ごみ屋敷からお宝がザックザク!? 15年間放置されたごみ屋敷を"お片付け芸人"に片づけてもらった!
たぶん15年以上は片付けていないごみ屋敷。もう何をしたらいいかわからず放置状態
「年末といえば大掃除」そんなしきたりを無視し続けること15年。リアルごみ屋敷で暮らすライターが、ごみ屋敷清掃芸人・柴田賢佑氏に片付けを依頼。その顛末をまとめた渾身のレポートをお届け! こうなる前に、あなたも家を片付けよう!
■ごみ屋敷のなかではきれいなほう!?私事で恐縮だが、家がごみ屋敷だ。エアコンも風呂もない1DK、玄関を上がると4畳半のフローリングがあったのだが、トイレのドアを開くための50センチ四方のスペースがあるだけで、床は見えない。数年前はもう少し床が見えた気もするが、積み上げた段ボールが昨年あたりに崩壊し、床がほぼ消えた。
奥は6畳の畳敷きだが、そこにも服や雑誌があふれ、ヒザ下ぐらいまでの"地層"ができあがっている。こちらはもう10年は畳を見ていない。
記憶にあるのが、2011年に発生した東日本大震災。家に帰ると棚の上にあったはずのものがほとんど落下したが、そのときすでにゴミ屋敷化しており、何が落ちたのかわからず復旧をあきらめた。
奥の本棚の上にある小物入れは東日本大震災でズレたまま、10年以上にわたり絶妙な角度をキープ
この部屋に引っ越して最初の数年、冬はこたつに入っていた記憶があるが、いつの間にかこたつの下に雑誌や紙類が流れ込み、使えなくなった。仕方がないので電気ストーブを買い生活していたが、部屋がごみであふれるにつれ、火事になる危険を感じて使用をストップ。冬は使わなくなったこたつ布団にくるまり、ごみの上で寝るようになった。
それから間もなくこの部屋では日常生活が送れなくなり、ここ数年は新たに借りた仕事場で寝泊まり。着替えを取りに行くときだけ、家に帰るという生活を送っていた。
しかし自分もそれなりの歳になり、この生活はヤバいんじゃないかと思い始めた。そんなタイミングで、20年来の知人で"ごみ清掃芸人"としても活躍中のマシンガンズ・滝沢秀一氏から、ごみ屋敷を片付ける仕事をしている芸人の六六三六・柴田賢佑氏を紹介してもらい、この部屋を片付けてもらうことにした。
柴田氏は芸人としての活動のかたわら「お片付けブラザーズ」という団体を設立、ごみ屋敷などの清掃をする仕事もしている。ちなみに取材だからタダなんてことはなく、完全に自腹である。
片づけの前に、柴田氏が見積もりにやってきた。正直、今の状態になってから家に人を招くのは初めてだ。柴田氏はごみの山に足をのせる前に「失礼します!」とひと声かけてくれた。そんな気にしなくても、と思ったが、人によっては「そこはごみじゃない!」と声を荒げる人もいるらしく、ちゃんと許可を得てから上がるそう。
「あぁ、意外ときれいですね!」と、まさかのひと言。「液体や生ごみがないので臭くない。ゴキブリやネズミもおらず、ジャンルで言ったら"紙屋敷"でしょうか」
この家では10年以上自炊をしていない。ごみの中で食事をしたくないので、弁当などは持ち込まずオール外食にしている。それが高評価につながったのだ! ホメられてうれしい(ごみ屋敷だけど)。
見積もりの結果、片づけにかかる日数は2日間。初日にフローリング部分を片づけ、可能な限り畳部屋にも手を付ける。そして2日目ですべてをクリアにするという作戦だ。
6畳の畳部屋。テレビの前にあるこたつ(らしきもの)の上は、「宝島」と名付けて大事なものが置いてある
12月初旬のよく晴れた日、ついにゴミ屋敷の片付けが始まった。スタッフは柴田氏の他に、芸人のぐりんぴーす・落合隆治氏、そして後輩芸人の全3名。
最初に柴田氏から手順の説明があった。まずは下駄箱近辺をきれいにして出入り口を確保、続いて押し入れの片付け。ごみが散らかる床でなくなぜ押し入れ?と思ったが、捨てずに残すものを収納するスペースを作るのだそう。
人員配置としては、柴田氏が自分の横へ付いて、捨てるものか残すものかのジャッジをあおぐ。後輩芸人はごみをまとめる。分別の区分は紙、布、燃えるごみ、金属類、燃えないごみ、缶&ビン&ペットボトル、粗大ごみの7種類。紙と布、金属類はある程度まとまったら、落合氏が軽トラでリサイクル施設へ持って行く。
それぞれが配置につき、9時半すぎに片づけ開始。入り口付近は捨てようと思いそのまま放置していたものが多かったのでサクサク進んでいく。
しかし、しばらくすると思い入れのあるものが出てくるようになった。崩壊した段ボールは、前の家から持ってきたもの。それはタイムカプセルのようで、捨てるかどうかの判断がなかなかつかない。
すると柴田氏が「"迷い箱"を作るので、その中に入れてください」と提案。迷ったものは次回の片付けまでに捨てるか残すか判断してほしいとのこと。迷い箱を作ったことで、片づけはスピードアップ。
スタートして1時間で押し入れまでのルートがつながった!
