木下稜介&阿久津未来也がドラコン選手の教えで覚醒! 「飛ばしに対する考え方が違っていた」「ゴルフ場の見え方が変わりましたね」
「日本プロゴルフ選手権」の練習日、ツアー通算3勝の木下稜介のそばには山崎泰宏の姿があった。山崎といえばドラコン競技で日本一に輝くこと11回、「通算336勝か337勝」を挙げているドラコン界のレジェンド。55歳になった今も、トラックマンでヘッドスピード61m/sを叩き出し、現役で活躍している。はたして木下との関係とは?
もともと知り合いだった2人。今年に入って木下が「ヘッドスピードを上げたくて、どうしたらいいですか?」と相談したのをきっかけに、この2月からコーチとして契約した。なぜプロドラコン選手と?と思うかもしれないが、山崎はかつて、石川遼や福田真未を教えていたこともあり、現在は阿久津未来也のコーチも務めている。また、片山晋呉や谷原秀人とも一緒に練習やトレーニングをするなど、ツアープロたちと交流があるのだ。
山崎に習って「飛ばしに対する考え方、力の出し方が自分の思っていることと違っていた」と木下はいう。それまではダウンスイングで腕を体に引きつけてタメを作り、インパクトに向かって一気に解放することでヘッドスピードが上がると考えていた。「それでは逆にスピードは出なくて、大きく遠心力で振った方が簡単にスピードが出るんです」。
ダウンスイングでは腕を引きつけるのではなく、むしろ遠くに下ろす。スイングの円弧を多くすることによって、大きな遠心力を使って体の回転でスピードを上げる。ほんの少しレッスンを受けただけで、「トラックマンでヘッドスピードは1m/sまではいかないですけど、0.8m/sくらいは常に違うのが何発も続いた」。
直線的に叩く動きから、体を連動させて大きく振る動きへ。50m/sだったヘッドスピードが一瞬にして50.8m/sをアベレージで叩き出し、3カ月経った現在は山崎曰く「51.5 m/sくらい出ている」。木下レベルのツアープロで、33歳という年齢を考えても、“1.5”はかなり大きな進化といっていい。一般的にヘッドスピードが1.5 m/s上がれば、飛距離は10ヤードほど伸びる。
さらに、腕を遠くに下ろすスイングには副産物もある。「以前よりも入射角が安定してフェースコントロールもしやすい。飛んで曲がりが少なくなりました」という。引きつけるスイングはどうしても「当て感に頼った」タイミング勝負で球がバラつきやすい。それを遠くに下ろすことでクラブの軌道が安定。インパクトゾーンが長くなり、振っても曲がりにくくなった。
ちなみに、ドラコン競技は「ただ遠くに飛ばすだけ」と思われがちだが、そもそもフェアウェイに置かないと計測すらされない。正確に打つ技術も必要なのだ。
実際のデータで見てみると、木下の昨年のドライビングディスタンスは286.1ヤードで、フェアウェイキープ率は60.4%。それが今年は296.2ヤードで60.2%と、フェアウェイキープ率を落とすことなく大きな飛距離アップを遂げている。成績で見ても、今季はここまで5試合に出場して8位、6位、14位、10位、3位とトップ15を外していない。パットさえ入れば、いつ勝ってもおかしくない状態にある。
山崎の指導を受けて成長している選手がもうひとり。ツアー未勝利の阿久津である。22年の賞金ランキングは49位だったが、山崎の見てもらうようになってから、23年は同27位、昨年は同21位とキャリアハイの成績を更新し続けている。昨年8月の「横浜ミナト Championship ~Fujiki Centennial~」では単独2位と、初優勝にあと一歩まで迫った。
阿久津自身が一番成長を感じているのはやはり飛距離。「山崎さんに教わる前は振っても280ヤード後半くらい。それが全米オープン予選では301ヤードいったんですよ。振ったら300ヤードいくっていう感覚に変わりました。280ヤードで抜けるラフが気になりだしている。ゴルフ場の見え方が変わりましたね」。
どうやってマン振りしてらいいのか分からない状態から「スピードの上げ方が体で分かってきた」とアップデート。22年のドライビングディスタンスは274.1ヤードでツアー全体82位。それが今年は286.2ヤードで73位と飛距離を伸ばしている。
阿久津はまた、他のコーチと山崎との違いについても触れる。「木下さんとも話をするんですけど、山崎さん自身ができるからより説得力があります」。確かに男子のツアープロよりも10m/s以上速く振れるコーチはいないだろう。子どもの頃からトップレベルで戦ってきた木下と阿久津が、山崎のスイングを見て聞いて気付いた飛ばしの本質。ドラコン選手とツアープロ、異色の組み合わせによる化学反応が今後も楽しみだ。
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<ゴルフ情報ALBA Net>
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