「ボーネルンド」計算され尽くした遊具と遊びのプロに異業種も注目!:読んで分かる「カンブリア宮殿」
更新日:
イチオシスト:イチオシ編集部 旬ニュース担当
注目の旬ニュースを編集部員が発信!「イチオシ」は株式会社オールアバウトが株式会社NTTドコモと共同で開設したレコメンドサイト。毎日トレンド情報をお届けしています。
車の販売店で売り上げ1.5倍~ユニクロ、TSUTAYAも続々と導入
静岡・浜松市のカーディーラー「スズキアリーナ森田」に休日、家族連れが続々とやってきた。店の奥には滑り台にボールプール、ボルダリングの設備もある。この遊び場を目当てに地元の家族連れが訪れていた。「無料でありがたい」と、親たちからも好評だ。
【動画】「ボーネルンド」計算され尽くした遊具と遊びのプロに異業種も注目!
2015年、店内をリニューアル。5台あった展示車を1台に減らし、3分2のスペースを遊び場に変えた。すると口コミで広まり、大勢の家族連れがやってくるようになった。そして売り上げは「導入前よりも150%、1.5倍」(店長・西山洋次郎さん)に伸びた。その理由は、遊びのついでに車をチェックする客が増えたからだという。
「お客様と接点を増やすことをしないと、商談にもっていけない。そういった機会が増えた。営業にとっては非常にありがたいことです」(西山さん)
一方、埼玉・戸田市にある「ボートレース戸田」では、埼玉県の自治体が開催する公営競技のレースが行われている。舟券売り場に行ってみると、圧倒的に男性が多い。
「いわゆる3Kと言われる『暗い、汚い、怖い』というイメージがあったので、それを子どもの笑顔で払拭できないかと」(戸田市・菅原文仁市長)
そこで2019年、イメージを一新するため施設の一角に作ったのが、子どもの遊び場「BOAT KIDS PARK モーヴィ戸田」だ。すると競艇ファンが子どもを連れてやってくるように。今では競艇をやらない女性も子どもを遊ばせに来るようになった。
こうした遊び場をプロデュースしているのが東京・原宿に本社を構えるボーネルンド。社名は「子どもの森」という意味で、デンマーク語のボーネ「子ども」とルンド「森」を合わせた造語だ。
1981年設立で、従業員数410人、売り上げは約55億円。1階にあるショップ「ボーネルンド」本店では世界20カ国、約2200種類の玩具を販売している。
一番の人気は「マグ・フォーマー」(1万8700円)。三角形や四角形など、磁石が入ったピースをくっつけることで立体的な構造を学ぶことができる。
自社で開発した木琴「おさかなシロフォン」(1万2100円)は専門家が調律。正しい音程を学べるようになっている。商品の多くが子どもの成長に役立つ知育玩具だ。
そんなボーネルンドが今、力を入れているのが遊び場づくりだ。
横浜市の「ユニクロ PARK 横浜ベイサイド店」では建物の屋上に2700平米もの遊び場を導入した。また、茨城・常総市の「TSUTAYA BOOKSTORE 常総インターチェンジ」では売り場の奥に遊び場を併設。年間133万人が訪れる人気書店になった。
「書店の販売にも大きく寄与していると実感しています。ここまで売れるのかなと、正直なところ驚いています」(館長・今井剛志さん)
今、多くの企業などが、集客を目的にボーネルンドの遊び場を導入している。コーヒーショップやリゾートホテルなど、全国3万5000カ所に急増している。
2024年11月、神戸の「三井アウトレットパーク マリンピア神戸」に新たな「遊び場」がオープンした。訪れたボーネルンド会長・中西弘子(79)は、「ただものを買ってきて売るだけの会社ではダメです。子どもにとって、遊ぶことは生きること。子どもが一生懸命遊ぶ、それが本当に子どもにとっていいこと」と語る。
遊び場にオファーが殺到する理由1~計算され尽くした遊具とは?
