サッカー日本代表のW杯ベスト8に必要な「ラストピース」のFWは!?
次回W杯でベスト8進出を目指す、サッカー日本代表の森保監督。出場権獲得は目前だが、メンバー選考は最後まで注目だ
森保一監督が率いるサッカー日本代表が、2026年北中米W杯のアジア最終予選で王手をかけている。3月20日のバーレーン戦に勝てば史上最速での予選突破。8大会連続出場となる。
「世界ベスト8」
その悲願に向け、これからが本番となる。まずはバーレーンに勝利を収めるのが優先だが、より先を見据える戦略も必要だ。その点、今や欧州のトップレベルで試合を重ねる「世界を知る」有力選手が多く出ているのは心強い。
久保建英(レアル・ソシエダ)、三笘 薫(ブライトン)のふたりは、それぞれスペインのラ・リーガ、イングランドのプレミアリーグという世界最高峰のリーグで主軸となっているアタッカー。荒ぶる猛者たちを蹴散らすほどの力を証明しており、崩し役だけでなく、ゴールも期待できる。
中盤も、遠藤 航(リバプール)、守田英正(スポルティング)、鎌田大地(クリスタル・パレス)が欧州有力クラブに所属する。人材は豊富で、旗手怜央(セルティック)、佐野海舟(マインツ)、田中 碧(リーズ)も比肩する実力者。
DFも、伊藤洋輝は世界有数の強豪バイエルン・ミュンヘンでプレーし、町田浩樹(サン=ジロワーズ)、渡辺 剛(ヘント)はベルギーでベストイレブン相当。ケガは不安材料だが、冨安健洋はプレミアの名門アーセナル所属だ。
「史上最強」
そう断言できるほどの陣容になった。残るは、〝最後のピース〟か。拮抗した勝負を決するジョーカー、言い古された表現にすれば〝ラッキーボーイ〟だ。
1990年のイタリアW杯での、イタリア代表サルバトーレ・スキラッチがその代名詞といえるだろう。大会1年前までは無名に近かったが、そのシーズンにゴールを量産してメンバーに滑り込み、本大会では途中出場から決定的なゴールを次々に決めた。まるでボールに愛されたようにシュートチャンスに恵まれ、ツキをモノにした形だ。
そんな〝伏兵〟の存在が、ベスト8以上に勝ち進むには欠かせない。14年のブラジルW杯で、リオネル・メッシ擁するアルゼンチンを撃破して優勝したドイツは、控え組だったFWアンドレ・シュールレが途中出場でことごとく流れを変えた。
ラウンド16のアルジェリア戦は延長に得点。準決勝の開催国ブラジル戦では2得点を決め、決勝も途中出場で、マリオ・ゲッツェの決勝点をアシストした。
交代要員の中でもFWは特殊で、「そのときに良い運を持っているか」が問われる。
現時点で、森保ジャパンのFW1番手は上田綺世(フェイエノールト)だろう。オランダリーグで実績を積み、欧州チャンピオンズリーグ(CL)ベスト16も経験して世界と戦える力を証明した。
小川航基(NEC)もオランダでゴールを積み重ね、代表でも対アジアでは得点を量産。前田大然(セルティック)、古橋亨梧(セルティック→レンヌ)、南野拓実(モナコ)もそれぞれタイプは違うが、CLでゴールを奪えるFWだ。
しかし本大会では〝旬を感じるストライカーを採用し、交代で投入できるか〟がカギになる。FWに関しては、実績をやや無視しても賭けに出る必要があるのだ。
「石橋を叩いても渡らない」
そう揶揄される森保監督の決断が迫られる。軋轢も噂される鈴木優磨(鹿島アントラーズ)であっても、J1でゴールを量産するようなら〝三顧の礼〟で迎えるべきだろう。
本番まで1年と少し。隠し玉的なストライカーは3人いる。
ひとり目は、カタールW杯でも代表入りした25歳の町野修斗(キール)だ。同大会では出場機会がなく、その後も招集されていないが、昨季はチームの1部昇格に大きく貢献。
今季はドイツのブンデスリーガで7得点(3月3日時点。以下同)を記録している。リーグレベルなどを考慮すると、「世界で最もゴールに近い日本人FW」と言える。
ブンデスリーガのキールで活躍する町野。速さやフィジカルに優れたFWは、前回大会出場ゼロの悔しさを晴らせるか
町野は高さ、速さ、強さとフィジカル能力に優れ、ゴール後の〝忍者ポーズ〟がトレードマークになっている。湘南ベルマーレ時代も〝固め取り〟を得意とするなど、波に乗ったときは止められない。
体躯を生かしたポストプレーにも長け、周りを生かしてゴールに迫る技術にも磨きがかかった。今の調子が続けば、切り札候補に浮上するだろう。
昨季のJ1で日本人最多タイの19得点を記録した川崎の山田。推進力があるドリブルと得点力で代表入りとW杯出場を目指す
ふたり目の秘密兵器は、24歳の山田 新(川崎フロンターレ)だ。昨季、J1で日本人最多タイ(全体3位)の19得点を記録して頭角を現しつつある。代表未招集で欧州でのプレー経験はまだないが、ルーキー特有の新鮮さと荒々しさがある。
川崎生え抜きのFWだけに、技術、戦術に優れるボールプレーヤーだが、うまく賢い選手にありがちな〝ひ弱さ〟がない。引きずり倒そうとする敵を力強く振り切って、ゴールに向かうドリブルの推進力は圧巻。ピンポイントにボールを呼び込むパワーとタイミングがあり、スルーパスもクロスも豪快に合わせる。
何より、山田はストライカーとして肝が据わっている。昨季のFC町田ゼルビア戦では、GKのキックミスを拾った後、焦る相手の頭上を抜くループシュートを鮮やかに決めた。代表や海外挑戦で高いレベルの選手と連係することで、そのポテンシャルが触発されるはずだ。
昨季、山田と同じ19点を記録した広島のジャーメイン良。今年で30歳だがポテンシャルが開花すれば代表入りも可能性アリ
3人目を推挙するなら、今年30歳になるジャーメイン良(サンフレッチェ広島)か。プロ入り以来、左利きの〝大器〟と評価されながらもくすぶり続けてきたが、昨季はジュビロ磐田で19得点とゴールセンスを開花させた。優勝を狙うチームに移籍し、大化けが期待されている。
まだ本領発揮には至っていないが、年齢は関係ない。日本人FWは成熟が遅く、30代で初めてJ1得点王になっている例も多い(中山雅史、大久保嘉人、佐藤寿人、大迫勇也ら)。
最後のピースがハマったら、森保ジャパンは悲願を遂げられる。これから1年余、日本人ストライカーの台頭を待ちたい。分厚い壁を打ち破るには、プラスアルファが欠かせないのだ。
取材・文/小宮良之 写真/アフロ
記事提供元:週プレNEWS
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