望まぬ妊娠に直面した20歳の女性 歩む道の先には石のように重い扉が立ちはだかる 「石門」予告
2025年2月28日より劇場公開される、“中華圏のアカデミー賞”と称される第60回台北金馬獎で、日本資本の映画として初めて「最優秀作品賞」を受賞した映画「石門(せきもん)」の、日本版予告が公開された。
予告編は、客室乗務員を目指す主人公のリン(ヤオ・ホングイ)が、英会話教室のパーティに参加する場面から始まる。大学に通いながら英会話のスキルを高める努力を続けているリン。地方出身の彼女は、パーティでは自分の居場所が見つけられない。「何が得意」という問いに「客室乗務員の学校に通っています」と応じる彼女の言葉から、実習風景が紹介される。「美人向きの仕事」だねと指摘する声を受けて、宝飾店の店頭でドレスを着せられたリンの姿が映される。診療所を営んでいる両親は、死産の責任を求めて賠償金を迫られており、彼女はアルバイトをして仕送りをしているのだった。
そんなある日、リンは自分が妊娠1カ月であることを知る。恋人のチャンは、「赤ん坊がいたら君が不利になるよ」と暗に中絶を勧める。体に変化が起こる前に故郷へと戻った娘に、母は「進学したのに男を作って妊娠するなんて」と苦言を呈する。子供を持つことも中絶することも望まなかったリンは、両親を助けるため賠償金の代わりにこの子供を提供することを思いつく。一人っ子政策によって少子化したこの国では、遺伝子にまでこだわる闇ビジネスが横行しているのだった。だが相手は、養子として引き取るのであれば、その子が健康体であることが確認できるまで受け入れないという。その渦中、定期検診を終えたリンは、母親になる女性に「あなたが育てるのよ」と診断書を手渡すが、彼女は興味がないとばかりに一瞥するだけだった。
慰謝料の返済のために「月に1万5千元」かかると言う母は、マルチ商法まがいのビジネスで稼ごうとしている。家族の誰もが「人に借金はしたくない」と思っているが、松葉づえの父を交えて親子三人で口論する羽目になる。そして、屋上にプールがしつらえられたビルからの眺望と卵子ドナーとなる女性たちが食事する姿が映し出される。急激に都市化が進んだ地方の街で、何が起こっているのか。望まぬ子を身ごもった20歳の女性の前には、全世界共通の他人ごとではない石のように重たい扉が立ちはだかることが描き出されている。
「石門」は、望まぬ妊娠に直面した20歳のリンを主人公に、女性の前にあるさまざまな壁を静かに見つめた作品。監督は、中国湖南省出身のホアン・ジーと東京出身の大塚竜治。中国と日本を拠点に活動する夫妻は、女性の性に関する問題をテーマに映画を共同制作してきた。これまでに、封建的な湖南省の農村で出稼ぎをする両親と離れて抑圧された生活を送る14歳の少女を描いた「卵と石」のほか、学校で没収されたスマホを売ったことで見知らぬ男たちと知り合うことになる16歳の少女を追った「フーリッシュ・バード」を送り出している。「卵と石」「フーリッシュ・バード」に続き、ヤオ・ホングイが主人公のリンを演じている。
【作品情報】
石門
2025年2月28日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、シネリーブル池袋ほか全国順次公開
配給:ラビットハウス
©YGP-FILM
記事提供元:映画スクエア
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