ボーネルンドは全国22カ所で室内の遊び場を自社で運営している。
0歳から遊べる「ベビー・ガーデン」では、初めて聞く音やいろいろな形や素材を触って五感を刺激。「ディスカバリー・タウン」では、ミニカーで遊んだり、おままごとなど日常生活の体験を通じて創造性を養う。
この施設には明確な狙いがある。「36の、子どもたちの幼児期に必要としている基本動作を、自然と実現できる」と言う。
「36の動き」とは幼児期に身につけておくべきとされる基本動作のこと。例えば、360度回転する「サイバーホイール」の中で回りながら、バランスをとることを身につける。安全なマット「エアトラック」の上では「跳ぶ」や「走る」など体を移動する動作を。柔らかくて大きな「イマジネーションブロック」を使って「運ぶ」や「積む」など、物を扱うことを覚えていく。
遊びの中で自然と36の動きが身につく遊具を選び、設置している。だから通常の保育環境と比べて、運動量が2倍以上になるという。
ボーネルンドの遊び場作りの責任者、設計部・林耕介が東京・港区の「東洋英和女学院小学部」を訪れた。20年以上使われてきた校庭の遊具をリニューアルしたいという依頼があったのだ。
「都会の学校なので、どうしてもグラウンドが狭い。その中で、きちきちに作っているので、もうちょっといい環境にしてあげたい」(小学部長・吉田太郎さん)
林は「今回は遊具の提案だけじゃなくて、環境そのものを提案していきたい」と言う。林が提案したのは、緑に囲まれた自然のぬくもりを感じる校庭。その奥には4種類の遊具を設置。それには7つのキーワードがあるという。
例えばデンマーク製の大型複合遊具。登るための足場があるが、地面と平行ではない。あえて登りにくくすることで、バランス感覚が養える。滑り台はカーブをつけることで自然と重力に逆らった運動になる。
シーソーは筋力や敏しょう性などが向上する設計に。小学生などの動きを徹底的に研究し、バランス・抗重力運動・協調運動・筋力負荷・敏しょう性・心肺機能運動・骨密度といった7つの運動要素が身につくよう、作られているのだ。
「遊びは、いろいろな体験を楽しみながらすることで、体が洗練されていく。遊具はそんな存在だと思っています」(林)
遊び場にオファーが殺到する理由2~遊びのプロ・プレイリーダー
ボーネルンドの施設にはカギとなるスタッフ、プレイリーダーが常駐している。
プレイリーダーがソフトブロックを持ってきて、どうやって遊びたいか、聞いてみた。すると、「難しいところも作る」と言って女児は大量のブロックをマットの上まで運んで遊び始めた。プレイリーダーは「何もなかったときは、ここで何して遊んでいいか分からなかったので、遊べていなかった」と言う。
一方、輪っかで遊んでいた女児は飽きたのか、どこかへ行ってしまった。そこでプレイリーダーが、輪っかにボールをプラスした違う遊びを提案。すると女児は夢中になり、さらに輪っかを浮かしてボールを通す新しい遊びを、自ら考え出した。
ボルダリングに挑戦するが、なかなか登れない男児は「この手だったらできる」というプレイリーダーの一言をきっかけに、登れるようになった。
「私たちは指導者ではなくて、遊びを生まれるきっかけを作る、遊びを届ける仕掛け人として活動しています」(プレイリーダー・村井雄一)
今やプレイリーダーはあちこちから頼られる存在になっている。
プレイリーダーの早川健太がこの日向かったのは、東京・足立区の「くりはら愛育保育園」。ここで働く保育士たちにスカーフを配り、オリジナルの遊びを考えてもらうという。
ある保育士が考え出したのは、スカーフを体に巻き、それを落とさないように体を動かす遊び。遊び道具の固定観念を無くすのがプレイリーダーの狙いだ。参加者は「スカーフ一つでたくさんの遊び方があるんだなと思って、面白かったです」と言う。
「一人一人が遊びの引き出しを増やして、子どもと楽しく関わってくれたら幸いです」(園長・上原隆寛さん)
ボーネルンドでは自社の遊び場を導入した施設でこうした研修も行っている。
「遊びは大事だなって思っていただいて、それが一つビジネスに繋がっていけば、と思っています」(早川)
専業主婦から経営者に~全く売れない「玩具」がヒット
ボーネルンドは、全国に58の知育玩具を扱う店を展開している。そこでよく見る光景が、商品のおもちゃで遊ぶ子どもたちの姿だ。
「お店に来ていただいたお客様には、どれを触っていただいても結構ですと申し上げています」(中西)