1時間ほどして、ようやく押し入れに到達。入っていたのは大量の衣服など。ごみに封鎖されて、しばらく開けることができなかったので、ほとんど着ていないものばかり。じゃんじゃん捨てるほうの袋に詰めていく。
押し入れ内の収納ケースから、書類が出てきた。......20年前に会社を退職したときの書類だ。就職氷河期でボーナスもほとんど出なかったよなー。思い出に浸っていると「どうしますか?」と、紫田氏から次々と書類が渡される。休んでるヒマはない。ひとまず迷い箱に投入して作業再開。
押し入れがほぼ空になりかけた頃、「この紙にはセリフが書いてありますけど?」と紙切れを渡される。あーーー、これ芸人をやっていた頃のネタ帳だ! 現役バリバリの芸人さんに見られると本気で恥ずかしい。捨ててください、と言いかけたが、自分史として残したい。これも迷い箱に放り込む。
1時間ほど格闘して押し入れがクリアに。そこへ迷い箱を押し込むと、床が一気に広がった! この部屋のフローリングをちゃんと見たのは何年ぶりだろう? ちょっと感動。あれ、これ片付くんじゃね? 自信が湧いてきたぞ。
続いて散乱していた衣服もじゃんじゃん袋に詰めていく。最初は服がなくなったらどうしようと思っていたが、次第にためらいがなくなってきた。服はごみになるのではなくリサイクルに回ると聞いて、さらに心が軽くなる。
フローリングが7割ほど見えた段階で昼休憩となった。
初日の昼前でここまでキレイになったぞ!
柴田氏に進捗状況を聞く。意外といいペースだと思っていたが、遅いらしい。
「フローリング部屋はいらないものばかりと聞いていたんですが、意外と悩まれていたみたいで時間がかかっちゃいましたね」
13時すぎに作業再開。「ペースを上げていきましょう!」と、柴田氏のゲキが入るが、なかなか捨てられない。迷ったのが雑誌のたぐい。自分が担当した記事が載っているものが多く、迷い箱がどんどん増えていく。
■マシンガンズ滝沢氏がヘルプに登場!14時すぎ、「調子はどう?」とマシンガンズの滝沢氏が仕事の合間に駆けつけてくれた。
「ぜんぜん片付いてないじゃん!」自分の中ではかなり片づいたと思っていたが、初めて見た人からしたらそうなのか。「俺も手伝うよ!」と参加してくれた。
「これいらないだろ! 大体さ、ごみに埋まってるモノなんて何年も見てないんだから、いらないってことじゃん!」
確かにそうだ! 放置していても困らなかったわけで、真理を突かれた。滝沢氏のサポートのおかげで、一気に片づけのスピードが上がっていく。15時すぎになり、ついに6畳間に畳が出現した! 何年も見てなかった畳だ。地層の下にあったので日焼けもしておらずキレイ。これは片付くかもしれない! 16時になったところで本日の作業は終了。
滝沢氏がごみの中からプレステ3を発掘!
