「一番近い存在の“仲間”」 性格真逆の岩井ツインズがプロの世界で見せてきた切磋琢磨
<リビエラマヤオープン 最終日◇25日◇エル・カマレオンGC(メキシコ)◇6583ヤード・パー72>
「とてもいい関係性だし、明愛が2位に入ったから次は私が頑張ろうと思えました」
これは米ツアー初優勝を挙げた直後、今季2位に2度なっている姉・明愛から受けた刺激について、現地メディアから聞かれた時の岩井千怜の答えだ。アマチュア時代から“岩井ツインズ”として注目を集めた2人は、まさに切磋琢磨を続けながら、世界最高峰の舞台で戦っている。
まだ埼玉栄高3年生だった2020年の「日本女子オープン」。この大舞台で力を発揮したのは14位で終えた姉だった。アマチュア選手の日本タイトルのひとつ、“日本女子オープン・ローアマ”を獲得。この時に明愛は、姉妹の性格について「妹は丁寧で几帳面。私は大雑把と周りからは言われます」と笑いながら明かしている。
千怜もプロテスト受験前の21年「パナソニックオープンレディース」の会場で、姉妹のプレースタイルの違いについて聞かれると「私はパー5もしっかり刻んで、上りのラインにつけて入れるタイプ。姉は常に2オンを狙っているイメージですね」と答えている。“イケイケ”の姉と“慎重派”の妹。そんな真逆のイメージもあった。
ともにコロナ禍で開催時期がずれた同年6月のプロテストで一発合格。そして先に、プロで結果を出したのが千怜だった。テスト合格から約2カ月後に出場した国内下部、ステップ・アップ・ツアーの「カストロールレディース」でプロ初優勝。ただ、この時は2週後に行われた同ツアーの「山陽新聞レディースカップ」で明愛が優勝し、“双子2戦連続勝利”を成し遂げている。
レギュラーツアーでも先に結果を残したのは妹だった。翌22年8月の「NEC軽井沢72ゴルフ」で初優勝。さらに翌週の「CAT Ladies」で2週連続優勝をつかんだ。一方、姉のレギュラーツアー初勝利は23年4月の「KKT杯バンテリンレディス」まで待たなければならなかった。
この時、明愛は周囲から『早く勝って欲しい』という言葉を耳にすることが多かったと明かしたが、“比較”されることについて「嫌になったことはなかったですね」とあっけらかんと答えた。そして「一番近い存在の“仲間”。双子なので、片割れが頑張っていると自分も頑張ろうと思える」と胸の内を明かしている。この時は、優勝の瞬間、妹が姉のもとに駆け寄りハグ。「自分のことのようにうれしいです」と祝福した。
国内ツアーで姉は通算6勝、妹は通算8勝とそれぞれが結果を残している。今年から新天地として選んだ米国でも先に勝利を挙げたのは妹だったが、その背景には今年2月の「ホンダLPGAタイランド」、そして4月の「JMイーグルLA選手権」で派手な優勝争いの末2位になった姉の姿が力になっている。
かつて、“イケイケ派”、“慎重派”と正反対だった2人のプレースタイルだが、プロ入り後は大きな変化も生じている。23年の「RKB×三井松島レディス」。この大会で明愛、千怜に山下美夢有を加えたツアー史上初の“双子プレーオフ”が行われたが、千怜はパー5でのプレーオフ2ホール目に、練習でも試したことのない“直ドラ”を敢行した。姉がよく用いる戦術だったが、「最初は3番ウッドで打とうと思ったけど、明愛のプレーを見て『ドライバーもありだな』って思いました。ファンを楽しませたくて」とニヤリ。結果的にこのホールで決着をつけ、千怜が優勝をつかみとっている。
姉妹の“刺激”は、さまざまな形であらわれる。今ではこの直ドラは妹の代名詞でもある。後続に圧倒的な差をつけて米ツアー初優勝をつかんだ試合でも、千怜のゴルフは間違いなく“イケイケ”だった。この光景が、今度は姉の背中を押すことになるはずだ。
<ゴルフ情報ALBA Net>
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