“孤独”な時間を楽しみすぎると“人嫌い”になる?日本一有名な精神科医が教える“一人時間の楽しみ方”
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イチオシスト:イチオシ編集部 旬ニュース担当
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「積極的孤独」と「消極的孤独」、似ているようで実は異なるその性質。前編では、「早稲田メンタルクリニック」の益田裕介院長に、その違いや心身に与える影響について伺いました。後編では、「積極的孤独」が仕事や日常生活にどのような影響を与えるのか、「消極的孤独」を感じる人へのアドバイスなどを伺います。
【動画】「それぞれの孤独のグルメ」異なる主人公たちが1人気ままに腹を満たす
画像素材:PIXTA
――「積極的孤独」はビジネスや人生に良い影響を与えますか?
「一人の時間を持つことで脳がリラックスし、記憶や情報を整理する役割を持つ『デフォルトモードネットワーク』が働き、頭の中が整理されます。この状態が、ビジネスや人生において有益な効果をもたらすことがあります。
例えば、一人で行動をしている時に、新しいビジネスのアイデアが浮かんだり、行動する勇気が湧いてきたりすることがあります。脳が整理されていないとなかなかできない決断も、一人でぼーっとしている間に心が落ち着いて、腹が座る瞬間が訪れることがあるのです。
作家がホテルや旅館にこもって執筆するのも、デフォルトモードネットワークを働かせるための一環です。外的な刺激を遮断して一人の時間を持つことで、無意識が働き、インスピレーションが湧きやすくなるのです。
また、ミュージシャンが寝ている間にメロディーが浮かんでくることがありますが、これもデフォルトモードネットワークが活性化しているからこその現象です。一人で考える時間や無意識の時間は、創造的なアイデアを生み出すことが多いので、積極的孤独を楽しむことは、有益なことだと言えます」
――デフォルトモードネットワークは自分でコントロールできないのでしょうか?
「ぼーっとするという行為自体、意識的にするのは難しいものです。例えば、古代中国で『太公望』と呼ばれた周の軍師・呂尚は、真っ直ぐな釣り針を海に垂らし、魚が釣れない状況を作り出していたと言われています。"釣れない釣り"をすることで、意図的にぼーっとし、新しい知恵を得ていたのです。
ボディービルダーが筋トレと休養のバランスを取るように、脳にも休養が必要です。考えない時間を意識的に設けることで、脳は次に進むための準備を整えることができます。例えば、山登りをしたり、電車に乗って窓の景色を眺めたりすることも、脳にとってリセットの時間になり、無意識のうちに新しいアイデアや思考が生まれることがあります」
画像素材:PIXTA
――ある程度の孤独が必要なことは分かりましたが、一人時間を楽しみすぎると、人と一緒にいるのが億劫になってしまいそうです。
「人の時間を適度に持つことは大切ですが、それが行き過ぎて引きこもりの状態になってしまうと、精神的な健康を害することにもなりかねないので、注意が必要です。
基本的に、人間の遺伝子は原始時代からほとんど変わっていません。原始時代の人々は、今のように多くの人や情報が溢れる環境ではなく、限られた状況で生活していました。しかし、現代社会は情報過多で人も多すぎて、脳にとって刺激が過剰です。人と一緒にいることと、孤独とのバランスをとることが重要だと思います」
――孤独を理由に精神科を訪れる方は多いのでしょうか?
「孤独に悩む方は多いですが、孤独そのものに診断名がつくわけではありません。しかし、多くの精神疾患の背景に孤独が影響しているケースは少なくありません。例えば、うつ病やアルコール依存症、パニック障害などに悩む患者さんの中には、孤独がその一因となっていることがよくあります。これらの治療の一環として、孤独を解消する取り組みをすることもあります。
意外に思われるかもしれませんが、通院自体が孤独の解消につながることもあります。精神科に定期的に通うことで、普段の生活や職場とは異なる価値観に触れ、人と会話をする機会が生まれます。これが心の変化や環境の改善を促し、結果的に生活が前向きになるケースも多いのです。
人が変わるきっかけは、些細なことから始まることが多いです。例えば、自炊ができるようになったり、部屋を片付けられるようになったりするだけで、生活全体が少しずつ良い方向に進むことがあります。一見すると孤独の解消とは無関係に思える行動が、最終的には大きな変化をもたらすことがあるのです」
――精神科に行くことはハードルが高いと感じる人もいると思いますが、うつなどの重大な症状ではない場合でも、行って大丈夫でしょうか?
