高1の15歳が衝撃の“ドラディス1位” ゴルフを始めた動機は黄金世代…佐藤涼音に感じた時の流れ【現地記者コラム】
日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の公式ホームページには様々なツアー情報がアップされている。トーナメント会場に行けないときでも毎試合、欠かさずにチェックしているのは「フェアウェイキープ率」「パーオン率」「パット数」「ドライビングディスタンス」などが分かるスタッツだ。データが成績に比例するときもあれば、そうでないときもある。そこがゴルフのおもしろいところで、話を聞いてみたい選手を決める指標にもなる。
先週の「宮里藍 サントリーレディス」は現地にいた。そして初日の競技終了後、いつものようにスタッツを確認して驚いた。平均ドライビングディスタンスの4位にいたのは、ルネサンス高1年の佐藤涼音(りの)だった。
計測ホールの2番パー4は252ヤードで10位、17番パー5は268ヤードで2位。平均は260.0ヤードで、1位の穴井詩(272,5ヤード)、2位の神谷そら(266.0ヤード)というツアー屈指の飛ばし屋には及ばなかったが、前週まで今季ドライビングディスタンス2位(258.21ヤード)で、この日は256.0ヤードで6位だった入谷響を超えたツアー出場2試合目の15歳に、興味ががぜん湧いた。
2日目のスタートホールの1番で初めてスイングを拝見した。身長165センチの細身の体に、年齢に相応した幼い顔立ち。見た目に飛ばし屋の雰囲気は感じなかったが、スイングは速い。ダウンスイングの力強さと、フォロースルーの大きさに、飛ばしの極意があるような気がした。プレーファストも二重丸。粗削りなところにも逆に魅力を感じた。
初日は「71」の1アンダーで37位、2日目はイーブンパーの「72」にまとめた。55位で予選も初めて突破。兵庫・高砂市出身の15歳は、最終順位が確定しないホールアウト直後は「大丈夫かな?」と不安そうだったが、すぐに笑顔を浮かべてハキハキと質問に答えてくれた。
9歳からゴルフを始めた動機がまずおもしろい。「ジャンクスポーツだったと思うけど、テレビに黄金世代の選手たちが出ていて、上田桃子選手が8億円を稼いだとか話していたんです。で、ママに『私もそのくらい稼いだら恩返しできるかなぁ』と聞いたら『そうやなぁ』って。じゃあプロゴルファーになるって決めたんです」。
2010年3月生まれ。渋野日向子が「全英」でメジャー制覇を果たした19年が、9歳のときだった。その年の8月、上田桃子は「CATレディース」で生涯獲得賞金8億円を突破。日本選手では不動裕理、横峯さくらに次いで3人目だった。バラエティ番組でビッグマネーに興味津々だった当時、まだプロになって間もなかった黄金世代に刺激を受け、9歳の少女は自分の人生を決めた。
2日目のドライビングディスタンスはさらに衝撃だった。平均269.0ヤードはプロを押しのけて堂々の1位。2番パー4では279ヤードをかっ飛ばした。JLPGAによると、17年からスタッツとして記録されているドライビングディスタンスで、アマチュアのラウンド別1位は今回で22度目だという。アマ時代はユウカ・サソウで出ていた笹生優花や、神谷も1位になったことがある。
風などの気象条件、ホールロケーションの違いはあるが、最長不倒は22年「フジサンケイレディス」の初日と2日目に記録した神谷の282.0ヤード。笹生は回数では最多の6度を誇り、アマチュア最後の年だった19年「サントリーレディス」では2日目から3日連続で1位となり、4日間平均264.25ヤードで、2位の葭葉ルミに8ヤード差をつけて大会ナンバーワンの飛ばし屋に輝いた。
佐藤は決勝ラウンドの2日間で「81」、「74」とスコアを崩した。トータル10オーバーの62位は最下位だったが、落ち込む様子はない。「最下位に終わったけど、多くのプロの方と一緒に回れて、すごくいい勉強ができた。宮里藍さんには『まず経験することが大切』と言われました。経験を経験で終わらせないように、頑張っていきたい」。9月からはタイにゴルフ留学する。単身での武者修行。「お金もかかるし、まずは1年間の予定です」と稼げるプロを目指す日々が続く。
当然ながら飛距離がゴルフのすべてではない。だが、より遠くに…はプロアマ問わずゴルファーすべての思いだろう。佐藤は17日から「日本女子アマ」に出場する。「自分の持っているすべてを出して、まずはアマチュアでトップになりたい」。黄金世代の多くは世界で活躍する宮里藍の姿に刺激されてゴルフを始めた。そして、その黄金世代に影響を受けた世代がツアーに出場する時代になった。佐藤たちの世代を見て、育つことになる令和生まれの世代たちが現れるころ女子ツアーはどうなっているのか。飛距離はどこまで伸びているのか。残念ながら、その世界を見ることはできないが、孫のような世代の選手たちがプロになるまでは、老骨にムチを打って見届けたいと思っている。(文・臼杵孝志)
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