今季のJリーグ序盤戦を福西崇史はどう分析する?「広島の中島洋太朗は18歳としてはちょっと別格。どこまで伸びるか楽しみ」
Jリーグ序盤戦をフカボリ!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。
そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!
第121回のテーマはJリーグ序盤戦について。Jリーグの2025年シーズンが始まって5試合を消化した。今季も序盤から団子状態の様相で、どこが勝つかまったくわからない。そんな拮抗した今季の序盤戦を福西崇史が解説する。
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■クラブ初の開幕3連勝でスタートダッシュに成功した湘南ベルマーレ――今季のJリーグも初昇格のファジアーノ岡山がすでに2勝しているなど、どこが勝つかわからない拮抗したシーズンになっています。シーズンスタートはどのように見ていますか?
福西 今シーズンも拮抗するだろうとは思っていましたが、それにしてもどこが勝つかわからないですよね。岡山は序盤で2勝できたことはチームにとって非常に自信になると思います。解説で行かせていただきましたがスタジアムは良いところにあるし、初のJ1ということで岡山の街がものすごく盛り上がっていましたね。
それからオープニングゲームの大阪ダービーは5-2でセレッソ大阪の大勝でしたけど、どっちも序盤から勢いに乗っていくんじゃないかと感じましたが、いまいち乗れていなくて、本当にわからないなと思いました。
各クラブの状況が少しずつ見えてきてはいますが、柏レイソルのようにリカルド・ロドリゲス新監督がハマって序盤で勢いに乗れたチームがあったり、浦和レッズのように大型補強してもチームとしてハマらなかったり。でもまだまだここから。浦和も今は調子が悪くても選手がハマるようになれば一気に連勝することだってありますから。あのメンバーなので、それだけのポテンシャルは当然ありますよね。
――監督が変わって変化のあったクラブが結構躍進した序盤という一方で、積み上げてきたクラブも結果を出していますよね。
福西 そういった意味ではやはりサンフレッチェ広島の安定感はさすがですね。また、昇格組ですけど秋葉忠宏監督で継続してやってきた清水エスパルスも良いスタートを切れたと思います。
あとはなんと言っても湘南ベルマーレでしょう。開幕2連勝が27年ぶりと騒がれましたけど、クラブ初の3連勝を記録しましたからね。今年は開幕ダッシュに成功して、例年とは違う湘南が見ることができるんじゃないかと、ここからのシーズンも楽しみです。
■昨季6位・東京ヴェルディが苦戦する理由――昨季6位と躍進した東京ヴェルディが序盤でかなり苦戦を強いられています。
福西 昨季はどっちに転ぶかわからない僅差の試合で、勝ちを拾えている部分がありましたが、この序盤はそれが負けのほうに転がってしまっていますよね。それから東京Vは昨季の戦力を維持できたことはすごく評価できる一方で、さらに変化や上積みというところまではできませんでした。
城福浩監督も今年4年目で、そこでチームに変化がないとモチベーションや熱を保つのは簡単な仕事ではないですよね。まだまだシーズンはここからですが、城福監督がどうマネジメントし、チームをもう一度引き上げるのかは注目したいです。
――選手の入れ替わりの変化という意味では、積極的な補強をした名古屋グランパスがかなり苦戦しています。
福西 そこがチームは生き物という難しさですよね。前述した浦和もそうですが、変化を加えてもそれがチームとしてまとまってないとそのポテンシャルは引き出せない。とくに序盤はそのチームとしての完成度の差が出やすく、まだまとまっていないチームはどうしても苦戦してしまいますよね。
■鹿島アントラーズの新2トップの関係性――その変化という意味で、広島は非常にうまくチームをアップデートしました。
福西 ジャーメイン良と田中聡という2人が、すでにチームの軸と言えるほど活躍していますね。それから中村草太や中島洋太朗という若手2人も強烈なインパクトがあります。とくに中島は18歳としてはちょっと別格ですね。すでに川辺駿とどっちが先発で出ても遜色がないレベルだと思います。U-20代表の試合でもかなり余裕を持ってプレーしていて、どこまで伸びていくのか楽しみな1人です。
――変化にうまく乗れたチームとしては、鹿島アントラーズも3連勝を記録して、ホームでの無敗記録を25試合に伸ばして、Jリーグ記録タイに並びました。
福西 鹿島は少しずつ噛み合っていくのかなと思いましたが、序盤で3連勝と勢いに乗れましたね。とくに鈴木優磨とレオ・セアラという新2トップの関係性がよく、チームを引っ張っていますよね。
第2節・東京V戦でレオ・セアラのハットトリックがかかる場面でPKを鈴木に譲ったシーンは、2人の良い関係性をよく表していました。あれだけの良い関係があれば、より良いコンビネーションは生まれてくるだろうし、J屈指の2トップになるでしょうね。鹿島は他にも良い選手がしっかりと揃っているので、ここからさらに伸びてくると思います。
■優勝候補・サンフレッチェ広島の懸念はケガ――この序盤で見えた懸念要素というのはありました?
福西 清水は良いスタートは切れましたが、ここから研究されたときにどうなるかは気になりますね。乾貴士の影響力は絶大で、彼を抑えられたときにそれを補うだけのなにかがなければ苦戦すると思います。そのチームとしての厚みがあるかどうかは懸念材料と言えるかもしれないですね。
あと強いて言えば、広島の選手層ですね。強力な3バックは広島の強さを支える屋台骨ですが、塩谷司、荒木隼人、佐々木翔の3人に代わる選手が出てきていない。中野就斗が一部代わりができますが、それでもこの3人の誰かがケガで離脱することがあれば、チームのバランスが崩れてしまう懸念はありますよね。
トルガイ・アルスランが長期離脱のケガをしてしまったのが非常に残念です。ケガに関してはヴィッセル神戸もかなり厳しい状況ですが、ACLによる過密日程がかなり負担にはなっていると思うので、これ以上のケガ人が出ないように乗り切れればいいなと思います。
――序盤でケガ人が出てしまったチームは他にもあるので心配ですね。
福西 心配ですね。ここから夏頃までに各チーム色々と変化があると思うので、序盤でつまずいたチームが浮上する可能性は十分にあるし、今調子の良いチームが続かないこともあります。この序盤を経て、各チームにどんな変化があるのか楽しみですね。
構成/篠 幸彦 撮影/鈴木大喜
記事提供元:週プレNEWS
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