「もちろん大丈夫ですが、孤独が主な悩みであれば、必ずしも精神科の力に頼る必要はありません。地域のコミュニティーに参加したり、人付き合いの幅を広げたりすることが役立つこともあります。自分に合ったコミュニティーに巡り合うのは簡単ではありませんが、だからこそ、せっかくできた友人やつながりを大切にすることが重要です。
精神科でカウンセリングを受ける場合も、予約が取りやすい場所と、長期的に通える場所の両方を視野に入れて検討することをおすすめします。自分のペースで孤独や悩みと向き合いながら、解決の糸口を見つけることが、より良い人生への第一歩になるでしょう」
【益田裕介 プロフィール】
「早稲田メンタルクリニック」院長。防衛医科大学校を卒業後、防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院、埼玉県立精神医療センター、医療法人社団薫風会 山田病院などで経験を積む。2018年、「早稲田メンタルクリニック」を開院(東京メトロ 東西線「早稲田駅」より徒歩1分)。精神保健指定医、精神科専門医・指導医。
自身が運営するYouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」は、登録者数63.5万人を突破(2024年11月時点)。
著書に「まんが 夜のこころの診療所 精神科医がいるスナック」(青山ゆずこ・イラスト 扶桑社コミックス)、「【心の病】はこうして治る まんがルポ 精神科に行ってみた!」(青山ゆずこ・イラスト 扶桑社コミックス)、「精神科医が教える 親を憎むのをやめる方法」(KADOKAWA)など。
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(取材・文/みやざわあさみ)
●2025年1月10日(金)公開予定! 「劇映画 孤独のグルメ」
「孤独のグルメ」シリーズ、感謝の集大成! 12年間にわたって主人公・井之頭五郎を演じた松重豊が監督・脚本・主演を務め、フランス・韓国・日本の3か国で撮影を敢 行! 主演ももちろん松重で、ワールドワイドに腹を減らしながら、自らメガホンを執る。
【動画】「それぞれの孤独のグルメ」異なる主人公たちが1人気ままに腹を満たす
一人でぼーっとしている間に心が落ち着き、腹が座る瞬間が訪れる
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――「積極的孤独」はビジネスや人生に良い影響を与えますか?
「一人の時間を持つことで脳がリラックスし、記憶や情報を整理する役割を持つ『デフォルトモードネットワーク』が働き、頭の中が整理されます。この状態が、ビジネスや人生において有益な効果をもたらすことがあります。
例えば、一人で行動をしている時に、新しいビジネスのアイデアが浮かんだり、行動する勇気が湧いてきたりすることがあります。脳が整理されていないとなかなかできない決断も、一人でぼーっとしている間に心が落ち着いて、腹が座る瞬間が訪れることがあるのです。
作家がホテルや旅館にこもって執筆するのも、デフォルトモードネットワークを働かせるための一環です。外的な刺激を遮断して一人の時間を持つことで、無意識が働き、インスピレーションが湧きやすくなるのです。
また、ミュージシャンが寝ている間にメロディーが浮かんでくることがありますが、これもデフォルトモードネットワークが活性化しているからこその現象です。一人で考える時間や無意識の時間は、創造的なアイデアを生み出すことが多いので、積極的孤独を楽しむことは、有益なことだと言えます」
――デフォルトモードネットワークは自分でコントロールできないのでしょうか?
