「横浜家系ラーメン・壱角家」成功の秘訣は“一等地”へのこだわり:読んで分かる「カンブリア宮殿」
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イチオシスト:イチオシ編集部 旬ニュース担当
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家系ラーメンで128店舗~「気づいたら店に来ている」
東京・渋谷のセンター街にある横浜家系ラーメンの「壱角屋」渋谷センター街店。
看板商品はチャーシュー、味玉など人気のトッピングを乗せた「MAXラーメン」(1340円、価格は店舗により異なる)。スープは濃厚な豚骨醤油、麺はコシの強い中太麺だ。

【動画】「横浜家系ラーメン・壱角家」成功の秘訣は“一等地”へのこだわり
「ベジタブル家系」(並・940円、価格は店舗により異なる)は野菜のトッピングが山盛りで、麺がなくスープの中は野菜だけだ。糖質を気にする健康志向の客に受けている。

実は今、ラーメン店に逆風が吹いていて、2024年、倒産数は過去最多を記録した。だが「壱角屋」はここ10年で128店舗を全国展開(※2025年2月時点)と、急成長している。
横浜の個人店が発祥とされる家系ラーメンの最大の特徴は、豚骨などを数時間かけて煮込み、醤油と合わせたスープ。この一杯を職人が手間も時間もかけて作る。
「壱角屋」のスープの秘密は濃厚な豚骨スープの素にある。スープの素は提携する家系ラーメンの店から仕入れたもの。これを寸胴のお湯に溶かす。そこに豚の背脂を合わせて煮込むだけ。個人店では数時間かかるスープ作りが30分で完成する。調理工程は全店でマニュアル化してあるから職人でなくてもできる。
常連客は「どこに行っても同じ味。いつ食べてもおいしい。気づいたら来てる」と言う。
そんな「壱角家」を生み出したのが東京・新宿のガーデン。2003年に外食事業に参入し、社員約300人、売上高は約153億円。
「外食企業って面白いんだな、働いてみようかなと思える企業をつくっていきたい」と言うのは社長・川島賢(54)。業績不振だった11の外食ブランドを引き継ぎ、ステーキの「鉄板王国」や寿司の「プレミアム海王」などを繁盛店に育て上げた再生請負人だ。
「今まで外食企業がやらなかったことやできなかったことをどんどんやっていく。やはり付加価値が必要なのです」(川島)
あの牛丼店が人気ラーメン店に~一等地にこだわり入り口も工夫
〇ガーデン流繁盛店のつくり方1~一等地の「居抜き」を狙え
「焼き牛丼」を看板に2011年に1号店をオープンした「東京チカラめし」。最盛期は130店舗以上を展開したが、急拡大で店舗の運営が追いつかず、赤字の店が続出した。
するとガーデンは2014年、一等地にある63店舗を、内装・設備はそのままの居抜きで買収。ラーメン業態に転換し「壱角家」を立ち上げた。これが一等地居抜き戦略だ。
店舗開発部長・木村直樹が降り立ったのはラーメン激戦区の池袋。
「物件は1週間くらい来ないと状況が変わっていることがある。先週まで募集してなかったけど『昨日から募集開始』などが結構あります」(木村)