創業前、中西は専業主婦で二児の母だった。1977年、子育てに明け暮れる日々を送っていた中西に思いもよらぬ出来事が起きる。輸入玩具を扱う商社に勤めていた夫の将之が、突然会社を辞めたのだ。
「『今日会社を辞めてきた』という一言だけなんです。『え?』ってびっくりしまして。そんなに蓄えもありませんし、子どもも2人いるし、どうするのかなと」(中西)
将之はヨーロッパをまわり、大型遊具や玩具の輸入を始め、1981年にボーネルンドを設立。会社勤めの経験がなかった中西も夫の事業を手伝うことになった。
当時、仕入れたのが子どもの成長を促すよう考えられた玩具。例えばオランダ製のそろばん「アバカス」は、数が減ったり増えたりすることを目で確認できる。数字の大小が自然と身につくようにできているのはイギリスの「ピエロのびっくりはかり」だ。
「本当にのめりこんで遊ぶ。この玩具はすごいなと感動しました」(中西)
二人はこうした商品を「知育玩具」として問屋に卸す商売をはじめた。
だが当時、日本で売れたおもちゃはほとんどが特撮やアニメのキャラクターもの。見た目が地味な「知育玩具」は客に見向きもされなかった。
「問屋さんに扱ってもらったがことごとくダメで失敗をしまして、で、自分たちでお店を始めようということになりました」(中西)
1986年、大阪に1号店をオープン。商品の楽しさを知ってもらえるよう、子どもが手に取り、遊べるようにした。
「幼稚園の先生とか、教育に携わる方々が『これいいね』と言ってくれた」(中西)
扱う遊具や玩具のよさが徐々に口コミで拡大。幼稚園などで採用されるようになり、ようやく経営も軌道に乗っていった。
1994年には体調を崩した夫に代わり社長に就任した。
大きな転機が2011年の東日本大震災だ。原発事故の影響で外で遊べなくなった子どもたちのため、福島・郡山市に室内の遊び場「ペップキッズこおりやま」を作った。この施設が評判となり、他の自治体からも、遊び場づくりの依頼が次々と舞い込むように。いまや、全国70近い自治体が導入している。
その一つが京都・亀岡市。2020年、道の駅の一角にボーネルンドの遊び場「ガレリアあそびの森」を導入した。屋上にもデンマーク製の遊具が並ぶ公園がある。
亀岡市は2001年をピークに人口減少が続いている。それを食い止める策の一つにと、ボーネルンドの遊び場を導入した。
「子育てをしやすい環境をつくることによって、この町を選んでもらえるのではないかと、この施設を作りました。着実にその成果は出ていると思います」(亀岡市・桂川孝裕市長)
団地で新たな取り組み~「遊び場」でビジネス拡大
誕生から50年以上たった千葉・習志野市の「UR袖ケ浦団地」。そこに中西会長の次女で、ボーネルンド社長・中西みのりが、URと共同で行う企画の視察のために来た。
しばらくすると、集まってきたのは子どもではなく、この団地に暮らす高齢者たちだ。
始まったのは健康器具を使ったエクササイズ教室。ボーネルンドはこの団地にデンマーク製の健康器具を納入しているのだ。
近年、団地の住民の高齢化が進んでいる。そこでボーネルンドはUR都市機構と共同で健康器具を設置し、住民の健康維持や促進に取り組んでいるのだ。
「元気で長く社会生活を送ってもらうのが大きな目標の一つだと思うので。運動を促進したり、遊んだり、集まったりということが、たくさんできるといいと思っています」(中西みのり)
※価格は放送時の金額です。
~村上龍の編集後記~
公園に行くと、子どもの数が減っている。中西さんは「娯楽」と「遊び」を分けている。自宅でコンピュータゲームをするのは娯楽、子どもが自発的に身体と頭を使って想像力やコミュニケーション能力などの「生きる力」を身につけるのが、遊び。孫ができて感じたのは幼児期はあっという間に終わってしまうこと。重要なのは2~5才ごろ。わたしは小さかった息子に毎晩「お話」をした。桃太郎ではなく、「スイカ太郎」とか。ボーネルンド、社名はデンマーク語で「子ども」「森」を組みあわせた造語。3万5000カ所以上のあそび場を目指す。
<出演者略歴>
中西弘子(なかにし・ひろこ)1945年、大阪府生まれ。1966年、帝塚山短期大学卒業。1977年、夫が事業開始。1981年、ボーネルンド設立。1994年、社長就任。2023年、会長就任。
見逃した方は、テレ東BIZへ!
記事提供元:テレ東プラス
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。