親指の力みこそミスの元凶! 『押さえ付ける』→『支える』グリップに変える方法を知っていますか?
ここ数年、記録的な暑さとなる夏の時期。昨年でツアーから撤退した上田桃子やルーキー・六車日那乃などを輩出する「チーム辻村」でも、選手たちに疲労の色が見えるという。しかし、選手にとって1日でもクラブを離すことは致命的。そんな状況で一体どんな練習をしているのか?
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ここ数年、夏に異常なほど暑い日が続いています。選手たちにも疲れの表情が見えますね。覇気が失せた顔、足を引きずりながらもたもたと歩く姿、背筋が歪んだアドレス……。荒川博先生(王貞治氏の師匠、辻村のゴルフの師匠でもある)は「心技体の土台は体。だから一番下にある」と言いましたが、体が疲れていれば、健全な心も優れた技もついてはきません。
疲れた体にとって大事なのは、何よりも栄養と休養。しかし、1年を通じて戦っているプロや、プロテストを控えた練習生にとって、クラブを握らない1日を作ることはとても勇気のいることです。「オンとオフを上手に切り替えろ」と、口で言うのは簡単ですが、練習をしたがる選手からクラブを取り上げることは、いかにコーチでもできません。
疲れたとき、チーム辻村では選手たちに、次のような練習をさせています。実に簡単な練習なので、読者の皆さんも試してみてください。まず左右両手の親指を浮かせ、8本の指でクラブを握らせます。指でピストルの形を作るように、右手の人差し指を浮かせても構いません。その握りで素振りをしたり、ボールを打ったりするだけです。普段よりもゆっくり、大きく振りましょう。ただ、それだけの練習です。
スイングにおいて疲れの表情は両手の親指に現れるといいます。前へ倣えの要領で、両手を真っすぐ伸ばしてください。その状態から親指だけを動かしてみましょう。すると腕のどの部分が反応しますか? おそらく親指側の、肩につながる上側が動くはずです。次に親指を立て、今度は他の4本の指を動かしてみましょう。するとどうでしょうか? 今度はワキの下につながる、腕の下側が反応するはずです。実はこの親指の動きが、スイングではイタズラをするのです。そしてこのイタズラは、体が疲れたときに顕著になるようです。
疲れると親指に力が入る理由は分かりません。ただ、ゴルフはメンタルのスポーツ。疲れて思うように体が動かないと、なんとかしようと焦りが出るのでしょう。その力みが親指に出るのではないでしょうか。すでに述べたように、親指の動きは腕の上側が反応します。ここが力めばヒジや肩にも力が入る、いわゆる肩ヒジが張った状態です。これでテークバックしてみてください。体がしっかり回らず、浅く低いトップになるはずです。
そこで両親指を浮かせて、他の8本でクラブを握ります。必然的にグリッププレッシャーが緩みます。これでテークバックしてみてください。思う存分、体が回ることが理解できるはずです。また、下からクラブを支えるように握ることで、クラブヘッドの重さも感じられるでしょう。打ち急ぐことなく、切り返しの間を作ってゆったり振れるのです。
また、親指に力が入らなければ、手でクラブを動かすことはできません。これが手上げ、手打ちの防止につながります。手でクラブを動かせなければ、体幹で動かすことを覚えます。また、スイングは下半身から始まり、上へ上へと捻れていく感覚も自然と身に付くことでしょう。親指を浮かせての素振り、ボール打ちは、このようにいいことだらけなのです。
さて、アマチュアの方を見ていると、クラブを上から押さえ付けるように握る人が多いこと多いこと。両足とクラブヘッドの3本足で立っているように見える人さえいます。人間の使ういろいろな道具……包丁、金づち、鍬、杵などなど……で、上から押さえ付けて持つ道具は少ないと思います。道具を使いこなすとは、その道具の重さをコントロールすることです。ゴルフのクラブも例外ではありません。クラブもまた上から押さえ付けるのではなく、下から支えるものなのです。
この感覚がなかなか分からない人は、親指で押さえ付けて握れないようにタオルをグリップに巻いて素振りするのもいいでしょう。また2本のクラブを握るのも効果的です。上から押さえ付けて握ることはできませんから、自然と下から支える握りになります。重さを感じることができると同時に、スイングにおいては特に重要なヒジを、柔らかく使える感覚も体感できるはずです。親指の力み。ややもすれば軽視して見落としがちですが、スイングにとっては重要なポイントなのです。
■辻村明志
つじむら・はるゆき/1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子、六車日那乃らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも教えている。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフの指導に取り入れている。元(はじめ)ビルコート所属。
※『アルバトロス・ビュー』849号より抜粋し、加筆・修正しています
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