あまりにも絶望的なラスト ブラッド・ピットを世界的スターに押し上げた衝撃作が驚異の画質に! 『セブン』
飯塚克味のホラー道 第123回『セブン』

© 2010 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
『羊たちの沈黙』(1991)や『ミザリー』(1990)が大ヒットし、サイコホラーがブームとなった1990年代。その流れを決定づけたのは、間違いなく1995年に公開された『セブン』だろう。7つの大罪をモチーフにした連続殺人事件が発生し、2人の刑事が捜査に当たっていく。とても人間の所業とは思えない残酷な犯行は、観客の脳裏に消そうにも消せない衝撃を与えた。
日本での公開は1996年1月27日。全米での大ヒットはニュースで流れてきており、人気急上昇中だったブラッド・ピットが主演という事もあって、大勢の女性客やカップル客が押し掛けてきた。自分はある日曜日に、メイン館だった日比谷スカラ座に向かったのだが、階段で次の回を待っていると、前の回を見終わって降りてくるカップルたちの顔色がどうにも冴えない。というか観るんじゃなかった、というような雰囲気が、どの人からも漂っていて、これはスゴイ映画なのではないかと確信を持って席につけた。案の定、期待以上の内容で、特にクライマックスからラストにかけての絶望感たるや、拡大公開されるようなメジャー映画では、絶対あり得ないもので、個人的には大満足できたのだ。
監督はデヴィッド・フィンチャー。今でこそ、数々の名作傑作を放った名匠となっているが、当時は酷評された『エイリアン3』(1992)の監督として、後ろ指を指されていた存在だ。見た人ならご存知だろうが、『エイリアン2』(1986)で生き延びた少女ニュートと、隊員のヒックスを、冒頭でいきなり死んでたことにし、主人公リプリーだけの話にしてしまったことで、『エイリアン2』ファンから一斉に非難を浴びていた。そんなフィンチャー監督作だが、アメリカでの異常な盛り上がりは日本にも伝染し、多くの観客が押し寄せた結果、不快な映画だが、見るべき一本という奇妙な評価を獲得する。
脚本はアンドリュー・ケヴィン・ウォーカーのオリジナルで、脚本がハリウッド中を回っていたところ、一番残酷なバージョンがフィンチャー監督に届き、『エイリアン3』の失敗で意気消沈していたところ、創作意欲を取り戻したとのことだ。映画はその通りの出来で、特に犯人のジョン・ドゥによる殺しの描写が秀逸だ。大食の罪で殺された男の部屋からは悪臭が漂ってきそうな汚しを行い、その他の殺人現場の表現にも妥協の跡は見られない。またジョン・ドゥの部屋に残された膨大なノートの書き込みも、一体スタッフのだれが書いたのか、狂気が散りばめられ圧倒される。ここ数年、テレビドラマの小道具でも細部にこだわった作品が多いが、そのきっかけは本作なのではないだろうか。

© 2010 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
俳優陣の演技も絶賛に値する。定年間近のサマセット刑事を演じたモーガン・フリーマン、ブラピ演じるミルズ刑事の妻トレーシー役のグウィネス・パルトロー、ジョン・ドゥ役のケヴィン・スペイシーなどなど、小さな役を演じた脇役陣まで、全員が作品のトーンを崩さず、映画史上最悪のクライマックスに向けて、一致団結しているように見える。
今回、リリースされた4K UHDにも触れておきたい。今年の1月にIMAXで久々のリバイバルが行われたが、どちらも長い期間をかけてデヴィッド・フィンチャー監督が修復してきたニューマスターを採用している。オリジナルのフィルムを8Kでスキャンし、細かなフレーム調整や、白く飛んでいた窓外の風景を直したり、引き画で、代役を使ったケヴィン・スペイシーのショットを本人の顔に貼りかえるなど、膨大な修正を敢行。映像だけでなく、音声も素材からブラッシュアップを行い、新たにリミックスを行っている。チャンネル数こそ、DVDの6.1ch、BDの7.1chから5.1chになってはいるが、サラウンドシステムやサウンドバーをお持ちの方なら、以前のソフトとは次元の異なる音だと理解してもらえるだろう。
今の時代にマッチしたクオリティへと驚異的な変貌を遂げた『セブン』。見直すなら、4K UHDで是非、そのすごさを味わってもらいたい。
関連記事:最新おすすめホラー映画はこれだ! 【飯塚克味のホラー道】

飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、WOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』の演出を担当した。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。

© 2010 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

© 2010 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

© 2010 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
【商品情報】
『セブン』デジタル配信中
4K ULTRA HD&ブルーレイセット7,480 円(税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
Seven© 1995 New Line Productions, Inc. All rights reserved.
© 2010 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
記事提供元:映画スクエア
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。