情報は足で稼ぐ。狙い目の物件は「視認性。各方面から目立つところ。例えば街路樹がないところとか、角地など間口が大きく取れるところ」(木村)だという。
池袋に来た一番の目的は地元の不動産会社。まだ表に出してない情報を聞き出そうというのだ。各所でつかんだ物件情報はすぐさま本社で共有。まさにスピード勝負の情報戦だ。
「情報が表に出た一等地は、他社が手を上げるので家賃がつり上がる。アナログで足で稼いだり、表に出ていないところを日々狙っていく」(川島)
ただし一等地でも一癖ある物件が。例えば新宿西口店。
「ここも大手外食チェーンが入るがどこも続かない。『壱角家』になって高い収益を出すことに成功しています」(川島)
人通りが速すぎて客が足を止めず、大手が入ってもすぐに撤退。それを「壱角家」は、繁盛店へと生まれ変わらせた。カギはその店の奥にもある「入り口」だった。
「入り口が2つあって、以前は従業員の通用口で入り口としては全く使われていなかった。ただこちら側に『思い出横丁』という飲み屋街がありまして」(川島)
店の裏口側は、「思い出横丁」という飲み屋街。昭和レトロな雰囲気が楽しめると、近年は外国人観光客にも人気のスポットになっている。裏の入り口でそうした客も取り込んだのだ。
「当社は一等地をベースに利益を出しやすいところを確保するが、プラスアルファこういった一つ一つの工夫を積み重ねていくことで、より売り上げと利益を出せるようにしたい」(川島)
定番うどんが大胆に進化~女性客から異業種まで魅了
〇ガーデン流繁盛店のつくり方2~「定番」を進化させる!
「壱角家」に次いでガーデンが仕掛けた繁盛店が「山下本気うどん」。18店舗を展開する讃岐うどんのブランドだ。
讃岐うどんも強力なライバルが多く、おいしいだけでは客は来てくれない。そこでガーデンが仕掛けたのが「白い明太チーズクリームうどん」(1480円、※価格は店舗により異なる)。

見た目はまるでスイーツのよう。ホイップクリームの下には明太子が絡んだうどんが。濃厚なクリームとうどんの絶妙なハーモニーに女性客が飛びついた。

見た目のインパクトで多くの客が写真を撮る。これがSNSでバズり、広く知られるようになった。
「山下本気うどん」は2017年まで個人店だったが、ガーデンが譲り受け、生まれ変わらせた。決め手は、うどんの新しい食べ方だった。
「他のチェーン店と比べて麺のコシもあり、非常においしいという第一印象がありました。しっかりとしたうどんにプラスアルファがあれば、必ずヒットすると思ったんです」(川島)
横浜市にある「ファンケル」本社。この日、開発していたコラボ商品はケールを使ったうどん。試食した流通営業本部・月田一輝さんは「すごく濃厚でおいしい」と言う。

「僕たちはこれからトップを目指す。うちは一等地で目立つようにしてブランド力を高めていく。『壱角家』『山下本気うどん』を誰もが知っているブランドにします」(川島)
人気ラーメン店誕生秘話~赤字チェーン買収で大勝負
「(ラーメンは以前は)そんなに好きじゃなかった。やっぱり自分でやり始めると好きになりますよね」(川島)
そんな川島はさいたま市のカラオケ店にビジネスの原点があるという。
「そもそも当社はカラオケ店から事業をスタート。2017年に大手に売却しました」(川島)
川島は1971年、東京生まれ。都立の商業高校に進学するが、勉強には興味を持てず、アルバイトに明け暮れる日々を送った。卒業後は職を転々としながら知り合いの事業を手伝うなど、いわゆるフリーターだ。
「もともと他人に使われるのが嫌いというか、自分で思った通りに『ここをこうすればもっと良くなるのに』と思いながらアルバイトをしていた。どこかの社員になろうという選択肢自体がなかったんです」(川島)
そんなある日、知人のつてで譲り受けたのが今にも潰れそうなカラオケ店。家具やカラオケ機材もそのまま使っていいという。これが居抜きビジネスの始まり。そこで平日の昼間は部屋代なしでドリンク代のみ、というカラオケ店にした。
これが大当たりし、半年後には月に1000万円を売り上げる人気店となった。
その後も川島は赤字のカラオケ店を居抜きで買い取り、10店舗を再生。年商は10億円にもなった。すると次第に野心が芽生えてきた。
「居抜きではない新しい物件で出店してみたいという話になって1~2億円、投資をしてしまったんです」(川島)
居抜きには必要ない内装や備品といった初期投資に金がかかったことで、たちまち倒産の危機に追い込まれた。
「教訓を得て、一回立ち戻ろうと。僕たちのビジネスモデルは投資しなくて増やしてきたカラオケ店だから、そこに立ち戻ってもう一度やろうと」(川島)
ピンチを脱した川島のもとに2003年、ステーキの「鉄板王国」の再建依頼があった。都内を中心に7店舗を展開するステーキ店だ。これが飲食業参入のきっかけとなった。
これを成功させた川島に2014年、飛び込んできたのが「東京チカラめし」の買収話だった。取引先の銀行から猛反対されるが、8000万円の赤字を抱える「東京チカラめし」の63店舗を買収し、ラーメン店に変えた。
「(牛丼だと)大手には勝てない。牛丼市場は長い間トップ3は変わらない。ラーメンというのは牛丼市場やハンバーガーの市場と違って非常に強いトップがいない。展開の余地があるのがラーメンなんです」(川島)
読みは当たって「壱角家」は大躍進を果たす。その象徴となる店が、2023年、新宿に誕生した新宿靖国通店。雑居ビルを一棟丸ごとラーメン店に変えた通称「壱角タワー」だ。

