【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】開幕戦はハミルトン、ノリス、フェルスタッペンが表彰台に上がってくれたら最高!
「僕はフェルスタッペン選手のことは嫌いじゃないですし、圧倒的な実力を誇る
今週末から、2025年のF1世界選手権が始動する。全24戦で争われるシーズン開幕戦の舞台は、オーストラリアのメルボルン(決勝3月16日)。翌週には上海で中国GPが開催され、いきなりアジアでの2連戦でスタートする。
そして4月4日~6日には春開催になった鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)での第3戦日本GPが行なわれる。現行のマシンレギュレーション最終年となる25年シーズンは大接戦が予想されているが、果たしてどのチームがスタートダッシュを決めるのか!?
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■順当な結果に終わったプレシーズンテスト2月下旬に3日間に渡って中東のバーレーンで開催されたプレシーズンテストは突然の停電があったり、マイクロバスがコースに侵入したり、思いもよらないアクシデントでセッションが何度か赤旗中断になっていました。
今シーズン、第4戦として開催予定のバーレーンGP(決勝4月13日)ですが、本番は照明でライトアップされたサーキットを舞台にしたナイトレースです。もしレース中に停電が起きていたらと思うとゾッとします。予期せぬハプニングを除けば、テストでは各チーム、大きなトラブルもなく順調に周回を重ねていました。
現行のマシンレギュレーションの最終年となるため、マシンとパワーユニット(PU)は熟成が進んで信頼性が向上していることに加え、奇抜なアップグレードをしているチームもなかったことが大きかったと思いますね。
テストを見る限り、全チームのマシンが前年モデルの正常進化型でしたが、特にレッドブルはカラーリングも含めて外観は前年とほとんど一緒。どこが変わったのか、まったくわかりませんでした(笑)。でもドライバーのコメントを聞いていると、かなり扱いやすいマシンに仕上がっているようです。
ドライバーズタイトル5連覇を狙うフェルスタッペン(写真左)と昨年ランキング2位のノリス。初のタイトル獲得を目指すノリスは「今年は王座争いの準備はできている」と話す
昨シーズンはマックス・フェルスタッペン選手とコンビを組んだセルジオ・ペレス選手がマシンのパフォーマンスを引き出すことに苦労し、レッドブルはチームとして大量のポイントを失うことになりました。その結果、コンストラクターズタイトルを逃がしましたが、その反省を生かして今シーズンはユーザーフレンドリーなマシンに仕上げてきたのだと思います。
ペレス選手に代わって新たに加入したリアム・ローソン選手は、レッドブルのマシンでどれぐらいのパフォーマンスを引き出せるのか。そこがタイトル争いのポイントになると思うので、開幕戦では注目したいですね。
■サインツが加入するウイリアムズが台風の目になる?テストでは各チームが独自のプログラムを行っているので、マシンのセットアップや燃料の搭載量が異なります。単純にテストのタイムだけで実力を推し量ることはできませんが、最終的には昨シーズンの終盤にトップグループを形成していたマクラーレン、フェラーリ、レッドブル、メルセデスの"4強"が速いタイムを出していたように見えました。
あとウイリアムズも好調で、3日間のプレシーズンテストで総合トップタイムを記録したのは新加入のカルロス・サインツ選手でした。今シーズンのウイリアムズは2019年以来のメインスポンサーがつき、キャリア通算4勝を誇るサインツ選手もフェラーリから移籍してきました。チーム体制は強化されており、楽しみな存在です。
プレシーズンテストで安定した速さを披露したウイリアムズ。新加入のサインツ(写真左)とアルボン(同右)ともに新型マシンに好感触を得ており、サプライズを起こすかもしれない!?
