司令官のイ・ソンゲ(キム・ヨンチョル)は、禑王の遼東征伐が無謀だったという大義名分を作るため、先発隊の生き残りを抹殺することに。刺殺隊長として送り込まれたソノはフィと運命的な再会を果たす。やがてイ・ソンゲが高麗の首都、開京を陥落させ、1392年、初代朝鮮の王となるが、国造りのため奔走した五男のイ・バンウォン(チャン・ヒョク)を嫌い、末息子で幼い庶子のバンソクを世子にしようと画策。フィとソノは、イ・ソンゲとバンウォンの親子の対立に巻き込まれていく……。
理想の“私の国”のため命を燃やす者たちを、ウ・ドファンら若きスターが熱演!
『龍の涙』『六龍が飛ぶ』『鄭道傳<チョン・ドジョン>』など、数々の人気作で描かれてきた朝鮮建国というドラマチックな時代を舞台にした本作。“遼東征伐”や“威化島回軍”、“王子の乱”など歴史的事件を軸に、理想の国を目指す3人の若者たちの奮闘と友情、そしてラブストーリーが熱く切なく描き出される。
一番の見どころは、若手俳優たちの顔ぶれだ。まず弓の名手で武芸に秀でた主人公のフィを演じるのは、ヤン・セジョン。現在Disney+で話題を集めている医療ドラマ『浪漫ドクター キム・サブ』でデビューを飾り『師任堂(サイムダン)、色の日記』を経て、『愛の温度』では主演を務め、瞬く間にトップスターに。本作では唯一の家族である妹ヨンを養うために武官を目指すが、思いがけず過酷な運命に翻弄されていく。どんな時も己の信念を貫き、妥協しないことから茨の道を行くことにもなるという役どころ。
一方、フィの親友ソノを演じるのがウ・ドファンだ。前述した通り、現在『ブラッドハウンド』で世界中から熱い視線を浴びている彼だが、これまで実に多彩なキャラクターを演じてきた。映画「ディヴァイン・フューリー/使者」ではパク・ソジュン演じる司祭を翻弄する冷酷な悪役を熱演。かと思えば、パラレルワールドを舞台にしたイ・ミンホ主演のラブロマンス『ザ・キング:永遠の君主』では皇帝の凄腕護衛官と、陽気でお人好しな青年という全く真逆のキャラクターを演じ分け、主役を食うほどの人気を集めた。本作では世間からも父親からも蔑まれてきたことから、武官になって周囲を見返し、将軍イ・ソンゲの右腕となって国を変えようという野心を抱く。そのために無二の親友のフィと袂を分かつことになるが、フィがそうであるようにソノも戦いの最中でもフィを思い、彼の窮地を救ってしまう。劇中、「フィが太陽ならば、ソノは月」というセリフで2人の関係性が語られるところがあるが、ウ・ドファンは深い苦悩と葛藤を抱え、冷酷になろうともなりきれないソノを見事に演じ、彼らの美しき友情には心を揺さぶられる。
そんな彼らと出会うヒロインのヒジェ役にはAOAのソリョン。近年は『昼と夜』で名優ナムグン・ミンと共演し、そして近作『なにもしたくない~立ち止まって、恋をして~』ではイム・シワンとW主演するなどアイドルから女優へと躍進中。本作では妓楼で王族や官僚たちの情報や動きを探りながら、彼女なりに世の中を変えようと奔走するうちに、賢く強い女性へと成長していく。フィとの恋模様の行方も気になるところ。
若手たちの脇を固める時代劇常連のベテラン俳優たちにも注目したい。朝鮮王朝の初代王になるイ・ソンゲを貫禄たっぷりに演じたのは、キム・ヨンチョル。イ・パンウォン役のチャン・ヒョクは、得意のアクションで抜群の存在感を発揮する一方、新たな国を父王イ・ソンゲの意のままにさせまいと反乱を起こすまでの心の変遷を丁寧に演じている。そして、ソノの父ナム・ジョン役にはアン・ネサン。現代劇から『太陽を抱く月』や『雲が描いた月明り』といった時代劇まで数々の作品で知られる名脇役だが、本作ではフィを不幸のどん底に落としただけでなく、自分の保身のためなら他人はもちろん、息子の命すらも見捨てるという冷酷極まりない男に徹し、建国に賭ける男の非情さを体現している。
製作費200億ウォン超、約9ヵ月もの撮影期間をかけて朝鮮建国史を映像化したというだけあって、壮大なスケールに圧倒。慶尚北道の一本橋や盤谷池、忠清北道のスオク滝など韓国各地の自然豊かな風景を臨場感あふれるカメラワークでとらえた映像美は魅力たっぷり。史実とフィクションを織り交ぜた物語だが、史実には記されなかったこんな若者たちが建国に命を捧げたのかもしれないと、思いを馳せながらじっくりと楽しんでみたい。
文=前田かおり 制作=キネマ旬報社

『私の国 コンパクトBlu-ray&DVD BOX[スペシャルプライス版]』
●8月23日(水)Blu-ray&DVDリリース
Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら
●DVD BOX1・2:各5,500円(税込)
●Blu-ray BOX1・2:各6,600円(税込)
●出演:ヤン・セジョン、ウ・ドファン、ソリョン(AOA)、チャン・ヒョク
●演出:キム・ジンウォン
●脚本:チェ・スンデ
●発売・販売元:ポニーキャニオン
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記事提供元:キネマ旬報WEB
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