柴田氏に話を聞いた。「前半は遅かったんですが、滝沢さんが来てペースが上がりましたね。よくある話なんですが、ご老人と片づけをしていると、ひとつひとつのものに思い入れがあって全然進まないんですよ。
そこに子供とか近しい人が立ち会って『これいらないでしょ!』と、ズバっと言ってくれると一気に作業が進むんです。関根さんの場合も、滝沢さんのひと言で、スピードアップしましたね」
たまった紙や布は軽トラに積んでリサイクル施設へ。体の一部を失うようで心が痛い
落合氏がこの日に運んだのは「紙が300㎏、布が100㎏」だった。
「おしゃれでもねえのに、何でそんなに服を持ってんだよ!」と滝沢氏からツッコミが入る。振り返ると、この15年の間に体重が増え服のサイズはMからLに。さらに洗濯機が壊れたがコインランドリーへ行くのが面倒で、洗濯をせずにしょっちゅう安い服を買っていた。
「だったら高い服を買って大事にしたほうがよくね?」と滝沢氏。ごもっともだ。
片付けを手伝ってくれたぐりんぴーす落合氏(左)、マシンガンズ滝沢氏(中)、六六三六柴田氏(右)
それぞれの仕事の都合もあり、2回目の作業は10日後となった。前回の帰りに柴田氏から「迷い箱のジャッジをしておいてください」と言われ、段ボールを4箱ほど空に。今日はとにかくすべての作業を終了させることだ。
最初に取り掛かったのはベランダへの動線の確保。そうすることで燃えるごみをベランダに集めることができる。窓側のごみは状態の悪いものが多く、雑誌は太陽に当たって日焼けしている。驚いたのが、レジ袋が劣化してボロボロになっていたことだ。昨今のレジ袋は環境問題に対応して、太陽に当たると分解されるらしい。まさか家の中でそんな化学変化が起こるとは!
しばらく作業をしていると、隣にいた柴田氏から「ペースが早くなりましたね」とホメられた。確かにそうかもしれない。先日の滝沢氏の登場、さらに迷い箱をじっくりジャッジしたことで、自分の中で必要なもの、捨てるものの判断が明確になった。柴田氏が「片づけているうちに、ゾーンに入ることがあるんです」と言っていたが、今がそうなのかもしれない。柴田氏も前回こちらのジャッジを見たことで不要なものを理解し、聞かずに処分をしてくれるようになったため、さらにスピードが上がった。
そしてラストはこたつエリア。ごみ屋敷化していた部屋だが、いちおう大事なものはこたつの上に置き、そこを"宝島"と呼んでいた。
最初にこたつの下をかき出していく。「あれ、お金じゃないですか?」柴田氏が1万円を発見した。もしかして宝島からごみの谷へ落ちたものかもしれない。「これ、ニンテンドー3DSじゃないですか?」そういえば昔、遊んでいた記憶があるな。テーブルの下から次々とお宝が発掘されていく。
ゴミの中から9万円! だが、この後も続々と現金が見つかり驚きがなくなっていく
「この封筒、現金が入ってませんか?」見ると9万円が入っている。仕事柄、取材費として現金を前借りすることがあったが、それが手つかずのまま残っていた。「これ、ドルとかユーロじゃないですか?」ゴミ屋敷住まいだが、コロナ禍前は年に一度は海外旅行をしており、両替して余った紙幣やコインがこれまた大量に出てきた。
もはやごみ清掃じゃなくて宝探しだ。以前、片付けるのが面倒すぎて「火事になったら片づけなくていいし、保険金をもらえるしラッキーだろうな」と思ったことがある(ダメ絶対)。いや、ちゃんと片づけてよかったーーーー!
そして16時すぎ、ついにフィニッシュ! やったーーー、片づけが終わった!!! 最終目標にしていた、こたつのスイッチをオン。あったかい! 10年以上ぶりにこたつに入った! これで冬も家で過ごせるぞ!
10数年ぶりにスイッチを入れたこたつ、壊れていませんでした!
宝島から発掘した現金をこたつで数えると、日本円はなんと41万9571円! さらに大量の外貨は円安になっているので、エクストラボーナスだ! そしてゲームやDVD、デジカメ、フィギュアなど。今回の片付けで出てきた価値のありそうなものは、柴田氏がヤフオクに出品してくれるそう。
今回の片づけにかかった費用は、20万円弱。ごみの中から発見された現金やお宝の価値を考えると、これはむしろ大儲けしちゃったんじゃないか?
ごみの中に埋もれていた戦利品。こちらはヤフオクなどに出品してもらう
ちなみに本日の紙ごみは280㎏。初日ほどではないがヤバい量だ。さらにその他のごみは、2日間で40リットルの袋で50コほど。こちらは清掃センターに連絡して、一気に回収してもらうことも可能とのことだが、1袋で300円程度するらしい。もったいないので、自分でいつもの集積所へ持っていくつもりだ。ごみ清掃員の滝沢氏によると、一度に出していいのは3~4袋だそうな。燃えるごみは週2回だから、処分が終わるまで2ヶ月くらいか......。
柴田氏が話してくれたのだが、せっかく片づけたのにすぐごみ屋敷に戻ってしまう人も多いそう。ごみ屋敷にしないコツは、家に人を呼ぶことなんだとか。もうごみがなくなって火事になる心配もないので、年末は鍋パーティでもやろうかな?
衝撃的ビフォーアフター!
取材・文・撮影/関根弘康
記事提供元:週プレNEWS
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