元サッカー日本代表・中村俊輔氏、挫折時に一筋の光となった“師匠”の存在「必死にボールを受けて練習している姿を見たら、俺が手なんか抜けない」

(C)Takuya Sugiyama/Sports Graphic Number

「NumberTV」第15回は中村俊輔氏　

苦難を乗り越えてきたプロアスリート本人が、個々の競技人生を変えた「最大の挫折」と「復活」の物語を自らの言葉で語るリアルドキュメント「NumberTV」(全24回)の第15回が、2月27日にLeminoで配信された。第15回は、サッカーの元日本代表選手として日本にとどまらず世界を魅了したファンタジスタ・中村俊輔氏が、輝かしいサッカー人生の裏にある“挫折”を語った。(以下、ネタバレを含みます)

史上初のJリーグMVPを2度獲得

「NumberTV」は、俳優の福士蒼汰がナビゲーターを務め、トップアスリートたちの輝かしい「現在」とそれに至るまでの「挫折」をアスリート本人が語るリアルドキュメンタリー番組。スポーツ総合雑誌「Sports Graphic Number」とLeminoの共同プロジェクトによって誕生した。

第15回に登場したのは、サッカー日本代表の「背番号10」として2度のワールドカップに出場、史上初めてJリーグMVPを2度獲得、UEFAチャンピオンズリーグでは日本人初の得点をフリーキックで上げるなど、“天才レフティー”として活躍した中村氏。

(C)Takuya Sugiyama/Sports Graphic Number

中村俊輔氏が挫折を語った　

3歳からサッカーを始めた中村氏は、中学で日産FCのジュニアユースへ。中学2年時に試合に出られていたにもかかわらず、中学3年のときに試合に出られなくなったという初めての挫折を振り返り、もがき、自分で考え、改善していくことを身に付けたことを告白する。

中村氏は「中3で157cm。小さかったんです。成長期で周りは180cmくらいあるので、フィジカルとかサッカーのスピードに付いていけなくなっちゃったんです。だけど、自分はそれに気が付かなかった」と回顧し、「今考えたら、挫折した後に自分で何かアクションを起こして…っていうのを覚えたのはそこかもしれないです」と語る。

そんな中村氏が、“最大の挫折”として挙げたのはワールドカップ南アフリカ大会。日本代表の中心選手として予選を戦いながらも、左足首のけがをきっかけにコンディションを落とし、さらに本大会直前の戦術変更によって、エースからサブへとレギュラーを外された。

中村氏は「他の選手もチラチラ見ますよね。『俊さん、怒ってないかな』とか。全然そんなことないんですけど(苦笑)。メディアの方もだんだん聞かなくなってくるし。そういう孤独はありますよね。それを『いつも通りだよ』って振る舞うのもキツかったです」と吐露。

(C)Takuya Sugiyama/Sports Graphic Number

中村俊輔氏の“師匠”とは　

中村氏「チームってこうやってバランスを取っているんだなって」

そんな苦しい状況の中、ゴールキーパー・川口能活氏の存在が一筋の光となったという。川口氏は、中村氏にとって横浜マリノス入団1年目から日本代表でもチームメートとして苦楽を共にした“師匠”と呼べる存在で、南アフリカ大会では第3ゴールキーパーとして参加していた。川口氏は自身も出場機会が極めて少ない立場でありながら中村氏の心境を慮って、決勝トーナメント進出を決めた試合の後に中村氏の部屋を訪ねたそう。

その時について中村氏は「(レギュラーから外されて)結構期間がたっているんですけど(部屋に)来てくださって、『厳しいけど、(平静を)装ってでもやろうな』と。悔しい気持ちがあって心底から楽しくサッカーできないかもしれないけど、チームのために装ってでもやろうって約束しました」と打ち明け、「その時に、『能活さんもつらいんだな』って。長い期間それをやっている、そのメンタリティーはすごいし、(試合に)出ている選手は感謝しなくてはいけない。チームってこうやってバランスを取っているんだなっていうのは、その時に学びました」と述懐。

さらに、「能活さんのような僕にとって“師匠”みたいな方が必死にボールを受けて練習している姿を見たら、逆に俺が手なんか抜けないし、俺が手を抜けなかったら、岡崎(慎司)が『バンバン、シュート打ちましょう』って言うし、森本(貴幸)が『一緒にシュート打ちませんか？』って言って、楢さん(楢崎正剛)と能活さんに向かって打っている。これを見ていたら、スタメンのやつらは『もっとやんなきゃ』って思う。そうやってチームは出来ていく。それって当たり前のことじゃない。そういう伝統みたいなものが今もつながっていればなと思います」と、チーム作りについて語った。

【制作・編集：WEBザテレビジョン編集部】

(C)Takuya Sugiyama/Sports Graphic Number

中村俊輔氏