毎年のように言い続けていますが、ウイリアムズのようなプライベーターが元気だとシーズンは面白くなります。ウイリアムズに並ぶイギリスの名門チーム、マクラーレンも長い低迷時期がありましたが、昨シーズン、26年振りのコンストラクターズチャンピオンに輝いています。
サインツ選手はこれまで在籍したルノー(現在のアルピーヌ)、マクラーレン、フェラーリで確実に結果を残しています。所属チームを成長させる能力には定評があるので、今年はウイリアムズが名門復活を果たすかもしれません。
■コンスタントに周回を重ねたレーシングブルズそのウイリアムズと中団グループでポジションを争うことになりそうなのは角田裕毅(つのだ・ゆうき)選手の所属するレーシングブルズです。そこにアストンマーティン、ハース、アルピーヌなども加わるセカンドグループの戦いは、今シーズンもトップ争い以上に激しくなりそうです。
レーシングブルズのニューマシンVCARB02は、レッドブルのテクノロジーやノウハウを積極的に取り入れているように見えます。レーシングブルズのマシンを観察すると、レッドブルの24年型マシンRB20のデザインを踏襲している部分がいくつも目につきます。
角田選手はバーレーンのテストで落ち着いて周回を重ねているように見えましたが、気になっているのはニューマシンの特性です。昨シーズンのレッドブルは、前述したペレス選手だけでなく、4連覇を達成したフェルスタッペン選手ですら、神経質な挙動をするRB20のポテンシャルを引き出すのに手を焼いていました。
RB20のコンセプトを取り入れたレーシングブルズのマシンに、同じ問題が引き継がれてしまう可能性はある。だからこそ角田選手がいかにドライブしやすいマシンに仕上げていくのかが今シーズンの開発のポイントになっていくだろうし、それがレーシングブルズ浮沈の鍵を握っていると思います。
今シーズン、角田選手がコンビを組むのはFIA F2からステップアップしてきたアイザック・ハジャー選手です。F1デビューしたばかりの20歳の新人が、マシン開発にどれだけの貢献ができるかは未知数なところもある。
そこで、F1参戦5シーズン目を迎えた角田選手のフィードバックにはチームも期待しているはずですし、今回のバーレーンのテストを含めて、これから角田選手がレーシングブルズのスタッフと協力してどのようにマシン作りをしていくのか。角田選手はコース上の成績だけでなく、開発能力やリーダーシップも問われることになります。
チームリーダーとしてマシン開発をうまく進め、チームに好結果をもたらすことができれば、角田選手の未来は開かれていくと思います。今シーズンは角田選手のコース上の成績だけでなく、レーシングブルズのマシンがどれだけの進化できるのかにも注目していきたいです。
■開幕戦オーストラリアGPのウイナーは?ここ数年、開幕戦は中東のバーレーンで開催されていましたが、25年シーズンは6年振りにオーストラリアのメルボルンが舞台となります。僕の願望を込めた予想になりますが、開幕戦では今年からフェラーリをドライブするルイス・ハミルトン選手の優勝を見たいですね。
前にも話しましたが、ハミルトン選手が次にチャンピオンになれば、ミハエル・シューマッハ選手の記録を抜いて前人未踏の通算8度目のタイトル獲得になります。その偉業を、かつてシューマッハ選手が所属し、F1でもっとも歴史のあるフェラーリというチームで達成したいとハミルトン選手は思っているはずです。その美しいストーリーをファンのひとりとしても完成させてほしいと願っているので、開幕戦ではハミルトン選手の優勝を期待したいですね。
2位はマクラーレンのランド・ノリス選手で、3位はフェルスタッペン選手がそれぞれ入り、ハミルトン選手、ノリス選手、フェルスタッペン選手の3人が表彰台に上がってくれたら最高ですね。
僕はフェルスタッペン選手のことは嫌いじゃないですし、圧倒的な実力を誇る"モンスター"だと思っていますが、そろそろ彼を倒すドライバーが見たいという気持ちがあります。その最有力候補はノリス選手だと思うので、開幕戦では昨年よりもさらに成長した姿を見せてほしい。
3位にはフェルスタッペン選手を予想しましたが、レッドブルのマシンは4強の中でも4番目の実力だと思います。まともに戦えば表彰台に上がるのは厳しいかもしれませんが、レッドブルは戦術やピットワークが巧みで、チーム力が高い。そこにフェルスタッペン選手の能力が加われば、万全とは言えない状況の中でも5連覇を狙うチャンピオンが表彰台の最後の一角に滑り込んでくるのはでないか、というのが僕の見立てです。
繰り返しになりますが、これはあくまで願望を込めた予想です。実際の結果はまったく異なると思いますが、開幕前のこの時期はいろいろと妄想を膨らませて順位を予想するのがファンは楽しいんですよね。とにかく今は、開幕戦が待ち遠しいです!
☆取材こぼれ話☆アストンマーティンが、レッドブルのマックス・フェルスタッペン選手に対してプロスポーツ史上最高の総額10億ポンド(約1900億円)の契約を準備していると報じられている。
「フェルスタッペン選手が移籍するとしても、新しいレギュレーションが導入される26年以降の話だと思いますが、F1のような道具を使うスポーツでは、いいマシンに乗ることが勝つための最善の手段です。
でも現時点では、どのチームが新レギュレーションの枠の中でもっとも高い競争力を持ったマシンを開発できるのかなんて、誰も予想できません。そこはもうギャンブルみたいなもので、フェルスタッペン選手としてもなかなか動きようがないと思います。
移籍するのかしないのかの決断をするのは、26年シーズンを何戦か走って、レッドブルの可能性も見極めたあとになるでしょうね。でも移籍するとすれば、これまで一緒に仕事をしてきたホンダとデザイナーのエイドリアン・ニューウェイ氏がいるアストンマーティンの可能性が高いかもしれません」
スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/AKM ヘア&メイク/大平真輝
構成/川原田 剛 撮影/樋口 涼(堂本氏) 写真/Red Bull Williams
記事提供元:週プレNEWS
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