「ぼーっとするという行為自体、意識的にするのは難しいものです。例えば、古代中国で『太公望』と呼ばれた周の軍師・呂尚は、真っ直ぐな釣り針を海に垂らし、魚が釣れない状況を作り出していたと言われています。"釣れない釣り"をすることで、意図的にぼーっとし、新しい知恵を得ていたのです。
ボディービルダーが筋トレと休養のバランスを取るように、脳にも休養が必要です。考えない時間を意識的に設けることで、脳は次に進むための準備を整えることができます。例えば、山登りをしたり、電車に乗って窓の景色を眺めたりすることも、脳にとってリセットの時間になり、無意識のうちに新しいアイデアや思考が生まれることがあります」
情報過多な現代社会では、脳にも休息が必要
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――ある程度の孤独が必要なことは分かりましたが、一人時間を楽しみすぎると、人と一緒にいるのが億劫になってしまいそうです。
「人の時間を適度に持つことは大切ですが、それが行き過ぎて引きこもりの状態になってしまうと、精神的な健康を害することにもなりかねないので、注意が必要です。
基本的に、人間の遺伝子は原始時代からほとんど変わっていません。原始時代の人々は、今のように多くの人や情報が溢れる環境ではなく、限られた状況で生活していました。しかし、現代社会は情報過多で人も多すぎて、脳にとって刺激が過剰です。人と一緒にいることと、孤独とのバランスをとることが重要だと思います」
――孤独を理由に精神科を訪れる方は多いのでしょうか?
「孤独に悩む方は多いですが、孤独そのものに診断名がつくわけではありません。しかし、多くの精神疾患の背景に孤独が影響しているケースは少なくありません。例えば、うつ病やアルコール依存症、パニック障害などに悩む患者さんの中には、孤独がその一因となっていることがよくあります。これらの治療の一環として、孤独を解消する取り組みをすることもあります。
意外に思われるかもしれませんが、通院自体が孤独の解消につながることもあります。精神科に定期的に通うことで、普段の生活や職場とは異なる価値観に触れ、人と会話をする機会が生まれます。これが心の変化や環境の改善を促し、結果的に生活が前向きになるケースも多いのです。
人が変わるきっかけは、些細なことから始まることが多いです。例えば、自炊ができるようになったり、部屋を片付けられるようになったりするだけで、生活全体が少しずつ良い方向に進むことがあります。一見すると孤独の解消とは無関係に思える行動が、最終的には大きな変化をもたらすことがあるのです」
――精神科に行くことはハードルが高いと感じる人もいると思いますが、うつなどの重大な症状ではない場合でも、行って大丈夫でしょうか?
「もちろん大丈夫ですが、孤独が主な悩みであれば、必ずしも精神科の力に頼る必要はありません。地域のコミュニティーに参加したり、人付き合いの幅を広げたりすることが役立つこともあります。自分に合ったコミュニティーに巡り合うのは簡単ではありませんが、だからこそ、せっかくできた友人やつながりを大切にすることが重要です。
精神科でカウンセリングを受ける場合も、予約が取りやすい場所と、長期的に通える場所の両方を視野に入れて検討することをおすすめします。自分のペースで孤独や悩みと向き合いながら、解決の糸口を見つけることが、より良い人生への第一歩になるでしょう」
【益田裕介 プロフィール】
「早稲田メンタルクリニック」院長。防衛医科大学校を卒業後、防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院、埼玉県立精神医療センター、医療法人社団薫風会 山田病院などで経験を積む。2018年、「早稲田メンタルクリニック」を開院(東京メトロ 東西線「早稲田駅」より徒歩1分)。精神保健指定医、精神科専門医・指導医。
自身が運営するYouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」は、登録者数63.5万人を突破(2024年11月時点)。
著書に「まんが 夜のこころの診療所 精神科医がいるスナック」(青山ゆずこ・イラスト 扶桑社コミックス)、「【心の病】はこうして治る まんがルポ 精神科に行ってみた!」(青山ゆずこ・イラスト 扶桑社コミックス)、「精神科医が教える 親を憎むのをやめる方法」(KADOKAWA)など。
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(取材・文/みやざわあさみ)
●2025年1月10日(金)公開予定! 「劇映画 孤独のグルメ」
「孤独のグルメ」シリーズ、感謝の集大成! 12年間にわたって主人公・井之頭五郎を演じた松重豊が監督・脚本・主演を務め、フランス・韓国・日本の3か国で撮影を敢 行! 主演ももちろん松重で、ワールドワイドに腹を減らしながら、自らメガホンを執る。
記事提供元:テレ東プラス
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