日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが『コメント部隊』をレビュー!
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大企業、あるいは政府機関がネットを使って世論を操作したり、あるいは操作しようと試みていることは、もはや常識といっていい。
悲しいことに、そういう試みは往々にして有効なのだが、それがなぜかといえば「集団としての人間」の姿はしばしば獰猛で凶悪だからだ。
その集団が匿名であればなおさらのことで、個人であれば感じたはずの責任や罪悪感はそこには存在しない......というのは、残念なことに、きわめて楽観的で性善説的な考え方かもしれない。
本作は、巨大企業にスカウトされ「コメント部隊」として暗躍する若者グループと、彼らを追う新聞記者の姿を描いたドラマだが、少しずつ明らかになる世論操作の手口は無数の嘘で塗り固められていて「真実」は常に闇の中だ。
しかしそれがどのような意図や手段によるものにせよ、「ネット世論」が実際に多くの人々を苦しめ、また死に追いやっていることは厳然たる事実としてある。
だがそれが集合的な悪意がもたらすものである以上、やっぱり責任や罪悪感といったものは無限にスポイルされたままだし、それを自らのアドバンテージであるかのように考える救いようのない人間も存在するわけで、暗鬱たる気分にさせられる。
STORY:誤報記事によって停職処分となった社会部記者イム・サンジン。彼の前に現れたネット世論操作を主導するコメント部隊「チームアレブ」のメンバーは、お金さえ払えば真実を嘘に、嘘を真実にすることができると告げるのだが......
監督・脚本:アン・グクジン
出演:ソン・ソック、キム・ソンチョル、キム・ドンフィ、ホン・ギョンほか
上映時間:109分
全国公開中
記事提供元:週プレNEWS
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