悔しさ、にじむ涙… 全米で見た竹田麗央、西郷真央、渋野日向子の“リアルな感情”【現地記者コラム】
竹田麗央、西郷真央、渋野日向子。先週の米国女子ツアー今季メジャー第2戦の「全米女子オープン」は、この3人が優勝争いに加わり大いに沸いた。多くのゴルフファンの記憶に残る熱戦だったに違いないが、筆者の胸に強く刻まれたのは、選手たちが見せた涙だった。
最終日、3人はそれぞれ逆転優勝を目指して懸命にプレーした。しかし、首位の背中を捉えることはできなかった。悔しさを胸に会場を後にすることとなったが、ラウンド後、ロープの外側ではさまざまな感情が交錯していた。
「シェブロン選手権」に続くメジャー2連勝が懸かった西郷は、唇を噛み続けた決勝ラウンドとなった。2日目終了時点で単独首位に立ち、連勝も現実味を帯びていたが、3日目に「75」と崩れ、3位に後退。「自分のゴルフが良くなかった」と、悔しさを押し殺しながら言葉を絞り出した。
迎えた最終日もオーバーパーのラウンドに終わった。しかし、3日目に見せた険しい表情とは違い、次を見据える余裕もあった。「決勝ラウンドはいいプレーができなかったけれど、あとちょっとしたことがかみ合えばもっといいプレーができると思うので、頑張りたい」。メジャー連勝はならなかったが、気持ちを切り替えて会場を後にした。
一方、2年連続2度目の出場となった竹田は、昨年とは異なる想いを抱いて大会を終えた。最終的に2位でフィニッシュしながらも、「今年は優勝できる自信があったので、悔しい」と語った表情には、満足感よりも悔しさが色濃く残った。
昨年は9位で終え、「楽しかった」と振り返っていたが、今年はさらに上の成績を残してなお気持ちは晴れなかった。ルーキーながら、3月の「ブルーベイLPGA」で早くも米ツアー通算2勝目を挙げ、日本ツアー年間女王の実力を証明するかのように、今季はすでにトップ10常連の活躍を見せている。メジャータイトル獲得は、もはや現実的なものともいえる。
その思いは、2日目にもすでに表れていた。最終18番ホールで痛恨のダブルボギー。初日に「68」をマークし、2日目も17番までアンダーでまとめていた矢先の“ダボ”だった。難しいセッティングの中で積み上げた貯金を失った直後、竹田はラウンド後のインタビューで、目に涙を浮かべながら懸命に言葉を紡いでいた。
その後も、母・哲子さんの肩に身を寄せ、静かに涙を流した。まだ2日目。それでもこみ上げた感情は、今年のメジャーに懸ける強い思いの裏返しだった。
渋野もまた、最終日を終え悔しさから涙を流したひとりだ。ラウンド後のテレビインタビューでは、最初こそ笑顔を見せていたが、解説を務めた有村智恵からのメッセージをインタビュアーが読み上げた瞬間、堰(せき)を切ったように感情があふれ出した。
「今のショットの状態で、この順位を誇らしく思います」。これは、有村からのメッセージの一部だ。初日から「ショットがよくない」と話していた渋野だったが、それでも優勝争いに食らいつき、粘りを見せた。しかし、最終日にはこの大会初のオーバーパー。2つ目のメジャータイトルは、あと一歩で手からこぼれた。
今季はトップ10入りすらなかった渋野にとって、このメジャー2戦目は勝負の舞台だった。それだけに、有村の言葉は大きな救いとなったに違いない。こらえていた感情がほどけ、こぼれた涙はウェアを濡らすほどだった。インタビューを終えた後の取材では、涙をぬぐい、気丈に笑顔を見せた。報道陣の問いに一つひとつ丁寧に答え、最後には「くよくよしている場合じゃない」と涙を乾かし、次戦「ショップライトLPGAクラシック」へ前を向いた。
最終日、3人は最後まで逆転優勝を目指して戦い抜いたが、首位の背中を捉えることはできなかった。試合後、さまざまな感情が交差する中、ロープの外側で前を向こうとするトッププロたちの姿を見た4日間でもあった。(文・齊藤啓介)
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