「レイジング・ブル」へのリスペクトから生まれた柔道アクションとサスペンス 「TATAMI」場面写真
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2025年2月28日より劇場公開される、2023年の東京国際映画祭で審査委員特別賞と最優秀女優賞を受賞した「TATAMI」から、新たな場面写真が公開された。
場面写真は、政府から「棄権せよ」と命令されて茫然自失のレイラが、ロッカールームで途方に暮れている姿を捉えている。電話で話した夫の安否を気遣うとともに、実の父が国家に拉致されているという、出口なしの状況に追い込まれているのだった。主人公のレイラが、家族が巻き込まれ悩んでいる姿が切り取られている。もう1枚は、それでも戦うことを決めたレイラが、畳の上で対戦相手と向き合う様子が収められている。
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場面写真でもわかる通り、本作は張り詰めた緊張感を強調させるため、全編がモノクロームの映像で描かれている。さらに、臨場感にあふれる迫力満点の試合シーンと、その裏側で繰り広げられる国家の思惑をめぐるスリリングなドラマを、「イランの状況を示唆的に表現したい」と考えたガイ・ナッティヴ監督は、圧迫感を感じさせるスタンダードサイズ(4:3の画角)を選択した。「イランの人々が、自由のない非常に狭い空間で圧迫感や恐怖を感じ、箱の中のような厳しい管理下で生活している状況を表しました。モノクロームでかつ4:3のスタンダードサイズ画面にすることによって、観客が小さな箱に閉じ込められているような感覚にしたかった。クロストロフォビア(閉所恐怖症)的で、人生にもまったくカラーがないというところを強調したかった」と、撮影の意図を明かしている。
さらにガイ・ナッティヴ監督は、「『レイジング・ブル』はこの映画に大きなインスピレーションを与えてくれました。マーティン・スコセッシは世界観の構築において非常に具体的ですが、私たちが彼の作品を愛する理由は、そのディテールの中に自分自身を見出すからだと思います」と、マーティン・スコセッシ監督の傑作に大きな影響を受けたことを語っている。
「レイジング・ブル」は、実在のボクサーであるジェイク・ラモッタの半生を描いた作品で、スコセッシ監督はボクシングの試合シーンや自堕落な日常生活を、モノクロの映像によって生々しく表現した。打撃音や汗、血が飛び散る瞬間など強烈なインパクトを与える描写とともに、主人公ジェイクの心理状態、怒りや嫉妬から生まれる猜疑心や復讐心までもが描かれた作品である。ガイ・ナッティヴ監督は、「私の好きな映画はかなり具体的ですが、その具体性こそが普遍性をもたらします。『TATAMI』は私にとってスリラーであり、観客が最初の瞬間から物語に引き込まれることを願っています」と、内面描写にまでこだわったスコセッシの「レイジング・ブル」から大きな示唆を得たと語っている。
「TATAMI」は、2019年の日本武道館での世界柔道選手権で実際に起こった事件をベースに映画化した作品。ジョージアの首都トビリシで開催中の女子世界柔道選手権。イラン代表のレイラ・ホセイニと監督のマルヤム・ガンバリは、金メダルを目前に、政府から敵対国であるイスラエルとの対戦を避けるため、棄権を命じられる。自分自身と人質に取られた家族にも危険が及ぶ中、けがを装って政府に服従するか、自由と尊厳のために戦い続けるかの決断を迫られる。イスラエル出身のガイ・ナッティヴと、第75回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞したザーラ・アミールが共同で監督を務めた。
【作品情報】
TATAMI
2025年2月28日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開
配給:ミモザフィルムズ
© 2023 Judo Production LLC. All Rights Reserved
記事提供元:映画スクエア
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