「僕はカラオケ事業から創業して、外食は途中から参入したので、外食の固定観念がない。でも客観的な目線で見られるので、『やってみないとわからないでしょ』というのを繰り返すだけ。そこがガーデンの強みだと考えています」(川島)
外食の常識に挑む仕事術~入社希望の続々のワケ
飲食業界はどこも人手不足。ガーデンは人材獲得のためさまざまな取り組みをしている。
埼玉・春日部市。「壱角家」春日部店のオーナー・王桜さんは、ガーデンのアルバイト店員だったが、その後正社員となり、ある制度を使ってこの店のオーナーになった。ガーデンから店舗や設備などを借りることができる、独立支援制度だ。
「投資もほぼゼロ。既存店をもらえるので。店の経営状況もオーナーになる前からわかる。成功できると思いました」(王さん)
同業他社からの転職組も集まってくる。2017年に入社した第二営業本部長・福島靖宏もその一人だ。
福島がやってきたのはガーデンが展開する東京・江東区の回転寿司店「SUSHI PREMIUM海王」ダイバーシティ東京プラザ店。春の新メニューを試食するためだ。大手の中華料理チェーンで事業戦略を担当していたが、転職の決め手となったのは働く環境の良さだった。
「外食業界のサービス残業や休日出勤を断ち切る仕組みがあります」(福島)
「どうしても飲食業界というと週末や繁忙期に休みが取りにくいイメージがあると思いますが。冬季休暇、夏季休暇もあり、気兼ねなく取っています」(寿司事業部長・種石多喜人)
新卒生からも選ばれる企業になっている。2024年の春は20人が入社した。
入社1年目の社員からは「今まで飲食業界は待遇が悪いイメージが強かったのですが、思ったより働きやすい」「独立を目標としていたので、任されるくらいの人間になりたい」といった声が聞けた。
※価格は放送時の金額です。
~村上龍の編集後記~
「客を大切にするのではなく、まずは自分を大切に」という。「客を大切に」と言っている企業が多いが、はっきり言ってきれい事。給料が安く、環境もよくない中で、本当に客を大切にできるのか。昨今、SDGsなど社会的意義が声高に叫ばれているが、そのような「いいこと」をするのは利益が出てから。自分は外食事業に生かされている。20歳のとき、好きな女の子が留学した。引き留めたかったけどできなかった。後日、手紙が来た。「もっと広い世界を見たほうがいいんじゃないの」今、ふと考える。自分は広い世界を見てるかな。
<出演者略歴>
川島賢(かわしま・さとし)1971年、東京都生まれ。1989年、都立芝商業高校卒業。フリーターを経てカラオケ店の経営を手掛ける。2015年、ガーデン設立、社長就任。
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記事提供元:テレ東プラス
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