不動裕理のスイングは「世界でも5本の指に入るリズムの良さ」 身に付けるにはドライバーを打って着弾するまでに20球連続打ち!?
昨年でツアーから撤退した上田桃子やルーキー・六車日那乃などを輩出する「チーム辻村」を率いるプロコーチの辻村明志氏。トーナメントの練習場に行った際、必ず姿を探し観察するのが不動裕理だという。その理由とは?
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動物としての人間(ホモ・サピエンス)の特徴は直立二足歩行と、あらゆる生物の中で体重比で最も大きな脳を持つことだそうです。直立二足歩行で手先が器用になり、それに伴ってさらに大きな脳を持つようになりました。その結果生まれたのが、ゴルフという素晴らしいスポーツであることは言うまでもありません。
その意味でゴルフにおいても、脳を使うこと、つまり考えることはとても重要です。実際、六車やプロを目指す若い選手たちに「もっと考えろ」「もっと頭を使え」といった言葉を使っていることに気付かされます。
ただ、同じ脳を使うにも“考える”と“迷う”は違います。そしてプロアマ問わず、考えているようで実は迷っているゴルファーが多いと感じるのは、果たしてボクだけでしょうか。トーナメントの練習場に行くと、昔から必ず姿を探す選手がいます。不動(裕理)プロです。最近は出場する試合が限られていますが、機会があれば若い選手たちには必ず見るように薦めています。
その理由は何かといえば、断トツにリズムがいいからです。世界の一流プロに共通するのはリズムがいい、ということです。全番手で素早く心地よい独自のリズムを持っており、それが一定しています。不動さんのリズムの良さは、世界でも5本の指に入るのではないかと思うほどです。
では、そのリズムはどこで生まれるのでしょうか? 考えに考え抜いた先にある“考えない”状態、いわゆる“無の境地”がそれを生み出すと思います。そこで、ドライバーかPWで打って、その打ったボールが着弾するまでに20球を連続で打つ練習をさせています。特に調子を落としている選手、あるいは明らかに悩んでいる選手には、この練習をさせます。ボールがどこに飛ぼうがお構いなしです。
傍から見れば雑で適当な練習に見えるかも知れません。ただ、定期的にこの練習を挟み込むことで、リズムは確実に良くなります。考えることを否定しているわけではありません。実際、練習生はもとよりプロの中にも、考える習慣がなくて苦しんでいる選手はたくさんいます。ただ、すでに述べましたが、“考える”と“迷う”は違います。時に“考え過ぎ”が迷いを生むのであれば、読者の皆さんもいま紹介した練習を取り入れたらいかがでしょうか。
もうひとつ付け加えれば、ラウンドで少なくともボールを打つ瞬間は、何も考えない状態がふさわしいでしょう。それまでは、あれこれ考えても構いません。しかし、ボールを打つ瞬間だけは“無”になる癖を作ることを心がけましょう。では、どうやって無になるかと言えば、考えて考えて考え抜くこと以外にないのかもしれません。言い換えれば、これが準備です。
準備ができれば、次に生まれるのが覚悟です。ゴルフはメンタルのスポーツ。競技時間も長いために迷いも不安も焦りも欲も生じるでしょう。しかし、こう打つんだという覚悟があれば、このような負の思いはかき消されます。決断が早いゴルファーは上達も早いものです。ボクは選手たちに、決断は7秒以内にしなさい、と教えています。ボール後方から目標や打ち方を確認して、歩き出してから7秒以内に打つのです。これはアイアンもパターもすべて同じ。これを心がけるだけで、悩まなくなりショットも良くなるはずです。
最近読んだある本に、「脳はそもそもプラス思考に作られている」と書かれていました。なるほど、と思いました。幸せになろう、豊かになろう、楽しもう……それが脳の役割です。次はどんなボールを打とうとワクワクする……それが健康なゴルフ脳ではないでしょうか。
■辻村明志
つじむら・はるゆき/1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子、六車日那乃らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも教えている。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフの指導に取り入れている。元(はじめ)ビルコート所属。
※『アルバトロス・ビュー』848号より抜粋し、加筆・修正しています
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