在宅患者の心不全悪化を早期発見/クラウドで病院と連携 大阪大が遠隔モニタリングシステムの有用性確認
大阪大学などの研究チームは12月18日、在宅患者の就寝時の体動を感知するセンサーで得られたデータから、心不全の悪化を医療機関で早期に検出できる遠隔モニタリングシステムの有用性を確認したと発表した。症状が重くなる前に治療を始めることで、入院の抑制や回復につながると期待されている。
システムでは、患者が使用するベッドなどの寝具に、呼吸、心拍などの体動を感知するセンサーを設置。患者が寝ている間に、センサーから得た体動信号がクラウドシステムに自動送信され、安定した呼吸パターンが何秒続いているかを示す定量指標(呼吸安定時間=RST)を算出する。
健常者の呼吸安定時間は平均で約50秒だが、心不全が悪化した人は20秒以下に下がる。ただ、低下してからしばらくは症状が顕在化しないため、病気の進行が分かりにくい。遠隔モニタリングシステムでは、在宅患者の連日の呼吸安定時間を病院などが遠隔追跡でき、低下がみられた場合に早めに治療できる。
治験では、実際に入院を回避できた。また、呼吸安定時間が低下してから症状が発出するまでには、1カ月ほどの時差があることも分かったという。来年初めから予定している臨床研究には、全国20カ所余りの医療機関が参加予定だ。
大阪大学国際医工情報センターの宮川繁教授は、これまで使用されてきた肺動脈センサーなどに比べ、コストが抑えられるほか、患者の体への負担が小さいなどの利点を指摘。また、中国、米国、欧州(英国、フランス、ドイツ)で国際特許を取得しており、「日本以外の患者を救う可能性もあり、世界に誇れる医療機器になると思う」とコメントした。
呼吸安定時間という指標は、同センターの麻野井英次招へい教授が発明。算出プログラムを、ハートラボ(神戸市)が開発。今年8月に診断などの医療行為を支える「プログラム医療機器(SaMD)」として、国の承認を取得した。
臨床研究では、パラマウントベッドが開発した睡眠計測センサーを使用する。パラマウントベッドは先ごろ、ハートラボの発行済み株式の過半を保有し、ハートラボを子会社化したと発表した。パラマウントベッドによると、日本国内の心不全患者の数は約120万人。在宅から救急搬送される患者の病気別で最も多いという。
記事提供元:オーヴォ(OvO)
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